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セミロングの女

ひとり佇んで呑みに来ていた
セミロングの彼女。


「明日は休みなんだろうか?」
お酒は、ハイボールが好きみたいだ
いちいち数えている分けではないが
多分、三杯ほど飲んでいたと思う。
これは、大将に声掛けしたときの
注文の内容を聞いての判断だ。

大将への言葉使いを聞いてると
彼女もこのお店の常連さんみたいだ。

もうひとつのお客であるカップルの
注文内容は頭に入っていないのに
彼女の注文内容は何故か憶えているのだが
無意識に彼女を意識している自分が
少しばかり、イヤになりそうである。

そろそろ、カップルも席を立とうとしている。
先ほど、お勘定を済ませたようだ。

距離は離れているが
お店の中の客は、オレと彼女のみ
彼女は、オレの席から、四つほど席を隔てたところに座っている

大将はすでに皿洗いなどをしながら
片付けにかかっていた。

ひとり佇む彼女に思わず、
「ハイボール、好きなんですか?」
と、声をかけてしまう自分がいる。

「えぇ、いけませんか?」
っと、少し否定的な返しに戸惑いながらも

「いやいやいや、そんなことはないんですけど。」
「僕は、レモンサワーが多いんですけど」
「ハイボールも時々、いただくんです。」

「あぁ、そうなんですか?」
オレに対する警戒は、まだ解けないようだ。
彼女の声は、とても透き通っているように聞こえた

「以前はね、ハイボールとレモンとの相性が良いような気がして、こちらのお店のメニューにはなかったんだけど、大将に特別にお願いして作ってもらったら、まぁまぁイケたんですよ。」
「その時、大将にハイボール・レモン味をメニューに加えたらどうかと提案したんだけど、なぜか却下されたのです。」

「ふ~ん、」
彼女は、少し素っ気ない感じで返してきた。

あまり、お話することが好きじゃないのかな?
そのように思っていたら、

「大将、お勘定いい?」
彼女は、ボクの話を遮るように
大将に声を掛けた。

「いいよー。OOOO円ね。」
「お支払いはいつも通りかな?」

彼女はうなずくと、スマホを取り出し
機械に近付けると
「PAYPAY!」
今風のやり方で支払いを済まし
お店をあとにした。

精算を終えた大将は、振り返って「クスッ」っとしながら、「どるさん、振られちゃったね。 笑」

「やめてよ、大将。」
バツが悪かったオレは、こんな返ししか出来なかった。

「んじゃあ、俺もそろそろ帰ろうかな。」「大将、ボクも精算いい?」

「いいよ~、」っと言いながら計算機を叩き金額を弾き出していた

「はい、OOOO円ね」
僕は財布を取り出し、

財布の中から5000円札を取り出し、大将に渡した。
チャリ銭なども確認して、
財布の中を、もう少し
スリム化すべきかと思ったが
めんどくさかったので、
5000円札をそのまま渡し
オレはお釣りをもらうことにしたのだが、

財布の中がチャリ銭の多い人は
認知症になりやすいと言うことが
ふと、頭の中をよぎったが

ほろ酔い気分を壊したくなかったので、「まぁ、いいや。」と自分の中で片付けてしまう。

間もなく、日付けも変わろうとしていた。
オレは、席を立ち、お店をあとにしようとしたが、大将から、呼び止められ
「どるさん、このあと一杯付き合わない?」
「もうすぐ片付け終わるからさ」

「えっ?」
思わぬ誘いに、ちょっと驚いたが
こんなことは、滅多になくて、大将からの誘いなんて、滅多にないから、嬉しくて、オレは軽く「いいよ」と言って
引き受けた。

「じゃぁ、もう少し待っててね」

結局、オレはスマホを見ながら
時間をつぶし、30分ほど待ってから
二人で店をあとにした。

日曜の夜なので、若干、人は少なく
閉めているお店も少しずつ増えているが
まだ、明るさは残っている。

俺たち二人は、夜の街へ消えていった。

朗読にもチャレンジしてみました
若干、文面を変えて読みました
ぜひ、お耳寄りください

https://stand.fm/episodes/63e62467bc731157a0558e74

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