見出し画像

私の失恋ルーティン

また一つ、恋が終わった。

悲しい。悲しいのだけれど、厳密に言えば「またか」って感じ。そんな冷めた態度を取ってしまうくらいには、失恋に慣れすぎてしまった。
私は全く恋愛体質ではない。だから正直こんなに失恋ばかりしていると、失恋をするために毎回恋している気さえしてくる。

なぜ失恋を繰り返し、何度悲しんでも変わらず生きていられるのか。
それは、失恋を繰り返すうちに失恋を上手に消化し、味わえるようにさえなってしまったから。

手順1:泣く。

声をあげて、人目を気にせず、思い切り泣く。
涙を流すと、体の中のいらないものが全部外に流されていくような感覚に陥る。

ふざけんな。
あの人のバカ。
こんなはずじゃなかったのに。

口に出せない醜い感情たちを全部ひとまとめにして、とにかく泣く。ひとしきり泣くと、スッキリする。ひとつ壁を越えたような快感や達成感がある。

体に泣く機能があってよかった。
どんなに傷ついても生きていくためには、必要不可欠な機能なのかもしれない。

手順2:失恋ソングに浸る。

失恋ソングは何故あんなにも魅力的なんだろう。

美しく切ない詩。胸を締め付けるボーカルの声。心に刺さるコード進行。

失恋ソングは失恋した人間が聴く音楽にしてはあまりにも魅力的すぎる。これまでの楽しかった想い出や今抱えている辛い感情に想いを馳せ、曲にどっぷり浸りながら耳を傾ければ、いつのまにか私は悲劇のヒロイン。

今確かに辛いはずなのに、何故か気持ち良さを感じてしまう。曲を聴きながらドーパミンが溢れ出て、悲しさと気持ち良さで感情がぐちゃぐちゃになっていくのが手に取るようにわかる。

結局私たちは、満たされないくらいの方が快楽を覚えてしまう生き物なのだろうか。

手順3:失恋要因を見つけて安心する。

続かなかった恋には、必ず理由がある。失恋したばかりの私は相手のことを擁護したり、自分の非を認められるほど強くはなれない。

考え方が違ったから。
生活リズムが合わなかったから。
相手の好みの顔じゃなかったから。
未来の幸せのために身を引くべきだったから。

失恋要因は、失恋した私を癒す。
この恋は続かなくて当然だった、そういう運命だったんだと、優しく擁護してくれる。まるで幼い頃の母親のように。

失恋要因という温かい毛布にくるまりながら、ただ失恋の傷を癒すため、今日も眠りにつく。

手順4:自由の身になったことを噛み締める。

「恋は盲目」とはよく言ったもので、恋をしているといつのまにか自分を見失っていることがある。

髪型や服装。
仕事や趣味。
休日の予定。
未来のライフプラン。

ちっとも我慢していないはずなのに、いつのまにかあれもこれも恋人ナイズされている。

あの人が好きな髪型や服装。
あの人に合う仕事や趣味。
あの人に合わせた休日の予定。
あの人と一緒にいるための未来のライフプラン。

そこに私の意思はない。そのことに気付いていない。それなのに、自分の意思に反している不快さにも気付いていない。

失恋とは、自分を取り戻すこと。
あの人から解放された私を縛るものは何もない。失恋を繰り返すうちに、解放された瞬間に底知れない快感を覚えるようになってしまった。

好きな髪型や服装。
自分に合った仕事や趣味。
自分本位の休日の予定。
自分のための未来のライフプラン。

今はとにかく自分に向き合うことに精一杯。
だけど必ず、また次の恋へと歩き出す。

終わりに

辛い。
悲しい。
もう恋なんてしない。

何度心に刻んでも、結局また恋している。
今はまだ、終わりのない旅の途中。
いつか終わりが来ることを、夢見ている。

涙の数だけ強くなれるよ。

そんな言葉を心のどこかで信じて、今日も淡々と失恋ルーティンをこなす。






この記事が参加している募集

#振り返りnote

85,214件

#眠れない夜に

69,479件

最後までお読みいただきありがとうございます。 頂いたサポートは次の記事を書くための書籍代、または経験代にさせていただきます。