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第37話「46日間17国訪問の旅へ出発」

予定通り半年間、フルタイムで語学学校に通った。

しっかりと、英語力を身に着けたいと思って、宿題の英語日記は毎日書いたし、勧めらた英語の小説も買ってみた。                小説はあまり難しすぎると途中で挫折しやすいから、知っている内容のモノが良いと言われて、映画にもなったベイブ(農場にもらわれてきた子豚が、牧羊犬のコンテストで優勝する物語)を選んで、最後まで読み切った。

そうした努力のおかげで、ある程度は英語力はついたけど、まだまだ求めていたレベルよりは低い。カツヒロはこんなはずじゃないと悩んでいた。

うーん、やっぱり、このまま中途半端な実力で辞めてしまったら、きっと1年後には元のレベルに戻ってしまうんじゃないかな?          ヨーロッパ旅行のプロ添乗員になるのなら、今の英語力でも何とかやって行けるかもしれないけど、もっと上を目指さないと平凡なレベルのまま一生を送ってしまうと思う。
俺が旅行会社の営業員を辞めようと考えた理由には、時間がかかっても普通の人が直ぐに追いつくことの出来ない特別な技術を身に着ける必要があると思った事も含まれる。だから、英語力を高めようと思ったんだ。語学力をつけるのは相当な時間とエネルギーが必要だけど、そのレベルに到着出来れば、競争相手は中々、追いつけない。                 
自分より20歳以上も年上の課長達が、カツヒロと同じように年間売上予算を持たされ、必死に営業をしている姿を側で見た。その時、自分は20年後に同じようになりたくないと強く思い、その為に圧倒的な英語力を身に着けたいと心に誓った。

そして、出した結論は、10月後半からもう1年間、ロンドン留学を続けるという事だった。金銭的には何とかギリギリ持つ。だけど、今度はアルバイトをしよう。

ラッキーだったのは、授業料が本当に安い語学学校を見つけた事だった。今まで通っていたトッテナムコートロードの学校は、政府が公認している管理が行き届いた学校だったので、施設や先生の質は高かったけど、料金は高い。それに対し、この学校は年間授業料がたったの8万円。一日5時間、週5日で52週分の料金だ。

なぜ、こんなに安いのか?それにはからくりがあって、学生ビザを取るためだけに授業料を払う東欧からの学生が利用するからだ。彼らは英語の勉強より、アルバイトで稼いだお金を祖国に送金する事がロンドンに留学する目的だから、授業料を払っても実際に学校に来ない。学校側にすれば、安い料金でも、授業を受けないわけだから有難い。お互いがwin winの関係に。

パスポート

・・・。

出発の前日、アブデルに部屋の荷物を預かってもらうようにお願いした。「アブデル、明日から46日間のコンチキツアーに出かけて来るので、8月28日まで荷物を預かって欲しいんだ。」

「いいよ。本当は保管料をもらいたいけど、たいした量じゃないからさ。その代り、お土産を期待しているよ。」と言ってアブデルはニヤニヤした。

「ありがとう。アブデル。お土産ね。」

「いよいよ、明日出発か。楽しみだけど、7週間って結構長いよな」

カツヒロは、興奮して中々、眠りつけない。だから、今回の旅程表を見つめながら明日から46日間で、訪れる17国の事を思い浮かべることにした。

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今回、周る国は、フランス、スペイン、イタリア、バチカン、ギリシャ、エジプト、トルコ、ブルガリア、チェコスロバキア、ハンガリー、オーストリア、スイス、リヒテンシュタイン、ドイツ、オランダ、ベルギー。イギリス~フランス間の往復とイタリア~ギリシャ間はフェリーを使い、ギリシャ~エジプト間の往復は飛行機で移動する。エジプト国内以外は同一のバスで移動するから荷物の管理は楽だ。                    

そして、この旅の一番の魅力は世界中の若者(18歳~35歳)と一緒に、テントやキャラバン、ホテルの部屋をシェアしながら一緒に周る事。カツヒロにとっては英語の練習だけでなく、様々な国籍で異なる文化や背景を持った外国人と一緒に過ごすことで、真の国際人としての力を養える点にもある。

コンチキツアー

翌日、ロンドンの中心街ラッセルスクエアーを午前9時30分に出発した大型バスには、カツヒロを含めた36人の若者が乗車している。この36人とこれから7週間かけてヨーロッパとエジプトを観光する。南へとおそよ130㎞走ったところに有名なドーバー海峡のイギリス側の町、ドーバーに到着した。そこからフェリーでフランスのカレーに渡った。

