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『奇跡の経済教室 基礎知識編』を読んで

こんにちは。
今回は経済の本。
ちょっと衝撃的な内容です。
日本政府なバブル崩壊以降、間違った政策を延々とし、デフレなのに、真逆のインフレ対策をしてしまったため、長くデフレを脱却できていない!
え、ホント?という内容です。
そして、貨幣の創造しているのは○○だった、は衝撃的です。


内容

デフレで不景気の時に、個人や企業が消費や投資を手控え、貯蓄に励むのは、経済的合理的な行動。
しかし、みんなが経済合理的に支出を切り詰めると、需要はますます縮小して、景気はますます悪くなる。

上記のように個々の正しい行動でも、それが積み重なった結果、全体として好ましくない事態になることを、「合成の誤謬(ごびゅう)」という。

合成の誤謬を解決するには


企業や個人といったミクロのレベルの行動では合成の誤謬は解決しない。マクロの経済全体の運営をつかさどる政府が直すしかない。

政府の経済対策

インフレ対策


インフレとは需要過剰、供給不足。
なので需要を減らし、供給を増やす必要がある。
需要を減らすために、政府が需要、すなわち消費と投資を減らす。
公務員など公共部門で働く人の数を減らす。
「小さな政府」にする。

つまり、政府が支出を減らし、増税すれば財政健全化する。財政健全化とは需要を抑制すること。

供給力を増やす政策として、企業の生産性向上、競争力強化。
具体的には規制緩和、自由化。

デフレ対策

デフレは需要不足、供給過剰なので、インフレとは逆。
つまり需要を拡大し、供給を抑制するのがデフレ対策。

政府
需要を増やす。社会保障や公共投資を拡大するなどして、財政支出を拡大させる。公務員など公共部門で働く人を増やすという手もある。
要するに「大きな政府」にする。

民間がや投資の増大を促進する必要もある。そのために減税。消費税は減税。企業に対しても投資減税をする。

中央銀行
金融緩和を行い、個人や企業が融資をうけやすくする。

供給の抑制として
デフレ下では企業の生産性向上は供給過剰がさらにひどくなるので、生産性向上させないほうがいい。企業間の競争は抑制すべき。具体的には、規制緩和や自由化はしないほうがいい。むしろ規制強化、事業は保護して、多くの企業が市場に参入出来ないようにして競争を抑える。
民営化も、競争を激化させるのであれば、しないほうがいい。

日本は長くデフレ下だったにもかかわらず、政府はインフレ対策(規制緩和、自由化、民営化、増税、グローバル化の促進)を20年以上してしまったため、デフレを脱却できなかった。

そもそも貨幣とは

貨幣とは負債の一形式。「信用貨幣論」という。

貨幣の価値は、貴金属のような有価物に裏付けられているとする「商品貨幣論」

金本位制は「商品貨幣論」に基づいた制度。
現代の貨幣は、貴金属などの有価物との交換を保証されていない不換通貨なのにお金として広く使われている。
これは商品貨幣論では説明がつかない。

銀行は貨幣を創造することができる

貨幣は信用に基づくもの。そのことを「信用貨幣論」という。
貨幣を創造することが出来るという事は、負債を発生させるという事。

貨幣として流通するものは、「現金通貨(中高銀行券と硬貨)」と「銀行貯金」
給料の受け取りや預金など、現金よりもむしろ銀行預金のほうが大半。

現金通貨は中央銀行が創造している。
では銀行預金は?
じつは銀行預金は銀行が創造している。

銀行は個人や企業が貯蓄する為に預けたお金を元手にして、貸し出しを行っている、と思っている。が、それは間違い。
その反対に、貸し出しによって、預金という貨幣が創造され、借り手が債務を銀行に返済すると、預金通貨は消滅する。

銀行は1000万貸し出すときに、1000万を預金口座に記帳するだけ。何もない所から、新たに1000万を生み出している。

日本の全国銀行協会が編集している「図説 わが国の銀行」にも以下のように記載されている。

銀行が貸し出しを行う際は、貸出先企業Xに現金を交付するのではなく、Xの預金口座に貸出金相当額を入金記帳する。つまり、銀行の貸し出しの段階で預金は創造される仕組みである。

