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ヒューマンスキルとしての意思決定/キャプテンシップ・チャレンジ2023開催レポートVol.5

📖講義内容

大隈塾キャプテンシップ・チャレンジは2月3日(土)、第5回のプログラムを開催しました。

早稲田大学名誉教授の内田和成さんをゲスト講師に迎え、「意思決定の基本、行動経済学」をテーマに講義をしました。

今回の目的は……

・意思決定の基本を学ぶ
・意思決定とはなにかを知る
・右脳、左脳、仮説……「思考」を使い分ける

講師の内田和成さん

2つの意思決定方法

従来型の意思決定論は、規範的意思決定論とも呼ばれ「合理的な人間であればどう意思決定すべきか」という立場に立っています。

その背景にあるのが「人間は経済合理性で動くべきである」という演繹的手法です。

①複数の選択肢が与えられる。
②各選択肢を評価し、 すべての選択肢を順序づける。
③最も順位の高い 選択肢を選ぶ

出所:長瀬勝彦「意思決定のマネジメント」東洋経済新報社

それに対して、限定合理性の考え方では「人は実際にどう行動するのか、なぜそうするのか」という人の感情に注目しています。

➀複数の選択肢が与えられる
⇒ 選択肢を「探索」する過程を重視
②各選択肢を評価し、すべての選択肢を順序づける
⇒ 実際に直面するのは不確実性の高い問題であり、 確率分布の分からない状況への対処を明らかにするべき
③最も順位の高い選択肢を選ぶ
⇒ 満足化基準を採用(納得出来る選択肢を見つけた時点で決定)

内田和成さんは「世界のトップコンサルタント25人」にも選ばれた(2006年)

限定合理性は行動経済学とヒューリスティクスという概念を基にしています。

「ヒューリスティクス」とは物事を決めるのに、明確な判断基準がない場合あるいは未経験の場合に頼る意思決定の方法です。

対比される言葉として「アルゴリズム」があります。こちらは手順を踏めば厳密な解が得られます(例:数学の公式)。

言い換えれば、ヒューリスティクスとは「直感で物事を決めること」なのです。

とはいえ、ヒューリスティクスには罠もあります。講義の中で、受講生のみなさまにクイズを考えてもらいました。

問題:日本における死亡者数を多い順に並べよ(2019年)
A. 未成年者の自殺
B. 結核
C. 殺人
D. 二輪車事故

講師と受講生とのインタラクティブなやり取りで進む講義

正解はBの結核(2,088人)。

その他の選択肢は日ごろからメディアで報道されることも多いため、つい意識が向いてしまいがちになります。実際に受講生もB以外で手をあげた方が多かったです。(Bは一人だけ)

これは認知のおける「バイアス」であり、陥りやすい罠なのです。

先が見通せない世の中において、素早く意思決定をすることは必要です。

しかし人間の意思決定プロセスを理解して、人間が陥りやすい罠を理解しておくことが、意思決定の質を高めることにつながるのです。

クイズの答えをホワイトボードに書く受講生

正しい意思決定

講義後の質疑応答の時間では、ある受講生から「正しい意思決定は存在するのか」という質問をいただきました。

それに対して内田先生は、かつて務めていたコンサルティングファームの先輩・堀紘一氏の言葉を引き合いに「正しい意思決定はない」と説明しました。

あるとき堀さんから、「競馬に絶対に勝つ方法を知っているか?」と聞かれた。競馬にはあまり詳しくなかったが、「各出走馬のこれまでの戦績を調べて」「パドックで馬をチェックして・・・・・・」などと自分なりに考えて答えたところ、堀さんはどれも「違う」と言う。

では、答えは何か。堀さん曰く「レースが終わってから勝った馬に賭ければいいんだ」。私が啞然として「そんなことできるわけないじゃないですか」と答えると、堀さんは「そうだろ。でも、多くの企業や人は、みんなそうしたがるんだ」と。

