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素材写真の難しさ

雷を研究素材として提供する場合、いくつかの条件が指定されています。夜間の落雷であること(雲放電NG)、稲妻の上下が切れていないこと、フィルターの使用はNG、目印になる建物が写っていること、正確な撮影日時と撮影場所の座標、Exifデータ、露光時間は30秒前後、RAWデータでの提出、などが指定されています。これだけの条件があると撮り方も限られてしまいますが、作品性の優れた写真である必要はありませんので、正確なピント、正確な露出で、シンプルに捉えることが大事です。

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上の写真は素材として使える写真です。画面下の光跡は国道を走る車のライトですので、建物ではありませんが目印になります。

まずはひとつひとつ条件を満たしていきましょう。RAWでの提出はRAWで記録すればいいだけですので、難しいことはありません。RAWデータの提出に拒否反応を起こす人もいると思いますが、研究機関でのデータの取扱いは厳重に管理されていますので、二次使用される心配はありません。RAW現像した場合には、現像時のパラメータの添付と、使用した現像ソフトの記載もお忘れなく。JPGやTIFFでの提出はNGです。

夜間の落雷を30秒前後の露光時間で撮影するには、シャッター速度を30秒にセットして撮影するか、バルブで露光時間をカウントしながらの撮影になります。30秒ちょうどである必要はないので、プラスマイナス10秒くらいなら特に問題はありません。ただ45秒を超えてしまった場合には、一度シャッターを切り直した方がいいでしょう。長時間になるほど余計な稲妻が写り込んでしまい、素材性が失われます。

フィルターに関しては、レンズ保護やUV・スカイライトフィルターなど、ほぼ素通しのフィルターなら問題ありません。ND・PLフィルターなど、露出に影響するフィルターの使用はNGです。もちろん特殊効果のフィルターの使用もNGです。基本的にはフィルター無しの方がいいでしょう。

稲妻の上下を切らずに撮るには、画角に余裕をもたせることです。落雷は多くの場合、積乱雲の雲底と地上の間で起こります。地面と雲底の両方が画角内に収まっていれば切れずに撮れる可能性が高くなりますが、雷の放電経路は落ちてみないとわかりません。こればかりは画角に余裕をもたせるか、立ち位置を工夫する以外に方法がありません。それ以外にも、遮蔽物やちぎれ雲に稲妻の一部が遮られてしまうことがあります。これも素材としてはNGです。自分の力量でどうにかなるものではありませんので、ここが一番の難関かもしれません。

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上の写真は素材としてはNGです。稲妻の一部が雲に遮られて見えません。これだと条件を満たせません。ただ作品として使えますので、写真展で展示するなど、素材以外に用途で使用出来ました。

Exifデータは撮影時に記録されるものですので、特に気にする必要はありません。正確な撮影日時と座標は、カメラの内蔵時計を定期的に調整することで解消できます。Exifに記録されている時間と実際の撮影時間に誤差がある場合には、提出時に誤差を報告する必要があります。座標に関しては撮影地でGoogleマップ等を開き、座標を表示した画面をキャプチャするなどして控えておきます。この時点で、目印になる建物があれば確認しておきます。

以上が素材として雷の写真を撮る場合の条件になります。正直、これだけの条件を満たすのは難しいですが、論文に自分の名前が記載された時の達成感は特別なものです。今後の活動の原動力になります。



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