ロンドンからドーバーに移動する間に、ツアーガイドのガリー(NZ人)とドライバーのトム(オジー)の自己紹介をスタートに、参加者全員が自己紹介をした。一度に全員の名前と国籍まで覚えられなったけど、それは時間が解決してくれる。                           ざっくりとした記憶で覚えられたのは、アメリカ人、アイルランド人、オランダ人、ギリシャ人、カナダ人、南アフリカ人、オーストラリア人、ニュージーランド人、日本人(女子2名)が一緒に参加する事だ。

ドーバー海峡を渡るフェリーの中で、日本人女子のヒトミとミユキと言葉を交わし仲良くなった。二人は友達同士でヒトミは元OL,ミユキは大学生。ヒトミの方が6つ年上だった。

ロンドンとパリはもっと遠いかと思っていたが、バスとフェリーを乗り継いで6時間半ほどで到着した。その日、到着するまで7月14日がフランスの独立記念日と言う事は全く知らなかった。だから、夜、エッフェル塔の近くで、花火や光のイルミネーションショー満喫出来て本当に感動した。

「うわー、スゲー。なんなんだ、この圧倒的な凄さは。今まで24年間生きてきた中で、こんなに心の底から感動できたのは本当にごく僅かだと思う。」

音楽と光、歴史的な建造物。どれもが絶妙なバランスで、この華やかなお祭りを盛り立てている。芸術の街、花の都、パリを表す言葉は色々とあるけど、今日のパリは多分、世界一美しい。本当にこの瞬間を肌感覚で体験できただけでも、ツアーに参加して良かった。               明日はルーブル美術館、明後日はベルサイユ宮殿をじっくり見て周ろう。

パリの後は南に移動、赤ワインが有名なボルドーのシャトーに宿泊して、翌日はバスケットにフランスパンとチーズにハム、そして赤ワインを詰めて、眺めの良い丘までピクニックに行った。                その後、スペインのバルセロナでサクラダファミリアやグレル公園を見た。天才建築家のガウディの作品はどちらも素晴らしくて、特にサクラダファミリアを正面に見た時はその大きさと繊細さに思わず息を飲んだ。     他にもピカソ博物館やオリンピック競技場などたくさんの観光名所を周る事が出来た。

サクラダファミリア

バスは南仏に戻り、映画祭で有名なカンヌに2泊。           モナコ公国では、皆、すごくお洒落な恰好に着替えてモンテカルロのカジノでルーレットを体験した。何人かは、数万円勝ったと喜んでいたが、カツヒロは7,000円負けた所で辞めた。皆、普段はTシャツ、ジーンズや短パンと言ったラフな格好をしていたけど、この時は全員がセレブのような雰囲気だった。折角、こんな素敵な場所に来れたのだからと、何人かと一緒にシャンパンをオーダーして乾杯もした。

次の日は、ニースの海岸をレンタカーでドライブした。カツヒロにとって初めて右側ハンドル、右側車線の運転でとても緊張したけど、ヒトミとミユキにせがまれたから頑張った。そのご褒美か?ニースの海岸でトップレスの美女を数人見る事が出来た。

フランスの後はイタリア。最初に水の都ベネチアに2泊、少し南下して、"ロミオとジュリエット”で有名なベローナを経由し、フィレンツェに2泊した。そして、更に南下し、有名なピサの斜塔をバックに逆立ちしている写真を撮って、首都のローマは3泊した。                   ローマは本当に世界遺産や観光名所が目白押し。コロッセオ、真実の口、トレビの泉、スペイン坂、バチカンを見る事が出来た。特にバチカン宮殿のシスティーナ礼拝堂の祭壇に描かれたミケランジェロの傑作「最後の審判」を間近で見れた時は言葉を失った。

その後、イタリア第三の都市ナポリとポンペイを遺跡を経て、フェリーでギリシャへ渡った。この頃になると、ツアー内でカップルが生まれたり、ちょっとしたロマンスが有ったりした。参加者36名はちょうど男女が18名ずつだったので良いバランスだった。宿泊は施設毎に異なるが、基本は4人一部屋が多かったので、なるべく毎回、異なる男子と一緒に宿泊するようにした。又、バスの座席は早いもの勝ちだったが、男女問わずたくさんの参加者と隣同士に座って交流を深めた。


つづく。

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