銀行は貸し出しの段階で預金は創造されるのだから、銀行の貸し出しが、元手となる資金の量的な制約を受けることはない。

銀行の貸し出しの制約となるのは、借り手の返済能力。また、銀行は中央銀行に一定基準の準備預金を設けているので、準備預金も銀行の貸出制約になる。

貨幣についてのまとめ


貨幣とは現金(現金通貨)と預金(預金通貨)のこと。貨幣全体の8割以上は預金通貨が占めている。
預金通貨は、銀行が貸し出しを行うことで増える。
銀行は元手の預金を貸し出すのではない。その反対に貸し出しが預金を生み出す。
銀行の貸し出し限界は、元手の資金量ではなく、借り手の返済能力。


デフレ下で中央銀行は
中央銀行がマネタリーベース(現金通貨と準備預金の合計)の量を操作し、各銀行の準備預金を増やしても、借り手のほうに資金需要がない限り、銀行の貸し出し(すなわち預金通貨の創出)は増えない。
デフレ時は、中央銀行は貨幣供給量を増やせず、したがってインフレを起こせない。
預金通貨が増えるからマネタリーベースが増えるのであって、マネタリーベースが増えたから預金通貨が増えるのではない。

中央銀行はインフレ対応は得意だが、デフレ対応は苦手。


デフレ脱却のためには


貨幣供給の増大に必要なのは、財政赤字の拡大。

信用貨幣論が説くように、貨幣とは負債の一種。

貨幣供給量を増やすことは、単純に言えば負債を増やすこと。しかし民間企業はデフレ下で負債を増やすことが難しい。そこで政府が負債を増やせば、貨幣の供給量は増える。

ということは、政府が財政赤字を減らそうとすると、貨幣供給量が減り、デフレが悪化してしまう。


①貨幣供給量を増やすためには財政赤字拡大。
②デフレは需要不足だから、財政支出を拡大することで需要を創出すべき。

①と②は言い方が違うだけで同じことを言っている。

信用貨幣論によれば、貨幣(銀行預金)は銀行の貸し出しによって供給される。預金が先にあって、貸し出しされるのではない。貸し出しが先にあって、預金が生まれる。
銀行の貸し出しは、企業の需要がなければ成り立たない。

借り手の需要増⇒銀行の貸し出し増⇒貨幣供給量の増

要するに、財政支出の拡大とは、需要の拡大。そして「需要の拡大」と「貨幣供給量の拡大」と信用貨幣論では同じこと。


財政赤字の限界

日本政府の返済能力には限界はない!
自国通貨を発行しているので。
自国通貨を発行していないギリシャやイタリアは債務破たんした。(ユーロで国債を発行していたため)
国債を自国通貨で発行できる日本は破たんしない。
自国通貨建ての国債を発行していないアルゼンチンも破たんした。


永遠に財政破綻しない政府であれば、債務を完全に返済しきる必要はない。

国債の償還期限が来たら、新規に国債を発行して借り換えを永久に続ければいい。

実際、ほとんどの先進国において、国家予算を計上する国債費は利払い費のみで、償還費を含めていない。(日本政府はなぜか償還費も計上している)

政府は通貨発行権を有しているから。
個人、企業とは決定的に異なる存在。

では財政赤字の限界は?

政府が財政赤字を拡大しまくったら。
公共投資、投資減税、消費減税をやったら、需要が拡大し、供給を超えるのでインフレになる。
それでも公共投資をやりまくっり、無税にしてみたら、おそらくインフレがとまらなくなり、ハイパーインフレになる。
ハイパーインフレでは、貨幣はただの紙きれになってしまうので、通貨発行権があっても、その通貨は無価値になるので国家の財政破綻になる。

要するに、財政赤字が拡大しすぎるとインフレになる。
財政赤字はどこまで拡大していいかというと、「インフレが行きすぎないまで」
財政赤字の制約を決めるのは、インフレ率。

このような財政の考え方を「機能的財政論」という。

機能的財政論
財形は、財政収支が黒字か赤字かではなく、財政赤字の額の大きさでもなく、財政が経済においてどのように機能しているか(物価にどのような影響を与えるかなど)で判断すべき。

財政赤字についてのまとめ

財政赤字の制約となるのは、民間部門の貯蓄ではない(財政赤字は、それと同額の民間貯蓄を創出するから)
財政赤字の制約となるのは、政府の返済能力でもない(政府には、通貨発行権があるから)
財政赤字の制約を決めるのは、インフレ率。インフレになり過ぎたら、財政赤字を拡大してはいけない。
財政赤字を無限に拡大できない理由は、そんなことをするとハイパーインフレになってしまうから。


