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青が平たい

途切れなく 青が平たい
翼さえ 静止したかと 淡い錯覚


鳥が抵抗を楽しんで、宙に止まったように見える。
穏やかな風と戯れて、そのまま遠くへ行って見えなくなった。
あまりにも空が平坦で、陽気が満ちて、病気が蔓延しているなんて思えなかった。
このごろは毎日そうだ。

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そのぶん、雨で暗い日は世紀末のようで胸が詰まる。
今はただ雨の季節を恐れている。


家のすぐそばに登山口があるので、朝ごはんのあと、すこし山を歩く。

尺取虫が見えないほどの細い糸を出して、木からたくさんぶら下がっていた。
これってなにをしているんだろう。
ものすごく長く、かぼそい糸。

あねは心配性なのか、ぶら下がる尺取虫を枝に乗せて捕まえては虫かごに入れるものの、かごが揺れたら痛いかなあ、大丈夫かなあ、逃してあげようかなあ、ねえなんか動いてないよ、もう逃がそうかなあ、と、すぐにうまく歩けなくなってしまう。
結局、いつも空の虫かごを持って帰ることになる。

山ですれ違うひとはみんな、「お早うございます」とちいさく挨拶をし合う。
いもうとも真似をして「おあおーう」「おあおーう」というようになった。


これから他者とのコミュニケーションのしかたを学んでいくべき1歳半というこの時期、家族以外とほとんど触れ合えないという状況は、すこし気がかりだ。
あねとは正反対に警戒心がちいさく、道端ですれ違うひとすべてとハイタッチしながら歩くほどに人懐こい彼女なので、大丈夫かなあとは思いつつも。
本能?濃厚接触したがっている。


歌は3年ほど前に詠んだもの。
Déjà vuな空なのである。


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