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企業の魂を映す鏡、ポジショニングマトリックスの作り方

こんにちは、Steveです。

もう3月も半ばですね。かつての生徒たちが夢に近づいているか考えると、心がざわつきます。同世代が大学院やMBAを目指し海外へ行く姿を見て、僕も学びの場に戻りたくなることがあります。

それでも、学校だけが学びの場ではないと気づきました。目標に向かって共に努力する喜びを、学校外で見つけています。だから、実際には学校には戻らず、自らプロジェクトを立ち上げたり、友人のプロジェクトに参加しています。

さて、出会いと別れの時期ですが今回は、ポジショニングに関して前回触れたテーマをもう少し掘り下げ、ポジショニングマトリックスの作成方法を実践的にご紹介します。実際に企業内でポジショニングワークショップを行うと仮定して書きました。参考になれば幸いです。

ポジショニングマトリクスとは。

ポジショニングマトリックスは、市場内での製品やサービスの位置付けを視覚化する方法です。一般に2つの重要な属性や競合要因(例えば価格と品質)を軸として使用し、これらの軸上で自社製品・サービスと競合製品の位置をマッピングします。これにより、製品が市場内でどのように位置付けられているか、また競合と比較してどのような強みや弱みを持っているかを明確に把握することができます。

参考:カフェ・喫茶店市場のポジションマップ(参照:USP1000 )

ポジショニングの過程における役割

ポジショニングマトリックスは、ポジショニングプロセスの中で、特に「市場分析」と「戦略策定」の段階で活用されます。市場分析では、ターゲット市場と競合他社の理解を深めるために使用され、戦略策定では、この分析に基づき、製品やサービスをどのように市場に提示するか(すなわちポジショニング)を決定する際に重要な基盤となります。

重要性
ポジショニングマトリックスの重要性は、以下の点に集約されます。
◆競争優位の識別
自社製品・サービスの独自の価値提案と競争優位を明確に識別する。
◆市場ニーズの理解
ターゲット市場のニーズと、それに対する自社製品の適合性を評価する手助け。
◆差別化戦略の策定
競合から自社を差別化するための戦略を策定するための洞察を提供。
◆コミュニケーション戦略の強化
ターゲット顧客に対して最も響くメッセージングを開発するためのガイドラインを提供。

総じて、ポジショニングマトリックスは、マーケティング戦略とコミュニケーション戦略の策定において、企業が市場内での自社製品の立ち位置を明確にするための強力な方法です。

ポジショニングマトリックスの事前準備

 企業やプロジェクトがポジショニングマトリックスのワークショップを行う前に準備しておくべきことと決めておくべきことはいくつかあります。これらの準備は、ワークショップがスムーズに進行し、目的に沿った有意義な結果を得るために重要です。

1. 目的の明確化
- ワークショップの目的を明確に定義します。例えば、新製品の市場での位置付けを定める、既存製品の再ポジショニングを検討する、競合との差別化ポイントを見つけるなどが考えられます。

2. 参加者の選定
- ワークショップには、製品開発、マーケティング、セールス、カスタマーサポートなど、様々な部門から代表者を参加させることが重要です。多様な視点からの意見や情報が、より豊かな議論と結論につながります。

3. 市場と競合の事前調査
- ターゲット市場と競合に関する詳細な情報を事前に収集し、分析しておくことが重要です。顧客のニーズ、市場のトレンド、競合の戦略と強み・弱みなどを理解しておく必要があります。

4. 分析フレームワークの選定
- 使用するポジショニングマトリックスの軸を決定しておきます。これには、市場調査や事前の分析結果を基に、最も重要と思われる競合要因を選ぶ作業が含まれます。

5. ファシリテーションの計画
- ワークショップを効果的に進行させるためのファシリテーション計画を立てます。ブレーンストーミングのガイドライン、ディスカッションの流れ、タイムキーピングなどの要素を計画に含めます。

時間に余裕がある場合は、当日中にステップ3.4のプロセスを実施することも有効です。チーム全員で競合をリストアップし、分析フレームワークを選定して軸を定めることにより、チーム全体で共通の理解のもとにポジショニング戦略を策定することができます。

