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夏と後悔

(葵の名前が書かれた墓の前に、岳が花と線香とお供えをして、和生が隣で一緒に手を合しているシーン)


和生「葵ちゃんが亡くなって、もう1年かぁ…。」

岳「早ぇよなぁ。」

和生「岳、後悔してんだろ。」

岳「後悔しかしてねぇよ。あれは俺が殺したも同然だ…。あんなことになるなら、あのとき一緒にいればよかった…。」

和生「今さら後悔したって、無意味なんだけどな…」

岳「俺があんなこと言わなければ…。」


 (葵の声と岳の語りシーン)


葵『私のどこが好き?』

岳『あいつは俺と付き合ってから毎日毎日こんなことばかり聞いてきた。正直うっとおしいし、どうでもよかった。理由なんてなくても、そんなこと言わなくても別にいいだろと思ってた。だから俺はいつも『さーな。』『どこでもいいだろ。』と適当な返事しかしなかった。あのとき、ちゃんと伝えておけばよかったな。…あれは付き合って半年の夏だった。』


(シーンは変わり放課後の教室。生徒が教室を出ていく。他クラス同じ部活の和生が来る。)


和生「なぁ、岳!葵ちゃんと今日も会うんだろ?かわいいよな、葵ちゃん!岳に一途だし!!」

岳「可愛いけどさ、ほんと、毎日飽きもしないで『私のどこが好き?』って聞いてくるんだぜ?うっとおしい…。」

和生「岳ひどいなwwwまぁ、そういうところ女子のめんどくせぇところだよなー」

岳「それにくらべて翼先輩はいいよ!綺麗だし優しいし!!」

和生「それな!!!」

岳「俺、しつこいの嫌いなんだよな。」

和生「あ、葵ちゃん来たぞ。」


(無視してケータイを触る岳。他クラスの彼女葵が入ってくる。)


葵「ねぇ、岳!今日ね、私ね!!」

岳「…。」

葵「ねぇ、ケータイばっかしてないで私の話聞いてってばー!」

岳「…はぁ…。」

葵「ねぇ、岳、私お腹すいちゃったー。コンビニ行こうよー。」

岳「あぁもう…。お前うっとおしいんだって。コンビニくらい一人で行けよ。」

和生「ちょ、岳、それは言い過ぎだろ…。」

葵「…もういい…!一人でいくもん!」


(葵はムスッとして出ていく。)


和生「あれでいいのかよ…。」

岳「いいんだよ、うっとおしいし。」

和生「はぁ…。彼女の扱い雑過ぎだろ…。」

岳「もういいから、早く部活行こうぜ、和生。」

和生「お、おう…。」


(岳の語りシーンに戻る。)


岳『あれが最後になるなんて、このときは思ってもいなかった。』


(部活終わりの号令が終わり、和生と話しながら着替えているシーン。)


和生「あれ、そういや今日葵ちゃん見に来てなかったな。」

岳「どーせ拗ねてんだろ。」

和生「いやでもあれはどう考えてもお前が言い過ぎだからな?」

岳「はぁ?俺悪くねぇよ。」

和生「まぁいいや。今日も部活疲れたし、早く帰ろうぜー。」

岳「おう。」


(帰宅後)


岳「…まぁ、俺もやっぱ言いすぎたかな…。ちょっとメッセージだけでも入れておいた方がいいか…。」


(葵の番号から電話が鳴る。)


岳「…なんだよ。」

葵の母「岳くん?葵の母です…。今すぐ病院に来てもらえるかな…?」

岳「え、葵になにかあったんすか…?」

葵の母「葵がね…。」


(岳の語りシーン)


岳『葵が亡くなった。そう葵の母親から聞かされた。…葵が…?嘘だ、ありえない…。半分冗談だと思いながらも俺は言われた病院まで走った。病院に行くと、葵は傷だらけで、まるで眠っているようだった。』


(病院に着いて病室を開ける。)


岳「は…?なんだよ、これ…。」

 葵の母「岳くん、来てくれたのね…。」

田中「なにが、あったんすか…。」

葵の母「放課後、コンビニの帰りにトラックにひかれて、病院に着いた時には既に…。」

岳「そんな…。」

葵の母「これね、葵が持ってたもの。中に岳くんの名前がかかれた手紙が入っていたの。」


(岳の語りシーン)


岳『葵の母親から渡されたコンビニの袋には、俺の大好きな飲み物。大好きなお菓子などがたくさん入っていた。それと、小さな手紙が入っていた…。』


(岳が手紙を読むシーン。脳内で葵の声で手紙読む。)


葵『岳へ。いつも部活お疲れ様!頑張ってる岳はいつ見てもかっこよくて、私の宝物だよ!さっきはごめんね。これは差し入れです。大好きだよ、岳。ずっとずっと大好きだよ…!!目指せ全国っ!応援してるからね♪ 葵より』


(岳のセリフに戻る)


岳「…なんで俺はこいつを、葵をもっと愛してやれなかったんだ…。こいつは、俺のことをこんなにも愛してくれてたのに…。」


(岳の語りシーン)


岳『葵の笑顔が好き。葵の優しさが好き。葵の声が好き。葵の全部が好き。なんであのとき伝えなかったんだろ。葵との時間が何より大切だよって。…飽きていた?こんなバカな俺をいつも支えてくれたのは葵だったのに…。こんなの、俺が殺したも同然じゃねぇか…。』


(岳が泣きながら葵の手を握る。)


岳「いつもありがとうってまだ伝えてねーよ…!…なぁ、目覚ませよ…!葵…!」


(現在、葵の墓の前のシーンに戻る。)


岳「…大事なもんって、失ってから気づくんだよな…。」

和生「隣にいるのが当たり前って思ってたりするよな…。」

岳「愛してるとか好きとか、そんなもの伝えたところでなんなんだよって思ってたけどさ、伝えないと、居なくなったら後悔するんだよ…。」

和生「俺も伝えねぇとなぁ〜。」

岳「はぁ?誰に?お前彼女いたっけ?」

和生「今はいねーけどさ、いつかほんとに大事な人が出来たらの話。」

岳「あー、なるほどな。」

和生「ほら、コンビニ寄って帰ろーぜ。新作のゲームするだろ?」

岳「おう。」


(そう言って岳と和生は歩き出す。)
(突然葵の声が聞こえる。)


葵「…ありがとう、岳。」

岳「…?」(立ち止まり振り返る)

和生「岳?どうした?」

岳「…いや、なんでもねー!行こーぜ。」

和生「なになに、葵ちゃんの幻でも見えたか?」

岳「ちげーよ。…ちょっと見てみたいけど。」

和生「でも居たらそれはそれで怖ぇよなw」

岳「ちがいねーなw」


(岳より前を歩く和生。その後ろを歩く岳。)
(ちょっと後ろ振り向いて小さな声で岳が囁く。)


岳「愛してる、葵…。 」


(岳の語りシーン)


岳『俺は、葵が居る。そう信じて言った。もう二度と、後悔はしたくないから…。』

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