【思い出し日記】夢の判別
「夢じゃないよね」
「なんだか夢見たい」と頬をつねりながら確認する。
私はあるショッピングセンターの前に立っていた。
目の前では何組かのカップルがお洒落にデザインされた壁をバックに記念撮影をしていた。
「君も撮ろうよ」男だか女だかわからない人に声をかけられた。
「俺は写真苦手だから」
「そんなこと言わずに。さぁ」
無理やり手を引っ張られて壁の前に立たされる。
てっきりその人と一緒に写真をとるのかと思ったが、実際は私だけのワンショットだった。
カメラのレンズがこっちを向いているのも苦手だが、その他大勢の人に『写真を撮っているやつ』と思われることが嫌いだった。
「早く終わらないかなー」そんな事を思っていた時
「君、なかなかいいねー」男の声がした。
声のする方へ顔を向けると、韓国人風の身なりをした男がこちらに向かってきた。
その男はカバンの中から名刺を取り出して語りかけてきた。
「君はモデルの仕事に興味はあるかい?」
私はなぜか首を縦に振っていた。
「じゃあ君をうちの専属モデルとして起用しよう」
「よろしくお願いします」
「早速衣装を揃えないとね」
男に導かれるままショッピングセンターの中へ向かう。
「ここで洋服を買うのか」庶民的な値段のアイテムが並ぶ店内を見て思った。
「君には特別な衣装が必要だね」男は言った。
しかし、どこの店に立ち寄るでもなく、男と私はショッピングセンターを真っ直ぐに歩き続ける。すると、『立ち入り禁止』の札がかかったドアが見えた。
「ここに入るよ」
「立ち入り禁止なのにいいんですか?」
「ここは業界人であれば入ることができるから平気だよ」
「そうか、もう俺は業界人なのか」数分前に写真を撮っただけなのに自分の身分が変わったことにまだ慣れていない。
扉を抜けると、庶民的だったショッピングセンターとは違い、きらびやかな衣装が揃えられたお店がズラリと並んでいた。
数あるお店の中からまさに自分に合った衣装を買ってもらった。
「さぁ、この衣装を着て早速撮影といきますか」男のテンションが上がった。
私の心も踊っているのがよくわかった。
「夢じゃないよね」
「なんだか夢見たい」
私は興奮する気持ちを落ち着かせながら指で頬をつねった。
「痛い。確かに痛い。ってことは、夢じゃない」疑いは確信へと変わり、なんだかモデルとしての責任感まで芽生えてきた。
「頑張んないとな」
✳︎
横には可愛らしい女の子が座っている。
一緒に車に乗ってとある飲食店へと向かう。
会話は一切ない。だけど、ものすごく愛らしい。
このこと一緒に入れたらどんなに幸せなんだろう。
なんだか、信じられないな。
✳︎
「えっ、ウソでしょ」
午前9時、スマホのアラームで目を覚ます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?