ポジショニングマトリックスの当日準備

ワークショップを成功させるためには、参加者全員が会社の目的や存在意義、つまりパーパスを理解しておくことが欠かせません。この共通認識は、ワークショップでの疑問や迷いに対処し、会社の方針に基づいた意思決定を行う基盤となります。

会社のパーパスを明確に共有することは、ポジショニングマトリックスをはじめとするマーケティング戦略を策定する際に、不可欠な要素です。パーパスは、戦略的な方向性の指針、市場での差別化の強化、ブランドの一貫したコミュニケーション、社内の結束力の向上、そしてさまざまなビジネス上の意思決定のガイドラインとして機能します。

したがって、ポジショニングマトリックスのワークショップを開始する前に、パーパスを明確にし、組織内外で共有することは、マーケティング戦略の成功を最大化し、企業の市場競争力を高めるために重要です。

ワークショップ前に会社のパーパスを書き出しておくのもいいと思います。

ワークショップ

競合のリストアップ(45分〜1時間)


 - 直接競合と間接競合を含む、市場における主要なプレイヤーのリストアップを行います。

競合をリストアップする方法はさまざまです。最も一般的なのは、参加者が思い浮かべる競合を単純にリスト化すること(例えば、ポストイットに各社を記入)ですが、もっと創造的な方法もあります!様々な部罀から集まるスタッフがいる今、この機会に創造性を発揮したアプローチを採用しましょう。以下では、競合をリストアップする際に参考になる、いくつかの方法を紹介します。

競合をリストアップする際には、参加者が積極的に関わり、思考を刺激するような面白いアプローチを取り入れることで、より豊かなアイデアを引き出すことができます。以下に、ワークショップで競合をリストアップするためのアイスブレークや創造的な方法をいくつか紹介します。

1. 「あなたのお気に入り」から始める
- 参加者に自分のお気に入りの商品やサービスを一つ挙げてもらい、その理由を共有してもらいます。その後、その商品やサービスの市場での主要競合を考えてもらいます。これは、参加者が個人的な経験を通じて競争環境について考える良い機会となります。

2. 競合ストーリーテリング
- 小グループに分かれてもらい、各グループに異なる市場セグメント(若年層向け、家族向けなど)や製品カテゴリー(スポーツウェア、スマートフォンなど)を割り当てます。各グループは、そのセグメントの架空の顧客がどのようにして自社製品と競合製品の間で選択をするかについての短いストーリーを作成します。この活動は、顧客の視点から競合を理解するのに役立ちます。

3.. 競合の逆転思考
- 参加者に、もし自分たちが競合企業のCEOだったらどのような戦略を取るかを考えてもらいます。この方法は、競合の戦略や強みを深く理解し、自社の戦略を再考するきっかけになります。

5. アイデアマッピング
- 大きな紙やホワイトボードに自社の製品を中心に置き、参加者に周囲に競合企業や製品を書き加えてもらいます。その際、直接的な競合だけでなく、代替品や異業種からの潜在的な競合も含めてもらいます。このビジュアルマッピングは、競争環境を全体的に捉えるのに役立ちます。

これらの方法は、ワークショップをより参加者が関与しやすく、楽しみながら競合分析を深めるためのアイデアを提供します。重要なのは、参加者が自由に発想し、積極的に貢献できる環境を作ることです。これらのアプローチにより、ワークショップはより有意義で生産的なものになります。

軸の選定(30分〜45分)

 - ポジショニングマトリックスの2つの軸となる属性(例:価格、品質、イノベーションの度合いなど)を決定します。重要なのは、参加者間の合意形成です。

軸の選定方法も多岐に渡ります。基本的に例に上がっていた価格、品質、イノベーションの度合いなどがありますが、それ以外のももちろん考えられます。それらのワークをいくつか紹介します。

軸の選定において、部門間のコミュニケーションを促進しながら進める方法は、ワークショップの成果を最大化し、参加者全員の意見や洞察を取り入れるのに有効です。以下に、軸の選定を行う際のコミュニケーションを活性化させる方法をいくつか提案します。

1. ブレインストーミングセッション
- 軸となり得る要素(価格、品質、イノベーション、顧客サービスなど)について、オープンなブレインストーミングを行います。各部門からのさまざまな視点を聞き出し、可能な限り多くのアイデアを収集します。この過程では、全ての意見を対等に扱い、評価や批判は後回しにします。

