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推しが聴いてるラジオで推しが歌う新曲の曲振りをした話

※なんともいえない感動を忘れたくないのでこの日の出来事を文章にしておきます。


私の生活の中にラジオという存在はまったくと言っていいほど、ない。

普段はYouTubeかNetflixを観ているし、耳だけ傾ける場合はもっぱら音楽を聴いている。ながら聴きというのがあまり得意ではないので、自分の中に何かを取り入れようと思った時にラジオという選択肢が私にはなかった。

私がラジオを聴くのは、推しているアイドルが出演するときか、推しているアイドルグループの新曲が解禁されるとき。しかも気力がある場合だけなので年に1.2回くらいの頻度だった。

そして、昨日がそのときだった。

近々発売されるニューシングルの収録曲、しかも推しにとって久しぶりのユニット曲、そして今推しは活動休止中。収録でもなんでも良いから声が聞きたい。とにかく聞きたい。だから今日の新曲解禁はしっかり聴くことにした。

気分が良いのでお便り回収率にも貢献した。酒の話は得意だ。

オンエアは23時。それまで寝落ちしないように時間を潰していると、知らない番号から電話がきた。営業電話に捕まって30分相手をしてしまうという失敗を何度も経験しているので、不在を決め込むが思ったよりしぶといので電話番号を調べるとTOKYO  FMからだった。

TOKYO FM…?まさか

と思って通話状態にしたのが一歩遅く。電話は届かなかった。即折り返すも、流れるのは営業時間終了を告げる無機質な声。Twitterで検索をかけまくると、そもそもこの番組はリスナーへの逆電(パーソナリティがリスナーに電話をかける)がメインのようだった。(はじめて聴くのでそれすら知らなかった)

もしかしたら、とんでもないチャンスを逃したのかもしれない。

「TOKYOFM  電話 出れなかった」で検索をかけるも、同じような失態を犯した人間たちのツイートが出てくるがその後どうなったのかはもちろん知る由もなかった。ただ、みんな2回目の電話が来ることを神にも縋る思いで綴っていた。なので私も神に任せることにした。念のため3回営業終了アナウンスを聞いて、TOKYOFMを連絡先に追加した。

こういうミスは一時本当にどん底まで後悔する。


***


悲劇の失態から1時間半後、もう諦めていた時に再び電話が鳴った。

今度は新卒時代の電話対応ばりのスピードでとると、内容は私の送ったお便りが採用されて電話を繋ぐかもしれないという許可どりと送ったエピソードの深掘りだった。

このnoteの冒頭エピソードを送ったから、採用される自信は正直少しだけあった。

10分ほど話終えると、電話が決定した場合、本番前に再度電話をいただけるとのことだった。電話を切ってから、自分のミスでチャンスを逃したという事実がなくなったことにホッとした。あとは運だ。これで選ばれても選ばれなくても気持ち良く寝れそうだ。

オンエア30分前。また知らない電話番号から着信があった。流石にTOKYO FMだろうと迷いなく電話を取ると、ついさっき聞いた声が聞こえてきた。

「2番目に電話をかけることがほぼ決定したので、オンエア中は携帯を近くに置いておいてください」

そこから簡単に流れの確認をして、1人目の電話中に電話を繋ぎますということで電話を切った。私の流れは、元々推していたアイドルが卒業発表した時に飲んだビールが忘れられない。というエピソードを話した後に、今の推しメンは誰ですか?とMCに振られ、そこから話題を櫻坂に持っていき、新曲解禁楽しみです的なメッセージを送って新曲オンエアに繋いでいく流れだった。

仕込みみたいに良くできた流れだが、固有名詞を一切明記せずお便りを送ったので、私の今の推しメンが今日解禁する新曲の歌唱メンバーであることはディレクターが電話をしてきてはじめてわかった偶然だった。

今度は心配になってきた。今日はアイドルオタクのリスナーが多いことを考えるとエピソードの引きはある。文章だけなら面白いかもしれない。ただ私は話すことが絶望的に苦手だった。つまんない話して後でTwitterで叩かれたらやだなあなんて思うと、急に電話が憂鬱になってきた。ビールを呑んでテンションを上げようかと思ったが変に酔うのが怖いので、アルコール度数低めのビールをちびちび呑みながら待つことにした。

番組が始まってからは全然内容を覚えてない。Twitterの実況を確認しながらタイムラグを調整して、電話がくるのを待った。

1人目の電話が終わり、嵐の『愛を叫べ』が流れたころに電話がきた。繋いだまま、曲終わりにスタジオとつながるらしい。二十数年生きている中で一番緊張する電話だった。

電話はとにかく緊張した。まさかの前情報なしで自ら送ったエピソードを語る方式だったことを1人目の時に知ったので、必死に構成を練っていた。映像もイメージ図も補足の文章もなしで、声のみでその時の情景が思い浮かぶように。起こったことをただ時系列に話すのではなく、聞き手が惹きつけられるように前後させたり声に抑揚をつけたりする。(緊張でおそらく全然できていなかった)

エピソードトークが終わり、話題を櫻坂に移したことで私の役割は終わったとホッとしていた時、テンションが上がりきったパーソナリティにこう言われた。

「じゃあ櫻坂か小林さん(推し)への想いを言ったあとに乾杯の音頭をとって新曲にいこう。託していい?」

それはいわゆる曲振りというやつでは?

想定していた流れにはなかった、思いもよらないボーナスステージに震えた。自分の曲振りで推しの新曲が解禁されることが、今後の人生であるだろうか?絶対ない。

アドリブを上手くこなせた気がしなくて、肝心の新曲解禁はイントロまでしか意識がなかった。

乾杯と曲振りの後、繋がれたままの電話から新曲の出だしを聴いた。「曲の途中にすみません」とディレクターに切り替わり、短い挨拶を交わして電話は切れた。


***


放心状態でスマホを開くと、一件の通知がきていた。活動休止に伴い3週間止まっていた推しの有料メッセージアプリからだった。慌てて開くと、メッセージは数分前に届いていた。

推しがラジオを聴いていた。

私は休養中の推しが聴いていたラジオで、推しが歌う新曲の曲振りをした。
そう思うと、もっと伝えたいことが沢山あった。緊張していたのもあったけれど、休んでいる人に対して「ゆっくり休んで早く帰ってきてほしいです」と言ってしまったのは相応しい言葉ではなかったかもしれない。何よりもっと推しに対しての想いを話せばよかった。私のハートブレイクエピソードなんてどうでもいい。脳内反省会は大盛り上がりだった。

自分では振り返られないので、深夜に別界隈のオタクをやっている友人に見逃し配信のURLを送りつけて確認させた。「愛は伝わってきたよ」ということだったのでこれ以上考えないことにした。


言葉を使って話すことって難しい。

ラジオは映像や画像の補足情報も出せない上に表情すら伝わらない。言葉と自分の語り口だけで伝える。パーソナリティは言葉にすべてを乗せている。それを実感したからこそ、「ながら聴き」をせずちゃんと受け止めようと思った。

それにしても、ラジオっていい。

パーソナリティとリスナーがリアルタイムでおしゃべりをして、それを聴くリスナーがSNSでメッセージを送り、パーソナリティが読む。聴いている全員がおしゃべりできる素敵な空間だった。

自分が冷や汗書くほどの思いをして言葉を届ける経験ができたからこそ、知ることができたのかもしれない。


Special Thanks:TOKYO FM「SCHOOL OF LOCK!教育委員会」

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