第65話「緊急脱出トレーニング開始」
エマージェンシートレーニング
カツヒロは言われた通りジーンズに長袖のシャツ、その上にパーカーを羽織り、靴はスポーツシューズ姿でトレーニング施設を訪問した。
入口のドアにあるナンバーロックに4桁のパスワードを打ち込み、中に入ると目の前にスライド(脱出用滑り台)があった。
※JALさんのモノを引用させて頂きました。
「おー、これが滑り台だ。結構デカイね。」カツヒロは一瞬おどろきながらも、「このスライドで、つなぎ姿のCA達が滑り、脱出するトレーニング」を以前、TVで見たことを思い出し、自分が滑る姿を想像した。
「おはよう。週末は楽しめた?」
後ろを向くと、カオリが声をかけて来た。
「うん。ぼちぼちね。なんやかんやと忙しかったけど」
「ほんとに?私はちょっと寝不足かな?昨日のBBQパーティーは楽しかったけど、先のトレーニングの事を考えると落ち着かないよね。」
「うん。早くこのプレッシャーだらけの生活から解放されたいよ。」
カツヒロは本音を吐いた。
8時30分になると、エマージェンシー・トレーニング担当教官が現れた。今日から2週間、カツヒロ達13人の新人クルーを厳しく指導する男の名前はラリー。
年齢は50ぐらい、ちょびひげで少し白髪が目立つ。身長は170㎝ぐらいだから、ニュージーランド人の中では小さい方に属する。小太りの男だ。
ラリー自身の自己紹介が始まった。
「キオラ(マオリ語でこんにちは)。新人クルーの皆さん、EP(Emergency Procedure)トレーニング施設にようこそ。私はここで、教官を20年程やっているラリーと言います。キウイエアラインに入る前は、ニュージーランド空軍でパイロットをしていました。」
「ここには、私の他に4人、トレーナーがいます。EPの事で何か困った事があれば、彼らに直接、聞いてもらっても大丈夫なので、遠慮せずに尋ねて下さい。」
ラリーは、4人のトレーナーに一言ずつ挨拶をするように促し、全員が簡単な自己紹介をした。男性教官がラリーを含めて3人、女性が2名。この5人が交代で、客室乗務員とパイロットのEPトレーニングを担当する。
彼らは新人クルーの教官もするが、すでにフライトしている先輩クルーのリカーレントと呼ばれる乗務資格更新のトレーニングも担当すると言うことが分かった。
このリカーレントとは、客室乗務員が乗務する機材(B747,B767など)毎の免許更新のようなもので、1年毎に知識と実技試験が行われる。このリカーレントをパス出来ないと、乗務資格を失うのでクルーにとっては、とても大切なトレーニングの一つなっている。
トレーナー全員の自己紹介が終わると、
「これから、航空機事故の映像や写真が多数出てきます。どれも多くの犠牲者がでた悲惨な事故です。自分自身がCAになったつもりで見てください。」
とだけ、ラリーは言い、約20分ほどのDVDを見ることになりました。
※インターネット上から引用:実際に私が見たものはカラーでした。
カツヒロは、航空機事故の映像をTVで見たことはあったが、飛行機の屋根が飛んでしまった写真は初めだった。屋根が半分ぐらい飛ばされており、その状態で乗客はシートベルトをして座席に座っているものだ。
その映像を見た瞬間、クラスが驚きと悲鳴に包まれた。
「えー、うそ、でしょ」
「うあー、これって、冗談じゃないんだよね。こんな状況でフライトなんて、どんな、ジェットコースターよりも怖いと思うよ。」
と心の中で叫びました。
基礎知識として、減圧で機内の酸素濃度が下がり、頭上から酸素マスクが落ちてくる事は知っていたが、酸素マスクが降りてくる以前に屋根が吹き飛んでしまっては、そんなの関係ないって・・・。
DVDの上映が終わると、ラリーは少しおどけた顔で言った。
「今見せた映像は皆にとって衝撃的なものだったかもしれないが、現在の技術力を持ってすれば、航空機が事故で墜落する確立は100万回に1回程度。だから、君たちは事故に合うことはほぼゼロだから、あまり心配し過ぎないように。」
・・・。
午前中は座学中心でマニュアルに出ている、様々な道具類の名前や使用法、配置位置などを学習した。
※機内に搭載されている火災対策用のスモークフッド
例えば、機内消化器やスモークフッドと呼ばれる、火災の際に使う顔をすっぽり覆ってしまう特殊なマスクのようなヘルメット、酸素マスクなど、実物を見て、触りながら学んだ。
つづく。
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