2. ドット投票
- ブレインストーミングで出たアイデアの中から、最も重要だと思われる軸を選ぶためにドット投票を行います。参加者に各自ステッカーやマーカーでドット(投票)を行わせ、最も票数の多い要素を軸として選定します。これにより、参加者全員の意見が反映された選定が可能になります。

3. ロールプレイとディスカッション
- 参加者をいくつかのグループに分け、各グループに異なる顧客セグメントの代表としてロールプレイをしてもらいます。各グループは、その顧客セグメントにとって最も重要な軸は何かを議論し、全体に共有します。このアクティビティは、顧客の視点から軸を考えるのに役立ちます。

4. ストーリーマッピング
- 顧客の旅(カスタマージャーニー)をマッピングし、その過程で顧客が直面する問題点や重要な決定ポイントを特定します。これらのポイントから軸を洗い出し、どの要素が顧客にとって最も価値があるかを議論します。これにより、顧客中心の視点で軸を選定することができます。

5. ケーススタディの分析
- 実際の市場の事例や競合分析の結果をもとに、どのような要素が競争上の優位性を生み出しているかを分析します。参加者はグループに分かれて各ケーススタディを検討し、その学びを基に軸の選定を行います。

これらの方法を通じて、異なる部署の知識や経験を活かし、多角的な視点から軸を選定することが可能になります。部門間コミュニケーションを促進することで、より包括的かつ戦略的なポジショニングマトリックスを作成することができるでしょう。

マッピングと議論(1〜2時間)

- 実際にマトリックス上に各競合を配置し、それぞれの位置についてグループで議論します。この過程で、自社のポジショニングと競合との差別化ポイントが明確になります。

マッピングと議論のステージでは、参加者間の有効なコミュニケーションが重要になります。このプロセスを通じて、製品やサービスの市場内での位置付けを明確にし、競合との差別化戦略を洗い出します。以下に、コミュニケーションを促進しながらマッピングと議論を行うための方法をいくつか提案します。

1. 分割して征服する
- 参加者を小グループに分け、各グループに特定の競合セットまたは製品カテゴリーを割り当てます。各グループは割り当てられた競合に関してマッピングを行い、その後大きなグループで結果を共有します。このアプローチにより、より深い議論が可能になり、全員が参加しやすくなります。

2. リアルタイム投票
- マッピング結果に基づき、参加者からリアルタイムでフィードバックを集めるために電子投票システムやアプリを使用します。各競合の位置付けに対する同意・不同意を投票で示してもらい、最も議論が必要な点を特定します。

3. ギャラリーウォーク
- マッピングされたポジショニングマトリックスを部屋の周りに展示し、参加者にそれぞれのマトリックスを見て回ってもらいながら、コメントや質問をポストイットで残してもらいます。その後、全員でこれらのコメントや質問に基づいて議論を行います。

4. ロールプレイング
- 参加者に顧客や競合企業の代表者の役割を演じてもらい、その視点からポジショニングマトリックスについて議論します。異なる視点からのインサイトを集めることで、より包括的な理解が可能になります。

5. SWOT分析の統合
- ポジショニングマトリックスに基づいて、各競合または自社製品に対するSWOT分析(強み、弱み、機会、脅威)を行います。この分析をグループ内で共有し、どのように自社のポジショニングを強化できるかについて議論します。

6. 対話型セッション
- マッピング結果をもとに、オープンなQ&Aセッションを設けます。参加者が自由に質問したり、マッピングに関する意見を述べたりできるようにします。このプロセスは、互いの理解を深め、共有の視点を構築するのに役立ちます。

これらの方法は、マッピングと議論のプロセスをよりインタラクティブで参加者全員が関わることができるものにします。また、さまざまな視点からのフィードバックを集めることで、よりバランスの取れた戦略的洞察を得ることが可能になります。このマッピングを基に、短いステートメントを作成することも、議論を具体化し、焦点を絞るのに効果的です。

戦略の洗い出しと次のステップ(1時間〜1時間30分)

