Маша и Медведь/マーシャとくま

『なんと、Маша и Медведьの日本語版が!』と驚いたのは昨日のことである。子供向けアニメではФиксикиと並んでお気に入りの作品であるから、とても嬉しくなった。

ロシアでは熊と一緒にいる女の子と言えば、マーシャという名前でないといけない。ダーシャでも、サーシャでも、アーニャでも、ターニャでもない。それは誰しもが民話『Маша и медведь』を読んで育っているからだ。日本の肌感覚で例えるなら、現代的な3Dアニメが『浦島太郎とかめ』『一寸法師とおに』といったタイトルで制作されたようなものだ。

アニメ『マーシャとくま』の日本での盛り上がりは、いかほどのものなのか。少し調べてみると公式YouTubeチャンネルだけでなく、公式Twitterも開設されている。さらにテレビ放映も始まっていて、Netflixでも公開されているらしい(Netflixは利用していないのだが、インターネット検索で出てきた)。これを見ると、『Маша и Медведь』プロジェクトは日本市場に対して大変良い金額で売りこめたのだろう、という推測は間違っていないのかもしれない。

私のお気に入りの回はシーズン1の『День варенья』である。日本語版のタイトルは『ジャムのひ』。

  • 原作

『Маша и Медведь - День варенья (Серия 6)』/YouTubeチャンネル『Маша и Медведь』より

  • 日本語版

『マーシャとくま ジャムのひ エピソード6 子供向けアニメ』/YouTubeチャンネル『マーシャとくま - Masha and the Bear Japan』より


もともと原作から視聴を始めた人間として興味深かった点がある。こちらの回でマーシャが『А я иду, гуляю по луне』と軽く歌っている部分の日本語訳がどうなるのかという問いだ。

ソ連映画に『Я шагаю по Москве』という作品があるのだが、マーシャの歌はこの映画にあるメロディーに由来したものだ。この映画は、今や世界的に知られている映画監督ニキータ・ミハルコフ氏が俳優として初主演を飾り、大人気を誇るきっかけとなった作品であった。若かりしミハルコフ氏が『А я иду, шагаю по Москве』と歌うシーンはとても爽やかで印象的で、今でも広くロシアの人々に記憶されている。

つまり、こういった背景をもつマーシャの歌をどう翻訳処理したのかに興味をもったわけだ。わくわくしながら日本語版を視聴すると、『ねえ、見て、ムーンウォークもできるんだよ』とされていた。なるほど、お見事!・・・と感想をもったところでふと思い立ち、日本語版に先立って公開されている英語版を見に行った。・・・ムーンウォークと訳されていた・・・。

そういうわけで、日本語版『マーシャとくま』は英語版の映像からの翻訳がなされているため、露日・日露翻訳の勉強の教材にはならないようだ。まあよく考えれば、そうでないはずがない、と言ったところか。



映画に興味がある方はこちらを参考に。モスフィルムの公式チャンネルで公開されている。
『Я шагаю по Москве(Full HD, комедия, реж. Георгий Данелия, 1963 г.)』/YouTubeチャンネル『Киноконцерн «Мосфильм»』より


Маша и Медведь』の制作スタジオの公式チャンネルも見つけた。一つのエピソードを完成させるのに約6~8か月ほどの時間が必要で、定期的に新しい作品を公開し続けるために、4つのエピソードの作業を同時並行で進めている・・・などの制作の裏側について紹介する動画はこちら。
『МашФакты: о производстве мультсериала Маша и Медведь. Выпуск 3』/YouTubeチャンネル『ANIMACCORDSTUDIO』

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