教育実習の先生から教わったレシピ
私にとって給食は小学校の時の思い出である。
なぜなら、中学校から弁当だったからだ。
給食では様々なメニューが展開されていたのだが、定型的なメニューも展開されていた。
その一つが、カレーが出されるときは必ず、野菜ソテーも出るだ。
私はこの野菜ソテーが苦手であった。
サラダなど、生野菜は好んで食べるのだが、火の通っている野菜には苦手意識があった。O157の影響で給食に生野菜が出ることはなかった。
なんとか配膳の時に少なくしてもらうなど対策はとっていたのだが、それ以上の対策は見出せていなかった。
そんなある日、小学校に教育実習の女性の先生が訪れた。
全校集会で自己紹介をしたその先生は料理が趣味だといっていた。
短い期間しか関わりのない先生ではあるが、毎日どこかのクラスで一緒に給食を食べるというのが通例だった。
程なくして私のクラスで一緒に給食を食べる日が訪れた。
その日のメニューはカレーだった。
野菜ソテーもいつも通りある。
私はその教育実習の先生のもとに行き、料理が趣味と言っていたところから「野菜ソテーが嫌いなんですけど、どうすればいいですか?」と聞いた。
するとその先生は少し考えたあと、「カレーの中に入れちゃいな」と言った。加えて、「あと、牛乳を数滴入れるとカレーがまろやかになるよ」とも。
その先生は自らのカレーに野菜ソテーそして牛乳数滴を入れ、混ぜて見せてくれた。カレーの味によって野菜ソテーの味を中和してくれるのだとか。
自分の席についた私は見よう見まねで野菜ソテーと牛乳数滴をカレーに入れて混ぜた。牛乳によってカレーのルーの色がクリーム色がかった。
恐る恐る口に運んでみる。確かに野菜ソテー単体で食べるよりマシになった。
私はそれからカレーが出る度に一手間加え食べていた。
牛乳を数滴入れることはしばらくすると忘れてしまっていた。
月日は流れ、小学6年生。
卒業を控え、給食を食べる回数も残りわずかとなっていた。最後の1ヶ月間の献立表が配られ、カレー最後の日を知る。
そして、カレー最後の日。
あの教育実習の先生と出会ってから私にとって給食のカレーと言ったら、野菜ソテーを入れた野菜カレーだった。
名残惜しい気持ちがあったことも事実なのだが、一方でこんなことも考えていた。「美味しいカレーが食べたい」
先生、ごめんなさい。
給食最後のカレーは何も入れない普通のカレーを食べました。そして野菜ソテーは残してしまいました。
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