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【パパ読書】② ソロー『森の生活』✖️育児 内に向くための「おうちライフ」

3歳の次女は毎朝、ヤクルトを必ず飲みます。

「ぷはぁっ」と実に美味しそう。顔をのぞくと、まるで「初めて飲んだんだけど」と言わんばかりの目の輝き、満足さをたたえた表情です。しまいには「乾杯!」と叫び、ヤクルトの容器を高々と掲げるしまつ(笑)。

うらやましさすら覚えます。

人間って、「ありがたい」がいつしか「当たり前」に、そして「もっと」になりやすいですから、子どもの姿をみて、何か教わっている気がします。コロナ禍で、少なからず誰もがこの辺りは実感しているのではないでしょうか。

でもやっぱり人間です。せっかく「ありがたい」に戻り、教訓を生かそうにも、またすぐに忘れてしまう。のどもと過ぎれば何とやら、です。

では、どうしたらいいのか? 一つは「記録」してみることだと思います。大切なものとは何かを整理するために、そしてあとで振り返って思い出せるように。

太古の祖先の「一部分」が起動?

その記録の模範ともいえるものがあります。ソローの『森の生活ーーウォールデン』(岩波文庫)です。自分は感化されました。



1845年7月4日、アメリカの独立記念日に、ソローはウォールデンの池のほとりに小屋を建て、暮らし始めます。ソロー、28歳の時です。

自然に従った生活を数年送り、その経験を2年間のこととして整理し、まとめたのが『森の生活』です。

私がおもに語りかけたいのは、日ごろ不満をいだき、いたずらに自分の不運や時世のひどさを嘆いているだけで、いっこうに事態を改善しようとはしない大多数のひとびとに対してである。
また、自分の義務は果たしていると思いこんでいるために、他人への不平不満を声高に語り、どんな慰めにも耳を貸さないひとびとがいる。
さらに、あぶく銭をかき集めてはみたものの、その使い方も捨て方もわからず、自分用に金銀製の足枷(あしかせ)を鍛えている、見かけは金持ちだがあらゆる階層のなかでもぞっとするほど貧しい、あの階層のひとびとのことも念頭に置いているのである。
『森の生活』p32

なかなか手厳しいです(笑)。でも、人間の本性、生活の本質に迫ろうとしていることは分かります。

「子供というものはみな、ある程度まで人類の歴史をはじめからやりなおしている」というソロー。幼い頃に洞窟の入口を見てワクワクするのは、太古の祖先の一部分が生き残っているから憧れを抱くんだと。

仰々しく聞こえるかもしれませんが、とりあえず大人より子どもの方が「本能センサー」が敏感に作動するってことですよね。娘の瑞々しい感受性に、大人の私も錆びついていた本能センサーが反応するんだと思います。

しかし、もう自分は大人で、幼い子どもがいない暮らしなのであれば、自然の中に身を置くことで「大切な気づき」に出会える、ソローはそう思ったんじゃないでしょうか。

すべてがOFFになると、人間がONになる

最近、「サバイバルファミリー」という映画を見ました。


突然、2年以上も世界が停電になってしまうというお話。平凡な4人家族が主人公ですが、彼らは共通して「家族」と向き合えていません。同じ屋根の下で生活していても目を見て話をしてないんです。

それはきっと、彼ら自身が「自分」を見失っているからだと思います。父は仕事に、息子と娘はスマホに、母は為されるがままの状態に逃げ込み、ベストではないが、そうするしかないと思い込んでる節がある。

停電の夜。久々なんでしょう、満天の星々に家族肩を並べて見入るシーンがありますが、次の日からはもう、すぐに相手を否定し合うケンカの渦の中に。。

そこを旅したまえ

スマホは使えず、学校も会社もない。食料を求め、じいちゃんちがある九州に東京から自転車で目指す4人。壮絶な出来事が待ち受けますが、強制的で、サバイバル過ぎる「森の生活」を過ごすことで、彼らは自分を見つめ、家族の絆を深めることができました、めでたしめでたし!

コロナ禍の私たちは、こんな冒険は物理的には出来ない。そんな思い込みに対し、ソローは「むすび」で教えてくれます。

野生のガチョウはわれわれより世界人であって、彼はカナダで朝食をし、オハイオ河で昼食をとり、南部の大河の緩流で羽づくろいをして寝につく。
…だがわれわれはわれわれの農場の木柵が引き抜かれ、石の塀が立てられると、その後はわれわれの生活に限界が立てられ運命が決定されたと考える。

しかし、「わたしは信じる」--

君の眼を内に向けよ、しからば君の心のなかに
まだ発見されなかった一千の地域を見出すであろう。
そこを旅したまえ、
そして自家の宇宙誌の大家となれ。
p394

心にしみます。記録といっても、そこに詩心や批評も加えていきたいものですね。

非日常の今を丁寧に見つめていくことで、きっと未来の日常はもっと豊かになってくるはずです。


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