内田和成『アウトプット思考』2023年、PHP研究所 P.24

意思決定をするにあたって、時間をかけてデータを揃えて合理的に判断できる場合ばかりではありません。

自分と他者にとって納得できる意思決定をするには、相手の立場を考える想像力であったり、自らの経験値であったり、総合的なヒューマンスキルを必要とします。

まさに、ここまでキャプテンシップチャレンジでやってきたことが、ここでつながり、活かされるのです。

🖊️受講生の講義レポートより

意思決定に必要な要素を整理することができた。
少ない情報でいい判断をするのが意思決定であり、意思決定に正しい意思決定はない。
意思決定はフレームの中で行われる。どのフレームに位置付けるかで意思決定の内容が異なることがあり、バイアスがかかった意思決定をしがちになる。だからこそ、意思決定した後のレビューは大事。
日々の仕事でも学んだことを意識しながら意思決定を行っていきたい。

金融・男性・30代

意思決定の方法について、今まで感情で動いていることが多かったです。
具体的には、自分の思い込みで判断していたと気づきました。
相手に自分の意思決定を伝える時は、相手のロジックを理解し、提案したいと思います。
内田先生の話がお上手で、引き込まれました。

小売業・男性・40代

少量の情報で精度の高い意思決定をするには、感性を高める必要があると思った。自身の軸や納得感が意思決定に必要な要素であり、それらは自身の感覚や感性からなる。五感を使う暮らしの必要性を実感した。

公務員・男性・20代

ワークを通じて思った以上にバイアスがかかっていると実感しました。
相手の理解のためには対話が必要ですし、対話を通じで相手のロジックを学び、自分の考えとの違いも明確になると思います。そこから自己理解にも繋がっていくのだと感じ、ここまでの講義とのつながりも感じました。
業務上で対峙する相手のロジックを考えて対応することを目標にしたいと思います。

通信・女性・20代

🕰️タイムテーブル

14:00 オープニング、チェックイン
14:10 内田和成先生講義
15:10 グループダイアログ(感想共有、質問づくり)
15:20 質疑応答
16:00 終了、内田先生ご退席、受講生休憩
16:10 グループワーク(講義と関連するワーク)
16:40 全体でワークの結果をシェア
16:55 クロージング、次回案内
17:00 終了

👤講師プロフィール

内田和成(うちだ かずなり)
東京大学工学部卒業後、日本航空入社。在職中に慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。その後、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)入社。
同社のパートナー、シニア・ヴァイス・プレジデントを経て、2000 年から2004年までBCG 日本代表を務める。2006年度には「世界の有力コンサルタント、トップ25人」に選出。 
2006年早稲田大学教授に就任。(現在は名誉教授)
早稲田大学ビジネススクールでは競争戦略やリーダーシップを教える傍ら、エグゼクティブプログラムに力を入れる。早稲田会議創設。早稲田大学ビジネススクールと日経新聞のコラボレーション企画『MBAエッセンシャルズ』創設。
著書に『仮説思考』『論点思考』『右脳思考』『イノベーションの競争戦略』(東洋経済新報社)『異業種競争戦略』『ゲームチェンジャーの競争戦略』『リーダーの戦い方』(日本経済新聞出版)『意思決定入門』(日経BP社)など多数。累計50万部以上。
2023年度から東京女子大学特別客員教授。

❓キャプテンシップ・チャレンジとは

キャプテンシップ・チャレンジ(CC)は、

グループワークを通して「ヒューマンスキル(対人能力)」を鍛え、「全員発揮のリーダーシップ(Shared Leadership)」を習得します。

プレイングマネージャー(キャプテン)として早期からリーダーシップについて学び、受講者自らにリーダーの役割やリーダーシップについて考える機会を提供し、リーダーになる準備を促し、それをサポートします。

また、他社や他業種の同年代の仲間と繋がり、交流することで自己理解や他者受容の重要性を知り、多様な価値観を理解する土壌を築きます。


◆これまでの講義一覧


キャプテンシップ・チャレンジ 2023開催レポートvol.5
2024年2月14日発行
大隈塾事務局(一般社団法人ストーンスープ)
田中渉悟 tana.sho.2602@gmail.com
〒026-0002 岩手県釜石市大平町3-9-1
TEL:050-3558-7527
     公式MAIL:ookuma_school@stonesoup.tokyo

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