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第64話「インストラクターの自宅でBBQパーティー」

先日、会社から支給された黒くて丈夫な機内持ち込みバックにはキウイエアラインのロゴマークと社名が印刷されている。大きさはボストンバックより少し小さめだが、かなり多くの収納スペースがある。先輩クルー達はこのカバンの中に、仕事用のエプロンやオーブングラブ、機内シューズ、ナイトフライト用のカーデガン、化粧品などを入れて乗務する。

64.ボストンバック

カツヒロ達13人の新人CAは、第一周目のトレーニングを全て終え、5冊のマニュアルをそのバックに詰め込み帰宅の途へついた。

カツヒロが自宅に戻ると、シドニー日帰り乗務を終えたばかりの先輩の木村が話かけてきた。キウイエアラインでは、通称ダブルバンガーと呼ばれるフライトが結構アサイン(割り当て)される。

このダブルバンガーとはオークランドから近隣都市にフライトして、その日のうちにオークランドに戻ってくる乗務の事を指し、メルボルン便、ブリスベン便、ケアンズ便、サモア便、クックアイランド便、フィジー便、トンガ便などがそれに当たる。

宿泊をともなう乗務と異なり、乗務手当が少ない事や翌日も連続でダブルバンガーをアサインされる事があるから、案外、きついスケジュールの為CA達の人気が低い乗務形態だが、確実にその日のうちに自宅に戻れる点をメリットに感じている乗務員もいる。例えば、ペットや家族のお世話が必要なクルーがそれに当たる。

M5.木村

「武藤君、どう、トレーニングは順調?覚える事が多くて大変でしょう?」

「はい。予想はしていましたが、本当に覚える事が山積みで大変ですね。それから、テストが多くて、そのプレッシャーも・・・。」

「そう。いつも遅くまで勉強しているようだから、少し心配してたんだけど、案外元気そうだね。」

「いえいえ、へとへとですよ。」

「本当に。まだ若いんだから、余裕かな?って思ってたんだけどね。ところで、良かったら今夜はおごるからシテイの韓国焼肉店にいかない?なんか、少しお疲れ気味だから、肉でも食べて元気をだそう。」

「本当ですか?私も焼肉が食べたいと思っていたので、とても嬉しいです。」

「そう、それなら決まりだね。」

「はい。ありがとうございます。」

オークランドには韓国人が経営する安くて美味しい焼肉屋が多数ある。その中で木村が気に入っているカスタムストリート沿いにあるアリアンに出かけた。デイナーのバイキングは12ドルと良心的な価格。

BBQパーテー

人気の骨付きカルビを筆頭に、豚、鳥、シーフードも充実している。ナムルと呼ばれる惣菜類も豊富で、それら全てが食べ放題。飲み物はコーヒー、紅茶、水がおかわり自由。デザートにソフトクリームをセルフで作れるというのもポイントで、内容がとても充実しているのに料金が安いという事で人気になっている。

木村は、慣れた手つきで肉を焼き始めた。

「そう言えば、明日はミッシェルの家でバーベキューパーティなんだって。」

M4.カツヒロ

「はい、そうなんです。場所が今ひとつ分からないので、同期のアンディの車にレイチェルと一緒に載せてもらう予定です。」

「そうか、まだ、オークランドに住み始めてひと月足らずだったよね、土地勘は少しはついた?」

「ええ、多少は地名とか覚えましたが、地図で確認しただけなんで、実際に車で走ってみないと、覚えられないですよ。」

「それにしても、ミッシェルってある面、かなり理想的な人生歩んでいるよね。だって、高級住宅街のミッションベイに30歳ソコソコで一戸建てを購入して、旦那は副操縦士、2歳の娘の母親でしょ。」

「そうですね。美紀子や香織もそう言ってましたよ。ミッシェルって可愛らしくて、キュートなフライトアテンダントの典型見たいだけど、しっかり素敵な旦那さんを射止めて、更にスゴイ大きな家とチャーミングな女の子のお母さんだから、もう、全てがすごーい。って憧れのような、尊敬の眼差しで授業を受けているんです。」

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翌日、ミッシェル邸に呼ばれた同期生たちは、20畳ぐらいあるリビングルームに案内された。そこからの眺めは本当にため息が出てしまいそうなくらい・・・。ハワイのワイキキビーチ沿いのホテルの窓から外を眺める時と同じように一面、美しい海とビーチが広がっている。

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「すげーなあー。」カツヒロはため息がでそうになった。

昨日までのトレーニングの話はなるべくしないようにしようと、ミッシェルが提案すると、話題は、ケイトの結婚式の話に集中した。

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20代前半から30代前半の女性たちにとっては、どんなドレスを着るのか?相手がどんな人なのか?どうやって知り合ったのか?と、まあ、矢継ぎに質問が飛び出し、ケイトは笑いながら一つ一つ答えた。

一方、男子4人はそんなに興味がなかったので、ワインやビールなどの飲み物を配ったり、外で始まるBBQの準備に精力的に準備をした。もとバーテンダーのジェームスは、お得意のカクテルを作ったり、調理経験も生かして上手に肉を焼いてくれた。

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その晩のパーティーはミッシェルと仲の良いCA友達や旦那のスティーブの友人も参加し、30人近くが集まった。本当に賑やかで楽しい時間を皆が過ごす事が出来た。


つづく。

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