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第67話「エマージェンシー・ドリル」

2日目と3日目のエマージェンシー・トレーニングも内容は盛りだくさんであった。ライフ・ラフトやスライドラフト、サバイバルキッズの復習をした後、デンジャラスグッズ(機内持ち込み禁止や制限品)についての講義。

例えば、「ドライアイスの持ち込みはOKか?ドライアイスは持ち込みできるが、最大1.5KGまで可能。」のような細かな規定がある。当然だが機体火災の原因になりえる花火やテロリストやハイジャック犯に悪用される可能性がある銃器や刃渡り5㎝以上の刃物などは持ち込み禁止である。

デンジャラスグッズに関しては、大きく分けると4つカテゴリーが設定されていて、①機内持ち込みOK(制限量なし)、②機内持ち込みOK(制限量あり)、③機内持ち込みは出来ないが、スーツケース等と一緒に貨物室に保管する場合はOK、④機内も貨物室も両方持ち込み出来ない。

と言った仕分けがされる。客室乗務員はこれらの仕分けされた表を正確に読み分ける能力が必要になり、実際に機内で何かデンジャラスグッズが発見され、そのグッズが液体漏れや悪臭を発するなど安全で快適な運航に支障をきたすようならコックピットクルーに報告する。

正直なところ、新人クルー13人にとって大切な内容と言うことは理解できたが、覚える用語が多すぎて、きつい時間だった。

・・・。

3日間のトレーニングの中で一番楽しかったのが、セーフティ・デモンストレーションの実演。安全のしおりや酸素マスク、黄色のライフジャケットをつかって、お客様に緊急脱出時の方法を説明するモノだが、初めは皆、バラバラでとても見せられるレベルではなかったけど、2-3回やって行くとスムーズにできるようになってきた。

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機体火災の消化トレーニングでは、3~4人のグループに別れ、グループ毎にシュミレーションを体験した。

例えば、①頭上の棚から火災が発生、②後方ギャレーで火災発生、③機内中央のトイレから発火と言った感じで、第一発見者のCAが仲間のクルーを呼び、的確な指示を出す事が求められる。

キーワードはA.B.Cだとラリーが説明する。

AはAttackerのAで、最初に火災を消化する係、スモークフッドをかぶり、手には火傷防止用のグローブ、そして消火器から火災に向かって消化液を吹きかける。

BはBack-upのBで、Attackerの消火器が空になったら、直ぐに後退して消火活動を行うための準備をして待つ。

CはCommunicatorのCで、コックピットクルーへの連絡、他のクルーへの応援要請、必要に応じてお客様を非難させたり、煙による目や喉の痛みを防ぐ為に、乗客に塗れタオルを配る。

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4日目、いよいよ767の脱出手順と緊急脱出に必要な備品のテストの日がやって来ました。

「When aircraft has stopped, unfasten harness assess condition」
(飛行機が止まったら、ハーネスを外して状況確認)

「If door is unusable, remain at door, redirect passengers」
(非常ドアが使えない状況では、ドア付近に残り、乗客を別方向へ誘導)

「If door is usable, open door, check outside」
(非常ドアが使える状況の場合、ドアを開け、外の状況を確認)

「Shout unfasten seatbelt」
(大声でシートベルトをはずして)


カツヒロはひたすら、B767のエマージェンシー・ドリルを練習していました。キウイエアラインが求める基準は、100%、サービストレーニングの場合は90%だけと、エマージェンシートレーニングは、それより更に厳しく、一問も間違える事が出来ない。

B767は前方と後方2箇所、左右にドアがあり、非常ドアが4箇所、それから、オーバーウィングに左右2箇所ずつの取り外し式の非常出口がある。

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※B767-300の安全のしおりより

それぞれのフライトアテンダントは自分が配置されたポジションによって、担当するドア、又は出口(Exit)があり、緊急脱出の際の手順や任務、機外へ持ち出す道具が異なる。

持ち出すモノの代表例がファーストエイドキッド(救命救急箱)とラウドヘーラー(拡声器)。脱出の際に怪我や体調を崩された方の手当と誘導のために運び出す。それ以外にビーコン(位置情報を発信する機器)が持ち出される。海上や砂漠、山林、ジャングル等に不時着した場合、空からの捜索は困難を極めるが、きちんとビーコンを作動させる事ができれば捜索隊はその信号から機体の正確な位置情報を得る事が出来る。

SFビーコン

※ビーコンの写真(古いタイプのモノです)

90秒以内に乗客、乗務員全員が脱出するためには、それぞれが与えられた手順に従い、効率よく行動しなければならない。お客様の命だけでなく、クルー自身の人命にも関わってくる問題だから、何も考えずにドリル通りに行動出来るようにクルーは訓練する。

理屈では、理解できるが、新人FAにとって、機材毎の乗務資格を得るために、異なるポジション、ドアの操作、EPグッズの位地を完全に覚える事はかなりのプレッシャーだ。

だから、カツヒロはこの数日間、自宅や車の中で、緊急脱出手順を100回以上、声に出して練習した。


つづく。

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