今日もカフェでコーヒーを飲みながら⑨ 8.ドラマの『悪影響』と、『自◯未遂』

ちょうどこの頃、TVや新聞など様々なメディアで、ようやく『いじめ』について頻繁に取り上げられるようになりました。
また、『いじめ問題』を特集にしたニュースや、『いじめ』を題材(テーマ)にしたドラマが数多く放送されるようになっていました。
けれど…、
その殆どは、いじめられっ子がグレて、不良グループに入り、いじめっ子に『仕返し』をする内容だったり、『いじめ』に耐えられなくなったいじめられっ子が、屋上から『飛び降り自◯』をしたり、自宅で『首吊り自◯』をして◯に至るといった、あまりにも悲惨な内容のものばかりでした…。

そのドラマの『悪影響』で、ドラマが放送された翌日以降、
「Y内も、さっさと◯ねばいいのに…」
「ブズは◯ななきゃ治んねーんだよっ!」
「お前みたいに、弱虫で泣き虫なやつは、生きてたってしょうがないんだよっ!」
「ドラマの中じゃ、いじめられっ子は自◯して◯んでるもんな〜」
「Y内も、早く◯んじゃえば?」
「そうだ、◯ねよっ!」
「◯ね◯ねっ!」
と、連日のように『◯ねコール』が続く事がありました…。

その、『◯ねコール』を聞かされ続けているうち、私の頭の中に、『自◯』の2文字が貼り付いてしまい、夜、寝ている間、『自◯』する夢や、同級生達に突き落とされて真っ逆さまに落ちていく夢を、何度も見るようになりました…。

更に…、
休日、1人で留守番をしている際、どこからともなく、
「お前なんか、さっさと◯んじゃえっ!」
「◯ーね、◯ーねっ…!」
といった『幻聴』まで聴こえてくるようになってしまいました…。

そんな事が続くうち、
「いっそ、◯んでしまえば、もう、いじめに遭う事もなく、楽になれるのかな…?」
という考えが、頭の中で過るようになってしまいました…。


そして、3学期に入ったある日…、
授業中、いじめっ子の男子が、3階にある教室の窓を開けて、私を見るなり、
「ホラッ、Y内っ! お前、ここから飛び降りろよっ!」
と言い出しました。
すると、他の同級生達も、
「さっさと飛び降りろ〜♪」
「みんなで、お前が飛び降りて◯ぬトコ、見ててやるからよ〜♪」
と言って、せせら笑いました。
私は、ふと、開けられた窓の外を見つめました。
すると、業を煮やしたいじめっ子達が、
「何ボーッとしてんだよっ! さっさと行けよっ!」
と、私を無理矢理立たせて、窓のそばへ連れて来ました。
「何グズグズしてんだよっ!」
「早くしろよっ!」
「飛び降りる事も出来ないのかよっ! この弱虫っ!」
そう言って、私を煽り、いじめっ子達は、私を窓際へ追い詰めました。
そんな状況にもかかわらず、O瀬先生は、相変わらず『シカト』し、授業を続けていました。
傍観していた子達も、クスクスと笑いながら見ていました。
私は、同級生達の顔を、1人1人、ゆっくり見渡してみました。
私が『自◯』するのを、手ぐすねひいて待っている子。せせら笑っている子。関わらないよう、『見て見ぬフリ』している子。ジッと傍観している子。
私は、
「あぁ…、ここには、私の居場所なんてないんだ…」
と考えながら、徐ろに、開けられた窓の方を向くと、窓枠に足を掛けました。
そして、一旦、後ろを振り向くと、
「そんなに◯ねって言うんだったら、ここから飛び降りて◯んでやるよっ! そして、ここにいる全員を、あの世からジワジワと呪い◯してやるから、覚えてろっ!」
と泣きわめき、キッ!と皆を睨みつけてから、窓の外に身を乗り出し、飛び降りようとしました。
その時、
「これでやっと、楽になれる…」
と思っていました。
が、次の瞬間…、
それまで傍観していた子達や、近くの席にいた、M島君やI藤君、Y野君など、3年生の頃からの同級生の男子達が、慌てて窓際に駆けつけ、私の腕や体を掴み、私を止めようとしました。
S原さんも、
「先生っ! 何やってるんですかっ! 早くY内さんを止めてっ! ◯んじゃうでしょっ!」
と、泣きながらO瀬先生に怒鳴りつけました。
それまで『見て見ぬフリ』をし続けていたO瀬先生と、他の子達も何人かで、慌てて私を教室の中へ引きずり戻しました。
遠巻きに見ていた子達は、その様子を見て相当ショックを受けたらしく、中には、泣き出した子もいました。
いつも私をいじめていた男子達も、サーッと顔を蒼ざめ、呆然としていました…。


その後…、
私の『自◯未遂』がキッカケで、私をいじめる子達は、1人、また1人と、少しずつ減っていきました…。
後々、一部の女子から、
「今までごめんね…」
「Y内さんの事をいじめないと、お前の事をいじめてやるって、N山君達から言われてたの…」
と、首謀者のN山君を含む男子達から脅され、『いじめ』を強要させられたという話を打ち明けられ、私は、ショックと憤りを感じました…。


K小学校を卒業後、何年か経ってから、
「あのK地区は、治安も悪くて、不良も多かったみたい…」
と、母から聞かされました。
それというのも…、
K中学校の近郊の数ヶ所の小学校には、『不良予備軍』とも言える『問題児』が多く、K中学校に入学した生徒のうち、6〜7割ほどが、不良グループに入ったり、何らかの『問題行動』を起こしており…、
当然の事ながら、そういった子達は、いじめっ子になってもおかしくなかったのです…。
その事を、もっと早く知っていればと思うと、今でも悔やみ切れません…。

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