![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/146537730/rectangle_large_type_2_77f88cbf3c591cdea204339f635192ec.png?width=1200)
短編小説 「アメの国」
ある晴れた日の午後、僕は古い骨董品屋の前を通りかかった。店のショーウィンドウには、不思議な輝きを放つキャンディと、その隣に古びた人形が並んでいた。キャンディは虹色の光を放ち、見る者を引き寄せるような魅力があった。人形は、小さな女の子の姿をしていて、その瞳には何か悲しげな表情が浮かんでいた。
好奇心に駆られた僕は、店に足を踏み入れた。店内は薄暗く、古い家具や雑貨が所狭しと並んでいた。カウンターの奥には、白髪の店主が静かに座っていた。
「こんにちは。ショーウィンドウのキャンディと人形を見せてもらえますか?」僕は尋ねた。
店主はゆっくりと立ち上がり、ショーウィンドウからキャンディと人形を取り出して僕の前に差し出した。「このキャンディは特別なものでね。一度口にすると、夢の世界に連れて行ってくれるんだ。そして、この人形には魂が宿っていると言われている」
僕は驚きと興味を抱きながら、そのキャンディを手に取った。「本当にそんなことが起こるんですか?」
店主は微笑みながら頷いた。「信じるかどうかは君次第だ。だが、試してみる価値はあるだろう」
僕は少し躊躇しながらも、キャンディを口に入れた。すると、目の前の景色が一変し、鮮やかな色彩と共に夢の世界へと引き込まれていった。目を開けると、そこは美しいファンタジーの国だった。空には虹が架かり、周りにはキャンディの木々が生い茂っていた。
「ここは……どこだ?」
「ここはキャンディランドよ」ふと背後から声が聞こえた。振り返ると、そこには先ほどの人形が生き生きとした姿で立っていた。
「君は……あの人形?」僕は驚いて尋ねた。
人形は微笑みながら頷いた。「そう、私はこの国の住人なの。でも、魂が封じ込められていたんだ。君のおかげで解放されたよ。ありがとう」
「どういたしまして。でも、どうして魂が封じ込められていたの?」
人形は少し悲しげに目を伏せた。「昔、この国は幸せで満ち溢れていた。しかし、邪悪な魔法使いが現れ、私たちの魂を封じ込めてしまったんだ。私たちの魂が解放されるには、勇気ある者がこのキャンディを食べる必要があったの」
僕は彼女の話に耳を傾けながら、周りの景色を見渡した。キャンディランドは美しいが、どこか寂しげな雰囲気が漂っていた。
「僕に何かできることはあるの?」
人形は頷き、手を差し出した。「一緒に魔法使いを倒して、他の魂も解放してくれる?」
僕は彼女の手をしっかりと握り返した。「もちろんさ。行こう、魔法使いを倒してこの国を元に戻そう」
僕たちはキャンディランドを駆け抜け、魔法使いの城へと向かった。道中、様々な試練が僕たちを待ち受けていたが、二人で力を合わせて乗り越えた。
ついに、魔法使いの城にたどり着いた。そこには、暗いオーラを放つ邪悪な魔法使いが待ち受けていた。「お前たちが、私の計画を邪魔するのか?」魔法使いは不敵な笑みを浮かべた。
「そうだ、君の魔法は終わりだ」僕は人形と共に魔法使いに立ち向かった。激しい戦いの末、僕たちは魔法使いを打ち倒し、魂を解放することに成功した。
「ありがとう、勇者よ」人形は涙を流しながら僕に感謝した。「これで、この国は再び平和になるわ」
「僕もありがとう。君のおかげで、この素晴らしい冒険を経験できた」僕は笑顔で答えた。
やがて、僕の目の前の景色が再び変わり、現実の世界に戻った。手にはキャンディの包み紙だけが残っていた。僕はその包み紙を大事にポケットにしまい、店主に感謝の言葉を伝えた。
「ありがとう。素晴らしい経験をさせてもらいました」
店主は微笑みながら頷いた。「いつでも戻っておいで。ここは君の冒険の始まりの場所だからね」
僕は店を後にし、心に新たな冒険の思い出を刻みながら、日常の世界へと戻っていった。
時間を割いてくれてありがとうございました。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?