詩【俗物の間】

帰り道また俺は遭難している

ただ仕事をしただけなのに

なぜこんなにも遣る瀬無いのか
理由を探すからか
理由を探してばかりだからか

人生が道であろうが
川であろうが
何であろうが結局は自分のような
自己欺瞞の塊のようなふてえ奴は
理由を探す

その最中にふと思い返す
自身がこれまで思い
書き残してきたことを

堂々巡りや袋小路を憂いた言葉
その中で
もがき続けることを
美化することもなく
ただ受け止めるでもなく
諦念に近いものの
諦めてもおらず
もがき苦しむ様子ばかりが伝わる

そんなものをいったい
誰が読みたいというのか

そのもがきや苦しみは
いつも誰か他には伝わらず

孤独なふりの愛好者と自己欺瞞の塊が
くんずほぐれずの気持ち悪い地獄絵図だ

そのような
ただのエセ地獄絵図は
ペラッペラの版画みたいで
その薄さくらいの厚みの表現価値にしか
そのくらいの意味にしかならない

だから外に向けたはずの言葉が
跳ね返り自らの心とハラワタを貫き
誰もいない何もない方へと消えていく

当たり前に終わりがないことに対して
見出せることが
「どうしようもない」
と言うような単純な話ばかりで
そんなことばかりを
目をひんむきながら繰り返すのは
どうしてなのか

はたまた捉え方の問題なのか

全ては捉え方次第だと
そういう歌の言葉を借りて
信じてきたものの

捉え方次第だとしても
もうこれ以上の前向きさで
捉えることは難しいかもしれない

一般的な袋小路というものに
規模や大きさがあるのかは知らないが
俺の袋小路に規模や大きさが
もしあるとしたら
もう東京ドーム何個分とか
クフ王のピラミッド何個分とか
そんなハカリでも
どんなハラヅモリでも
測れないくらいのものになっているよ

それくらいの規模や大きさの
袋小路にハマることと
いわゆる普通の袋小路にハマるのとでは
全然違うはずだよな

堂々巡りの堂々レベルや
巡りレベルだってきっと
多少なりとも異なる
比較的大きなものなんだと思うよ

ほら
またこんなことを言って
こんなことを言って
ハマっているよまた

そこから抜け出すべく
重ねていくべき努力の「べき」具合が
もしこれでもとても低いのだとしたら
想像される高低差にまた絶望するし
結果
他の誰かからしたら
大したものでもないのだとしたら
またその規模や大きさやレベルに
絶望するしかないな

本来こういったことは
相対的なものではないのに
そんなこと考えていること自体が
クソダサいんだよ

それを
やるしかないやるしかないと言って
繋ぎ止めてやり続けているのは
あまりにも健全な不健全
だと思わないかい?

誰か他に聞いていなくても
俺は思うよ
あまりにも健全な不健全だって

だから抜け出そうとしている
今ならようやく少し
ほんの少しかもしれないけど
昔読んだカンダタの気持ちが
わかる気がするよ
俺はそんな悪い奴ではないけどな

必ず滅してやりたい嫌な感情があるだろ?
自分の最も嫌な感情の一つだよ
その最も嫌な感情すら救われたい気持ちだな
そのためにも徳は積まなきゃいけないのか?

たくさんの小さな虫を意識的に助けたし
たくさんの小さな虫を無意識に潰したよ

だから
賽の河原で積み上げられた石ころを
メルカリで売り捌きたい

そんなものを買うバカタレに
匿名配送で送りつけてやりたい
この感情もオマケにつけて

バカタレを通り越してそいつが
頭がおかしくなった頃合いに
受け取ってくれるといいな
もちろん着払いで

こんなことを書いていて
考えていて
あっという間にもう帰宅しそうだけど

これが仕事なら
この文字の羅列が誰かの心の味になり
誰かの肌のシワになるならば
本当に少しだけ
救われる気がするけど
そんな感情もいずれは
着払いで誰かに
送りつけたくなるのだろうな

ただ仕事をしただけなのに
こんなにも遣る瀬無いのだから

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