税金はなぜ必要なのか

税金が必要なのは、インフレが行きすぎるのは防ぐため。
税は、需要を縮小させて、インフレを抑制する為に必要。

インフレを抑えたければ、投資や消費にかかる税を重くする。逆にデフレから脱却したければ、投資減税や消費減税を行う。

つまり、税金とは、物価調整の手段。財源確保の手段ではない。

税金が物価調整のじゅだんである、は信用貨幣論によって以下のように説明される。
貨幣は負債の一種である。
貨幣は貸し出しによって想像され、返済によって消滅する。
従って、政府が負債を増やすことで、貨幣供給量は増えて、インフレに向かう。政府が増税によって負債を返済すれば、その分だけ貨幣が消え、貨幣供給量が減るからデフレへと向かう。

消費税は、低所得者ほど、収入に占める生活必需品の割合が高いので高所得者よりも税負担が高くなる。
格差の拡大は、経済成長を鈍化させる。
消費税は、格差是正のみならず、経済成長の観点からもよくない税制。

法人税減税
企業の設備投資を税控除する「投資減税」なら投資をしないと減税にならない。
単に法人の所得に対する税率を引き下げるような法人税減税はデフレ下に置いては、投資を促進するとは限らない。投資よりも貯蓄が有利な経済状態。

自動安定化装置
景気が悪い時には、失業者や赤字企業が増え、税収が減る。
経済全体では、不景気になると税負担が減る。
景気がいい時には、個人や企業の所得が増えるので、税収も増える。経済全体で見ると、税負担が重くなる。
所得税や法人税は、景気が悪い時には税負担が軽減されて不況対策の役割を果たす。逆に景気が良くなると税負担が重くなり、景気の過熱を抑制する。


プライマリーバランス
プライマリーバランスとは、税収、税外収入と、国債費(国債の原本返済や、利子の支払いに充てられる費用)を除く歳出との収支のこと。

プライマリーバランスは、その時点で必要とされる政策的経費を、その時点の税収でどれだけまかなえているかを示す指標。

プライマリーバランスの黒字化を、日本政府は、財政健全化の目標としている。

過去にプライマリーバランスを黒字化した2つの国
アルゼンチン
1990年代初頭に経済危機。IMFに救済を依頼。IMFからの融資の条件として2003年度を達成年次としたプライマリーバランスの目標を突き付けられる。
歳出削減に励み、1998年以降はマイナス成長まで経験したが、頑張って2001年1月ついにプライマリーバランスの黒字化を達成。
そして2001年の暮れに、財政破綻!

ギリシャ
2008年金融危機の打撃をうけ、IMFに融資を依頼。IMFからプライマリーバランスの黒字化の目標を押し付けられる。
2013年目標を達成。その代償として、GDPの4分の1が吹っ飛び、失業率は60%にもなってしまう。
2015年、財政破綻。

結論


日本は財政健全化を目指す必要なし。デフレなので、財政健全化を目指してはいけない。
それでも財政健全化を目指し歳出削減や増税をすると、景気が悪くなり、そもそもの税収の元である国民所得が減るので、税収が減り、財政健全化は達成できない。
財税健全化の努力が経済を停滞させ、財政をかえって悪化させる。


後半ではなぜ経済学者は政策を間違ってしまうのか、という内容。


感想

タイトル通り、目から鱗、全然聞いたことがない内容ばかりで、沢山学ぶべきことが多い本でした。
この作者さんの本は、これから読んでいこうと思います。
そして、今の日本がなぜこんなにも長くデフレを脱却できなかったのかがよくわかりました。
政府は、この本を参考に、財政支出し、消費税の減税などして欲しい。

私なら、まず出産一時金を100万(所得制限なし)、児童手当を1人につき毎月3万(所得制限なし)。
公共事業、水道管の更新をかなり支出。
そして、リスキリングとして、AI、デジタル系の学びを、無料で提供する。
など大盤振る舞いしたいな~
消費税は食品は無税。食品以外は3%。生理用品、住宅関連は消費税無税。
消費税減税は2年の期限つき。2年たってもデフレのままなら、さらに2年延長。年でインフレ3%を超えたら減税終了など、終わりを明確にしておく。
あと起業をもっと後押しするような政策かな~


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