コラム

★土器の製作技法

一般的に土器の材料は、その文字の通り土です。土の中でも粘土と砂を混ぜて真水で濾してねかしたものがつかわれることが多い。それをこねて碗や皿などの形を作っていきますが、轆轤が使われるようになるのは、ずっと後のことです。日本の公的な記録で、轆轤を土器製作に使うとは、少なくとも古代まではないということです。ただし土器の中の碗や皿などは、仕上がった時の平面的な断面形(円形)から回転力なしには作れないでしょうから、やはり轆轤に似た回転する土台を使った可能性は、非常に高いと考えられます。
 土器は底面からだんだん上方に向かって積み上げて作っていきますが、そのやり方を以下に説明します。
まず、最初に粘土を紐状にして幾つもつくります。それをぐるぐる巻いて繋いでいき、叩いてつぶしますと、円形の粘土の薄い板状のものができます。これを底部粘土板と呼び、この粘土板にまた粘土紐をその外形に合わせてぐるぐる巻いて積み上げていきます。紐と紐の間や繋ぎ目は、指で撫でて消していきます。この繋ぎ目は焼いた後にも残ることがあり、これを粘土紐巻き上げ痕または、輪積み痕などと呼び、ぼくらは図に描き入れます。立体が円筒形の器は、縄文時代から、すべて底部粘土板、粘土紐巻き上げ成形という方法で作られます。平面形が円形でないもの、すなわち立体が円筒形でないものは、粘土の塊を板状に切ってはりあわせて作ります。近世の角皿なんかはそういう成形で、植物の花や葉に似せた器なんかもありますが、これらは、型に押し付けて形を作ります。ですからこの成形方法は、糸切り成形、型押成形などと呼びます。気を付けなければならないのは、表面が四角でも底部が円形のものです。これは轆轤成形した後に、型を(に)打ち込んで製作したもので、これを型打成形と言います。高台の作り方は、型押成形ははり付け高台、型打成形は轆轤で削り出した高台です。それ以外では形がグニャっとした手づくね成形がありますが、京都は17世紀初頭までほとんど轆轤を使わないため、手づくね成形がわりとあったようですが、轆轤を使わなくても、粘土紐巻き上げ成形でも作れますから(手のひらの上で回転させてもできます。)これは手づくねと区別しなければなりません。
まとめますと、
1.土器の成形の基本は、底部粘土板、粘土紐巻き上げ成形。
2.1は、回転力を使った成形で轆轤を使えば高速回転で製作できますが、轆轤を使わなくても成形は可能。
3.粘土紐巻き上げ成形以外に糸切り成形があり、これは型押成形ともいい、型打成形と区別しなければならない。
4.手づくね成形も平面が円形のものは、粘土紐巻き上げ成形であり、低速の回転を使った成形であること。手づくねは、京都産の伝統的な技法で、京都のカワラケは手づくね成形です。

※なお、常滑や備前の大甕なども粘土紐巻き上げ成形ですが、これらは、粘土帯巻き上げ叩き成形と呼びます。内側から当て具を当ててそとから、綱などで叩いて締めます。

須恵器大甕の内側の渦巻きが青海波文という当て具の跡になります。

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