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短編小説 「ブーランジェリー七海」


小さな海辺の町、千葉県には、親から受け継いだパン屋「ブーランジェリー七海」を切り盛りする一人の女性、七海がいた。彼女は27歳、パン作りの技術と情熱はもちろん、笑顔と優しさで地元の人々から愛されていた。

ある日、七海は小さな決意を固めた。それは、千葉県で一番美味しい明太フランスパンを作り、誰よりも多く売ること。この一心から生まれた彼女の明太フランスパンは、その後彼女の人生を一変させることとなった。

「だって、誰もが大好きな明太フランスパン。それを私が一番美味しく作り出したら、きっと大勢の人が来てくれるはずよ」

そう自分自身に言い聞かせ、七海は試作に没頭した。父親から受け継いだパン作りの基本技術はあったものの、明太フランスパン作りは新たな挑戦だった。明太子の風味と塩味、フランスパンの香ばしさと食感、そして両者を絶妙に結びつけるマヨネーズの配合。彼女の研究は一日たりとも休まず、店の閉店後も深夜まで続いた。

そして、ついにその努力は実を結び、最高の明太フランスパンが完成した。一口食べると、まずフランスパンの香ばしさと軽い食感が口中に広がり、次にマヨネーズと明太子の風味が混ざり合って、美味しさが倍増する。そして、最後には微妙な塩味が全体を引き締める。

その完成品を店頭に並べたその日から、評判は口コミで広まり始めた。県内外から人々が詰めかけ、七海の明太フランスパンは大人気となった。彼女の店は、一日でパンが売り切れるほどの賑わいを見せ、その名声は近県にも広まった。

しかし、七海はまだ満足していなかった。彼女は次の目標を立て、今度は全国で一番美味しい明太フランスパンを作ることを決意した。

全国一の明太フランスパンを作るという新たな目標を掲げた七海だったが、その道のりは決して容易ではなかった。同じパンを作るパン屋は全国に数多く存在し、さらにその中には有名なパン職人たちも多数いた。

しかし、七海はひるむことなく、自分のパン作りをさらに深化させるべく日々試行錯誤を繰り返した。フランスパンの焼き加減、明太子とマヨネーズの絶妙なバランス、そしてそれを一つに結びつける特別な技法。これら全てを追求し、彼女の明太フランスパンは日々進化を続けていった。

その結果、ついにある日、全国的なパンのコンテストで彼女の明太フランスパンが一位を獲得したのだ。審査員たちは彼女のパンを口にした瞬間、その絶妙な味わいとクオリティの高さに感嘆の声をあげた。そして、そのニュースは全国のメディアを通じて広がり、一躍、七海のパン屋は全国的に有名な存在となった。

七海は笑顔で受賞の喜びを語った。「私のパンがこんなにたくさんの人に愛されて、とても嬉しいです。でも、私の目標はまだ達成されていません。全国一の明太フランスパンを作るため、これからも努力を続けます。」

そう宣言した彼女の目には、未来への希望と挑戦への熱意が輝いていた。そして、その後も彼女のパン屋「ブーランジェリー七海」は、日々、新たな創造と挑戦を続けていったのであった。


終わり。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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