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「奇跡の経済教室 戦略編」を読んで

こんにちは。

先日読んだ、「奇跡の経済教室」の続編になります。
基礎知識編の読書感想文は ↓

https://note.com/stocknote/n/n2d1e784dba8a



内容

2つの成長戦略

①「アメ型」成長戦略

ハイ・ロードともいう。
賃金の上昇によって経済成長を実現しようという「賃金主導型」成長戦略。

賃金の上昇を労働者に対するアメにして、国民経済全体を成長させようとするもの。

賃金上昇の主な要因
・労働不足ぎみである
・労働組合の交渉力が強い
・政府による労働者保護
上記の要因は経営者としては人件費がかさむので困った事。
⇒人件費カット以外の方法で、競争に挑む。付加価値の高い製品を生産し、それで勝負する。
付加価値の高い製品を生み出すことに成功し、利益を生み出す⇒労働組合がまた賃上げを求める。再び付加価値の高い製品の開発。
これが繰り返される。

賃上げが続くと企業にとって悪いことばかりではない
賃上げが続くと、所得が増えるので消費も増える。その結果として国全体で大きな消費需要が生まれる。これは企業にとってはウレシイ。

好循環が回ることで、国民経済は成長を続ける。
アメ型成長戦略はインフレ気味になる。

アメ型成長戦略のいい制約(企業が付加価値の高い製品を生み出すために必要)
・強い交渉力をもつ労働組合があるのこと
・国境(工場を海外移転したり、移民を連れてきたり)


②ムチ型成長戦略(「利潤主導型」成長戦略)


ロー・ロードともいう。
解雇や賃下げの脅しを労働者に対するムチにして人件費を抑制し、企業がより稼げるようにすれば、経済は成長するだろうと考える戦略。

・解雇や賃金養成の制約となる労働者保護規制は、緩和・撤廃。
・労働組合の弱体化
・投資家の発言力を強めるような規制にすることも効果的
・グローバリゼーション。海外から安い製品が流入し、海外企業との激しい国際競争にさらされて、企業は賃金を抑制せざるをえない
・海外から低賃金労働者を移民として受け入れる
・工場を海外に移転してしまう。日本国内の労働者の賃金が発展途上国並みに下がるまで工場を海外に移転しつづける

ムチ型の成長戦略下では、企業はアメ型と比較にならないくらい儲かる。
ムチ型成長戦略ではデフレ気味になる


ムチ型では賃金が抑制され、経済は成長しないので企業は困る。が、日本市場は捨てて、海外に打って出て海外需要を取り込む。


アメ型、ムチ型で得する人


アメ型で得する人
労働者(賃金が上昇するので)

ムチ型で得する人
投資家、経営者

投資家や経営者が政治や行政に与える影響力が大きい国では「ムチ型」成長戦略が採用される可能性が高い。

インフレでは貨幣の価値が下がるので、富裕層はデフレの方がウレシイ


富を増やす2つの方法
①ポジティブ・サム

新たな富を生み出し、経済全体を成長させるので、多かれ少なかれ、みんなが豊かになる。

これをポジティブサム、或いはプラスサムという。「全部足したらプラスになる」という意味。

最低賃金規制など労働者を保護する規制が賃金上昇させる圧力になる。

②ゼロ・サム


他人の富を奪って、自分の物にするとこ。自分だけ豊かになる。
全体として富は増えておらず、富の分け前が変わっただけ。
「全部足した結果プラスとマイナスが相殺し合ってゼロになる」という意味。

労働者を保護する規制を緩和したり、撤廃したりして労働者を激しい競争にさらすことが必要。


PFIとは

政府や地方自治体が行ってきた公共サービスを民間企業に任せること。

PFIで効率的になるのでは?


必ずしもそうならない。
理由1 民間企業は長期に資金調達をしなければならないが、民間企業の資本コストは、公共部門よりも高くなる。
理由2 公共サービスを受託した企業は、その事業を独占するので効率化は計られない。
理由3 公共サービスは長期に及ぶ事業なので、民間企業はいったん受注したら、20~30年にわたって収益を得る。これは営利企業にとっては不正や汚職のインセンティブになる。
不正や汚職を防ぐために、受注した民間企業を監視しなければならない。その監視コストは結局公共機関が負担することになる。

民間企業が事業を行うから公共部門よりも効率的になるというのは、幻想に過ぎない。


レントシーキング活動とは


自分の利益を増やすために、ルールや規制、あるいは政策の変更を行うように、政治や行政に働きかける活動のこと。
特定の人々の利益を守っているルールや規制を変えて、その利益を自分たちが享受できるようにする⇒「ゼロサム」になりがち。

他人の利益を奪って自分の利益を増やす、「ゼロサム」「レントシーキング」はデフレの時に活発化しやすい。
(縮小しているパイを奪い合う)


新自由主義とは


「自由市場こそが、資源を効率的に配分し、経済厚生を増大させる最良の手段である」という経済理論の下、政府による市場への介入を出来る限り排除し、個人の経済活動の自由は最大限許容されるべきである、というイデオロギー。

小さな政府、規制緩和、自由化、民営化、グローバル化、健全財政、といったムチ型成長戦略は、いずれも新自由主義から導き出された政策。

日本がデフレを脱却するためには


・財政支出を拡大して緊縮財政から積極財政に転じる
・ムチ型からアメ型成長戦略に転換


感想


読んでいて、あぁ、こんなに長期にわたって経済政策が間違っていたんだ、そりゃあデフレ脱却できないワケね、なんて納得してしまいました。
そう、この本の全編、基礎編で著者が指摘していた政策の細かい指摘が今回の本。
今日、日銀の新総裁が就任しそうですが、植田さんは、デフレを脱却するには物価は需要と供給によって決まる、と言っているそうです。
まともですね。教科書にも出ているくらいまとも。
で、今までの黒田総裁は、価格は日銀が貨幣を供給すれば物価は上がる、という考えだったそうです。
どうりで、デフレのままでしたね。

という訳で、今後の日銀、というより、政府の財政出動、そして減税などマトモなデフレ政策に期待したいです。

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