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第8話「成田発、クアラルンプール経由、メルボルン行き」

1991年3月28日、ついに出発の日がやって来る。

その3日前、カツヒロは笹塚のアパートを引き払い、原付バイクで実家の千葉県君津市まで帰った。それまで1年間、毎日、バイクで新聞を配っていたのでバイクに乗るのは案外好きだったけど、さすがに4時間ずっとはキツイ。

車だったら、高速を走れるから、1時間半もあれば帰れたけど、どうしてもバイクはとって置きたいから仕方ない。ヘルメットがフルフェイスのモノでなかったから、実家に着いた時、カツヒロの顔は排気ガスで真っ黒になっていた。

母親のマキは、しばらくぶりに見る息子を見て、1年で随分とたくましく成長した事を感じ、それがとても嬉しい。

一方、父親のマモルは息子が帰って来た事で、マキの機嫌が良くなり、いつもより食卓に並ぶおかづが豪華になった事を喜んだ。

どこの家庭でも母親にとって、息子と言うのは特別な存在のようだ。

カツヒロの送別会は、3月初めに新宿歌舞伎町の居酒屋で開かれた。特に仲が良くて、徹夜で麻雀をしたり、ビリヤードやカラオケをして遊んだ清水君と大竹君が中心になって催しが企画された。全部で40名のクラスメイトがが集まった。

新宿歌舞伎町

カツヒロは、皆から新聞奨学生をやり遂げた事に対する尊敬とねぎらいの言葉と、メルボルンでも健康に気をつけて頑張るようにと激励を受けた。そして、会の最後には、クラス全員からの寄せ書きと目覚まし時計のプレゼントをもらった。

この目覚まし時計は、皆が100円ずつ出して買ってくれたそうで、カツヒロの英語が上手になるようにとの配慮から、英語で時刻案内をしてくれる優れモノだった。

「皆、本当にありがとう。俺、とにかく頑張から、皆も勉強や就職活動頑張れよ。」「そうそう未だホームステイ先の住所は分からないけど、落ち着いたら手紙を書くからね。」と言って、クラスメイトに住所を書いてもらった。

・・・。

「いよいよ、出発だ。」

午前10時、JR内房線で君津駅を出発し、途中千葉駅で成田空港行きの快速に乗り継いだ。空港には12:40頃到着した。出発が午後16時30分だから、未だチェックインするのは早い。

成田空港

いつも学校の授業で、添乗員になったら出発の3時間前には空港に到着するように先生方から言われていたから、とりあえず合格だ。

未だ昼食前だったカツヒロは、空港内のレストランを転々とのぞき見してた。

「しばらく、美味しい日本食は食べられないかも知れないから、何を食べようか?やっぱり寿司かな?」

「だけど、あんまり食べ過ぎると機内食が食べきれないかも知れないから、軽めのお蕎麦もいいかもしれない。」

色々と悩んだが、最後にファミレス風のお店でハンバーグ定食を食べる事にした。理由は何だかんだ、お腹が空いていたからお腹いっぱい食べたいと思ったからだ。

しっかりとランチを食べ、腹ごしらえが終わった後、カツヒロはマレーシア航空のチェックインカウンターに並んだ。これが人生で初めてのフライトだった。

チェックインカウンター

カツヒロは窓側の席を希望し、46Aの席が割り当てられた。生まれて初めて手にした飛行機の搭乗券。一番上にローマ字でKatsuhiro Muto、Economyと記されていた。From: Narita、 To: Kuala lumpur、Date: 28 March。それから便名がMH81で、搭乗予定時刻16:00、搭乗ゲート41の隣に、Seat 46Aとあった。

受付けを担当した地上職員から、諸注意が告げられた。

「あなたの最終目的地はクアラルンプールでなくメルボルンだから、クアラルンプールに到着したら、乗換が必要になります。」

「はい。」

「MH81便が定刻通りにクアラルンプールに到着すれば、次の便まで7時間半ほど乗継時間があります。その間に乗継カウンターへ行き、メルボルン行き便のボーデイングパスをもらって下さい。」

「はい、分かりました。」

「これが、あなたの受託手荷物引き換え券です。あなたの荷物は直接、メルボルン空港のターンテーブルから出てくるので、きちんと荷物を受け取るまではこの引換券をなくさない様に注意して下さい。」

「はい、ありがとうございます。お世話になりました。」

説明が終わり、パスポートと搭乗券、そして手荷物券を受け取ったカツヒロは、丁寧にお礼を告げると、一つ下のフロアにある出国審査へと向かった。


つづく。

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