ゾンビ映画の不幸


「カメラを止めるな!」 

GYAOにて初見。無登録で見れます

2020年3月13日(金) 23:59まで


評判は知っていたけど公開時に劇場鑑賞する予定がなかったので、敢えてネタバレレビューを探すものの見あたらず。監督や出演者のインタビューを見ても、内容知らないので意味わからず。

「最初の30分がゾンビ」というのは一応言っていいネタバレのはず。
あまりあらすじに触れない記事になっていると思いますが、これから鑑賞するので心配、という方は念のためこれ以上見ないでください。



すでにテレビ放映もしてるし、大方の日本国民が鑑賞済みではないかとも思われる、全方向的に異例の作品となりました。
みんなが映画館で映画を観なくなった時代、そしてSNSの時代、
大勢の人に、映画鑑賞そのものの楽しさ、おもしろさ、
映画というものの表現の豊かさを知らしめた、という意味で重要な作品と位置づけられるかも。

それゆえに、問題があるとすればこの作品が「ゾンビ」を扱ったこと。

この作品が「ゾンビ映画ではない」ということは、見た人ならわかります。
ゾンビでなくても成り立つのでは、と思った人もいるかも知れませんが、
そもそもゾンビは低予算娯楽映画の定番かつ王道設定、なので、割と自然な選択です。
また、この作品に限っては元ネタの演劇作品があるそうで、元ネタもゾンビだったかどうか含めてその関係性は知りません。
そして、制作者が「ゾンビなんか大嫌い」なら最初から一切扱わないと思うので、大好き♪かどうかは別として、まあそこそこはお好きかも、少なくとも表現としてのゾンビはありと思ってた、
と想像します。


低予算だけど娯楽性の高い映画にしたければ、選択肢は大きくふたつあります。

1、エロくする

2、グロくする

または両方。

視覚的にエロくしすぎるとR指定がつきます、グロも同様ですがもう少し幅があるのかも。
映倫のグロ指定基準はよくわかりませんが、
「カメ止め」に指定はありませんから、このくらいなら「ご家族向け」にもなり得るということだし、
実際に作品も実はファミリー向けです。

それ故に。

普段は別にゾンビとかホラーなんか見ないよ、
って人がこれを見てしまったから、

「面白かったけど最初の30分が・・・」

「最初の30分を我慢すれば大丈夫」

とかおっしゃるわけです。

かわいそうですね、見たくもないゾンビ見ちゃって。


昨今、ホラー映画の株は下がっているように感じられます。

だってそういうもんでしょ、ホラーを好きこのんで観るのは特にホラー好きな人か、マニアでしょ、
そう思った人、多いかも知れません。

オカルト映画の華やかなりし70年代、ホラーのかかる映画館に行列ができたなんて信じられないでしょう。
間に合わないから隣接の映画館2館で上映とか、今なら5個あるシネコンで3つぐらい同じ作品やってるとか、そういう感じかと思います。
「エクソシスト」っていう作品なんですけど。
あ、知ってます?

80年代には「スプラッタ」ジャンルが出現、今ではメジャー扱いなサム・ライミ監督の「死霊のはらわた」がスマッシュヒット。
マニアではないそこらのふつーの高校生が
「スペバン観た?」
とか言ってたんです。

そんな時代が、本当にあったんです。

本当に・・・ 

あったんです・・・

※スペバンは「スペースバンバイア」の略。今だとB級扱いされそうだけど当時はSF大作として公開、低予算映画ではなかったです。当時は配給会社の宣伝もうまかったと思います。


楽しかった80年代(遠い目)

今ではさっぱり映画観なくなっちゃって、なんでかといえばお金と心の余裕がないからなので
ただひたすら自分自身が残念な状況にある中、カメ止めのヒットはなんだかほっこりする「ええ話題」だったので、嬉しかったです。
カメ止めありがとう。


GYAOのコメントってマイナス評価が多いので逆に参考になるから楽しみに見てますが、
大ヒットしてから見た人が
「思ったほどじゃなかった」「期待ほどではなかった」という感想になるのも自然で、
それはつまり「ヒット作品に対する印象」です。
そもそも低予算の自主制作に大きな期待を寄せる者ありとするならば
マニアか関係者以外にないので、逆に言えばそれ以外の人は

「意外といいじゃん」

「みんな知らないかも・・・存在を教えたくなっちゃう」

みたいな気持ちになりますし、もし内容が良くなかったとしてもある意味当然なのでガッカリ感は少ないし、良かったらほぼプラス方向への評価にしか繋がらないから、
もしもこの映画に最初からもっと予算がついて普通に配給されていたら、
ここまでのヒットにはならなかったかも。
監督は次回作のハードルが上がっちゃって厳しいと思いますが、ふつうにがんばっていただきたいです。


この作品が公開されたばかりだったころ、
低予算自主制作BC級以下糞ゾンビ映画を期待して観た人は「金返せ!」ってなったかも?

実はゾンビ部分が結構良くできてるから。

低予算でワンカメで、しかも単体としての完成度が良ければいいという企画ではなくて、など考えると相当上手にできてるので、
がっかりしただろうなあ。
低予算自主制作BC級以下糞ゾンビ映画を観たかった人。


以下ネタバレ注意。
個人的に好きなとこ。


・簡単に妥協する制作者w

・エンディングで実際のメイクさんが返り血で結構血まみれ♪なのが良かったです。

・ゾンビ編で女優が(実は)カンペでアドリブを要求されたシーンと、そのアドリブが棒過ぎて爆笑。
なかなかあんなにうまいこと棒にできないと思います。あそこ天才。

・ファミリー向け部分としては、娘ちゃんがお母さんの手を掴んで挙げるところでうるっとしてしまいました。
私だってちゃんとファミリー向け作品で感動できるんですよ。
低予算自主制作BC級以下糞ゾンビ映画も大好きだけど。


それでは、ヘンリー・マンシーニの手がけた壮大な
「スペバンのテーマ」を聞きながらお別れです。
また来世♪




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