新築マイホームの苦難と喜び
引っ越すなら子供が中学生になるタイミングで。
娘が小4になった頃私たちは動き出した。
大手住宅メーカーのモデルハウスが立ち並ぶ展示場。
TVCMをしているような大手メーカーの住宅は目が飛び出るほど高かった。
建物本体価格だけで私たちの総予算の2倍以上するメーカーすらあった。
いくつか好みの外観のメーカーもあったがこの日私たちは自分たちに買える家はないという残念な結論を出して展示場を後にした。
あと数年待ってもう少し予算を上げてから再度挑戦しよう。
娘は小6になった。
再び同じ展示場に行った。
いくつかのメーカーでザックリ希望を伝えて見積価格を出してもらった。
家を建てるには土地が要る。
並行して土地探しも始めた。
この先娘が電車通学する可能性も考慮した私の希望する駅近物件はどれも到底手の届く価格ではなかった。
しかしこの頃には私たちの中古住宅は少しずつ限界に近付いていた。
お風呂の追い炊き機能が壊れハンドルでまわして開けるジャロジー窓のハンドルが取れ床下収納の取っ手が壊れリビングの一部は床板が傷んでいた。
実はこの中古住宅は私の実家と築年数が一緒だった。
実家では電気系統の不具合は少しずつ出て来ていたが何かが取れるとか傷むとかいう不具合は皆無。
中古住宅はすでに倒産している当時の開発会社の建売物件で私の実家は地場工務店が建てた注文建築。
建売と注文では月日が経つと決定的な差が出ることを私は知っていた。
年齢的にも経済的にも家を建てられるのは今回が最初で最後。
格安の建売物件やそれと同価格帯で買えるローコストメーカーという選択肢は私にはなかった。
かといって駅近物件に大手住宅メーカーの家を建てるのは一生かかっても無理という現実。
出口が見つけられずに私は迷走していた。
元々引っ越しには乗り気ではなかった夫。
夫はこの地に引っ越してからご近所に沢山知り合いが出来た。
私と違いコミュ力が高い夫は地域社会に上手く溶け込みそのおかげでどこへ行っても娘は可愛がってもらえた。
同じ労力をこれからまた使うのはもう無理だと。
子供もある程度大きくなったし私は地域社会に溶け込みたいという願望がないのでそこはスルーしていたのだがここへ来て娘までもが友達と同じ中学に行きたいと言うようになった。
駅近物件を諦めたとしてこの近辺で土地を探せば予算はかなり削ることが出来る。
最寄り駅まで車で20分もかかるようなド田舎から抜け出すチャンスだったが「お金がない」のだからしょうがない。
私は便利さを諦めた。
ある日新聞の折り込み広告で見つけたイベント。
地場工務店が多数出店する住宅博が開催されるらしい。
私は地場工務店というのはその地に代々住んでいる人がコネクションを通して利用するのだと勝手に思っていた。
私の実家は地場工務店が建てた家だがその工務店は昔住んでいたマイホームのメーカーに紹介してもらったから利用出来ただけで飛び込みの縁もゆかりもない客は工務店には依頼出来ないという思い込みがあった。
私たちは冷やかし気分で住宅博に足を運んだ。
「こだわりの家づくり」といったコンセプトが明確な工務店を片っ端から見て回る。
多少予算はオーバーするが大手住宅メーカーほどではない。
どの工務店の営業マンも自分の仕事に誇りを持って熱心に相談に乗ってくれる。
家を建てるなら工務店でという指針が出来ただけでも収穫は大きかった。
後日店舗を訪れる約束を何社かと交わし歩いていると宇宙空間のようなユニットバスが目に飛び込んで来た。
カッコいい!!
夫と目を輝かせながらうっとりユニットバスを見ていた時に一人の営業マンが声をかけてきた。
案内してもらったブースには工務店の幟が立っていた。
聞いたことのない名前だったがモノクロのその幟は私の心を鷲掴みにした。
営業マンから聞いた外観のイメージから内装へのこだわりまで何もかもが私好み。
大手住宅メーカーをまわっていた時には感じたことのないときめきだった。
その営業マンは実際の部材を見てみましょうと私たちを建材コーナーへ連れて行った。
私の好みを上手に聞き出し色んな組み合わせを提案してくれた。
ぼんやりしていたマイホームのイメージがどんどん固まっていく。
その固まったイメージを持ってそれからは工務店の店舗をまわった。
しかしほとんどの工務店ではやはり大幅に予算を越えてしまう。
予算が厳しいと分かった途端手のひらを返したように冷たくなる営業マンも多かった。
そんな中私たちに声をかけてきた営業マンは違った。
私のこだわりをどんどん聞き出し実際にイメージに近い家を探して画像を用意して熱心に営業してくれた。
出来るだけ予算に近づけられるよう削れるところを一緒に考えてくれたりした。
他の工務店にはない熱の入れ方に私たちは心を大きく動かされた。
最終2社で迷ったが私が絶対に譲れないこだわりをあちこち探しまわって見つけてくれた幟の工務店に家を建ててもらうことが決まった。
この工務店は完全注文住宅だった。
間取りの決まったプランは存在せずイチから営業マンとマイホームを作り上げて行く。
夫は家は雨風しのげれば何でもいいというタイプだったので全て私の思い通りにしていいと言ってくれた。
予算とにらめっこしながら私は毎日家のことだけを考えて過ごした。
今まで住んで来た何軒かの家と大手住宅メーカーのモデルハウスで見た工夫。
大手メーカーで建てた友人の家の感動する設備の数々。
思いつく限りを営業マンに伝えて一緒に図面を作っていった。
完成したマイホームは完璧だった。
いや、もちろん妥協したところはいくつもあるがそれを差し引いても充分満足な出来だった。
遊びに来た友人たちは皆言う。
モデルハウスみたい!!リビング広い!!
実はリビングは14畳しかない。
中古住宅と0.5畳しか変わらない。
それでも工夫次第で素敵なマイホームは作れるのだ。
私たちが昔買った中古住宅:1280万
銀行からの信用ローン:800万
現在のマイホーム:3700万
【参考:↑大手メーカー+駅近だと:9000万!!】
銀行からの信用ローン:1800万
信用のない仕事でも実績を積めば借りられる額はこんなに違う。
私たちは最初からこの額で申請したので上限が分からないが実際はもっと借りられた可能性もある。
いくら繰上返済したと言っても僅か数年で1900万もどうやって用立てたのかと思われる方も多いだろう。
土地は…母がプレゼントしてくれた。
買ってから。
おかあさーん、もっと早く言ってーーーーー!!
その金額プレゼントしてもらえるなら駅近物件買えたかもしれない。。。
私の経験や考え方が少しでもお役に立てたなら嬉しいです(◍•ᴗ•◍)