第40話「どうすればスチュワードになれる?」
9月に帰国した際に買ったスチュワーデスマガジンがきっかけで、将来スチュワードに成りたいと思うようになった。色々と調べてみると、日本人の男性が客室乗務員に成りたいと思ったら外資系エアラインに行くしかない。
なんだよ。日本で男が客室乗務員に成りたいと思ったら、航空会社の総合職になるしかない。そして、運よく客室乗務部に配属されたら、数年現場を体験して、その後は地上の仕事をさせられる。そもそも、総合職に入りたかったら4大卒で新卒入社でなけれだめだ。それなら、今の自分がどんなに頑張ても、日本でスチュワードに成れるチャンスはないよ。
カツヒロは、事実を知って悔しがった。
「こんなの完全な性差別じゃないか。運輸大臣に手紙を書いたら行政指導してくれるのかな?それとも、株主になって、株主総会に参加して、経営陣に男性客室乗務員を採用するように提言したら変わるのか?」等と思ったが、自分の力ではどうにもならない。
1996年の日本の空は、大手3社がそれぞれの国から与えられた役割を演じていた。JALの基本は国際線だが、国内線も幹線を中心に運行し、逆にANAは国内線の幹線担当、国際線はJALの半分程度。そして、JASは地方都市路線を担った。1998年までは、この3社がほぼ日本の国内市場を独占していたが、その年に新たにスカイマークが登場し状況が一変した。
同時に改正男女雇用均等法施工された事が引き金となり、それまで、客室乗務員=スチュワーデスのように言われていたものが、中性的な名前のCA(キャビンアテンダント)と呼ばれるようになった。そうしたこともあり、スカイマークだけは設立当初から男女にかかわらず客室乗務員を採用したが、残念ながら大手3社は相変わらず客室乗務員の採用は女性だけだった。
カツヒロはとにかく客室乗務員に成るための情報が欲しかったから、イカロス出版が発行する「外資系客室乗務員になるための本」を購入した。
ある日、その本を読みながら、英国ロイヤルバレイカンパニーの「白鳥の湖」公演の当日券を買うために、劇場の外で並んでいた。ロンドンはエンターテイメントの宝庫で、ミュージカルやショー、映画、イベント、美術館などたくさんの観光素材がそろっている。カツヒロは時々、劇場に行って売れ残りの当日券を買って格安でこれらのショーを楽しんでいた。
「あの~、もしかして外資系の客室乗務員を目指しているののですか?」 突然、女性から声をかけられた。
年齢は25歳ぐらい、どことなく品の良いお嬢様といった感じで、女優の石田ゆり子に似ている。その女性もチケットを買うつもりで並んでいたのだが。カツヒロは集中して本を読んでいたから、声を掛けられるまで、自分の背後にいる人の存在に気付かなかった。
「はい、そうですが。」
「あら、やっぱりそうなんですね。あなたが読んでいる本が気になったので、そう思ったのですが。」
「そうだったんですか。あなたも、バレイを見るつもりなのですか?」 カツヒロは、どうしてこの女性が、わざわざ声をかけて来たのか?その理由が知りたくなった。
「ええ、私もですよ。実は私、全日空の客室乗務員なんです。以前、ロンドンに留学していたことがあって、今回はその時お世話になったホストファミリーを訪問して来たところなんです。」
「へえー、そうだんたんですか。私は今、留学中で英語の勉強をしているのですが、最近外資系の客室乗務員に成りたいと思い始めた所なんです。」
「そうなんですか?では、将来どこかの空港でお会いするかもしれませんね。私も、もしかしたら将来、外資系エアラインに転職しているかもしれませんので、その時はよろしくお願いします。」
本気でそう思っているのかどうかは、分からなかったが、嫌みはなく、そうなったらイイネと思っているような口調だった。カツヒロは本当にそんな日が将来訪れたら良いなと心で思った。
しばらく、会話をしていると、あっという間にチケットブースに到着した。
「あのー、もし、嫌じゃなければ、一緒に見ませんか?」別に断られても失うモノはないから、カツヒロは気軽な気持ちで誘って見た。
「お誘いは嬉しいのですが、ゴメンナサイ。日本にボーイフレンドがおりますので。」
「そうですか、それは残念です。でも、今日は声をかけて下さり本当にありがとうございました。航空会社のお話しも聞けてとても楽しかったです。」
「いえ、こちらこそ。一人で並んでいたら、順番が来るまですごく退屈だったと思いますので。お話し出来てとても楽しかったです。」
「それでは、バレイ楽しんで下さいね。さようなら」 カツヒロはそう言って、その場を立ち去ろうとすると、彼女はきらきらした目で、「きっと、あなたは客室乗務員に成れますよ。日本で応援しています。さようなら」と言って手を振った。
彼女が最後に言った「きっと、あなたは客室乗務員に成れますよ。」と言う言葉が、カツヒロの頭からしばらく離れなかった。今の自分の英語力では外資系エアラインに入る事は無理だろうけど、それは時間をかければ何とかなる。あとは本人のやる気次第かも知れない。
よっし、やろー。とにかく、何事も挑戦しなければ始まらない。為せば成るTry will be done.だ。俺は将来、外資系エアラインで客室乗務員になって世界を飛び回るようになるんだ。
翌日、カツヒロは現地日本人向けの無料情報紙「UKダイジェスト」の広告欄に無料広告を依頼した。
「私は将来、外資系エアラインの客室乗務員を目指しておる者です。現役客室乗務員の方又は、将来客室乗務員を目指している方、友達になって下さい。よろしければ連絡をお待ちしております。」
すると、広告を見た現役クルーの柴崎と言う女性からメールが届いた。ルフトハンザ航空の方で、ベースはフランクフルトだが、ご主人がロンドン勤務のため、フライトの時だけコミュートしているそうだ。
それと、もう一人女性から連絡があった。オックスフォードに留学中の女性で将来客室乗務員を目指している川島さとみと言う学生だ。
よかった。誰も連絡が来なかったら、どうしよう。と思っていたから。とりあえず2人は確保できた。特に柴崎さんは、現役クルーだから、色々と話を聞かせて頂こう。
カツヒロは、2週間後に二人とお茶をする約束をした。
つづく。
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・元ライザップイングリッシュで英語コーチをしていました。専門学校を含めると合計7年間、英語を教えていたので、英語のレッスン承ります。英語の勉強が続かない方のコーチング、サポートもします。
・国際線客室乗務員として50か国ぐらい旅して来た経験やフライト中の面白い話などが出来ます。講演会とかにもお呼び頂けましたら嬉しいです。
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つづく。」
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