- マッピングの結果を基に、具体的な戦略やアクションプランを議論し、決定します。

ポジショニングマトリックスを通じて競合のリストアップ、軸の選定、マッピングと議論を行った後の「戦略の洗い出しと次のステップ」の段階では、参加者間の効果的なコミュニケーションがさらに重要になります。以下に、この過程でコミュニケーションを促進しながら戦略を洗い出し、具体的なアクションプランを立てるための方法をいくつか紹介します。

1. アクションプランニングセッション
- 具体的な目標、担当者、期限を含むアクションプランを作成します。小グループに分かれて各戦略に必要なステップをリストアップし、それを全体で共有します。この時、SMART(具体的、測定可能、達成可能、現実的、時間的に制約あり)基準に基づいて目標を設定することが重要です。

2. ワールドカフェ
- 参加者を複数のテーブルに分散させ、各テーブルで異なる戦略について議論します。定期的にメンバーがテーブルを移動し、新しいテーブルでの議論に参加します。これにより、多様なアイデアが交差し、各戦略に対する深い理解と幅広い視点が得られます。

3. ロールプレイングとシナリオプランニング
- 各戦略を実行した場合のシナリオを想定し、ロールプレイングを通じてその影響を検討します。市場の変化、顧客の反応、競合の動きなど、様々な要素を考慮したシナリオを作成し、それに基づいて戦略の有効性を評価します。

4. フィードバックループ
- 提案された戦略やアクションプランに対して、全参加者からフィードバックを収集します。このフィードバックは匿名で行うことも可能で、オープンかつ正直な意見交換を促進します。収集したフィードバックをもとに、プランの再評価や必要に応じての調整を行います。

5. 優先順位の決定
- 限られたリソースを最も効果的に活用するために、提案された戦略やアクションアイテムの優先順位を決定します。これは、ドット投票やマルチ投票法などを使って行うことができ、参加者全員の合意形成を図ります。

これらの方法を通じて、参加者間での積極的なコミュニケーションを

促し、多様な意見やアイデアを取り入れながら、実行可能な戦略とアクションプランを共同で作成することができます。最終的には、ワークショップを通じて得られた洞察を基に、企業やプロジェクトが直面する具体的な課題に対処するための明確な道筋を設定することが目的です。

まとめとクロージング(15〜30分)

- ワークショップの成果をまとめ、参加者に感謝を伝え、次のステップに向けた指示を共有します。

ワークショップタイムスケジュール


各ステップに割り当てる時間の目安
1. 導入と目的の説明(15〜30分)
   - ワークショップの目的と流れの概要を説明します。
   -会社のパーパスに再確認 

2. 競合のリストアップ(45分〜1時間)
   - 直接競合と間接競合を含む、市場における主要なプレイヤーのリストアップを行います。このステップには、事前のリサーチが反映されます。

3. 軸の選定(30分〜45分)
   - ポジショニングマトリックスの2つの軸となる属性(例:価格、品質、イノベーションの度合いなど)を決定します。重要なのは、参加者間の合意形成です。

4.マッピングと議論(1〜2時間)
   - 実際にマトリックス上に各競合を配置し、それぞれの位置についてグループで議論します。この過程で、自社のポジショニングと競合との差別化ポイントが明確になります。

5. 戦略の洗い出しと次のステップ(1時間〜1時間30分)
   - マッピングの結果を基に、具体的な戦略やアクションプランを議論し、決定します。

6. まとめとクロージング(15〜30分)
   - ワークショップの成果をまとめ、参加者に感謝を伝え、次のステップに向けた指示を共有します。

最後に

この記事を通して、ポジショニングマトリックスの重要性とその作成過程について深く掘り下げました。マーケティング戦略とコミュニケーションの策定において、ポジショニングマトリックスは製品やサービスの市場内での立ち位置を明確にし、競争優位を識別するための強力なツールです。ワークショップの準備から実施、そして戦略の洗い出しまで、一貫した努力が必要です。しかし、このプロセスを通じて得られる洞察は、企業の成功に不可欠な要素となります。ポジショニングマトリックスの適切な活用は、市場における自社の位置付けを最適化し、競合との差別化を図ることにより、ブランドの価値を高めることができます。

今回も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

#ポジショニング #マーケティング #ワークショップ



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