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#15「日本発の抹茶をグローバルへ」World Matcha Inc. CEO 塚田 英次郎さん

「Startup Now」では、資金調達を実施したばかりの起業家をお招きし、創業にかける想い、事業の現状や未来の話まで、アレコレお伺いするインタビューをお届けしています。このインタビュー記事は要約版となっております。気になった方はぜひFull VersionのPodcastもお聴きください!

第15回目は、World Matcha Inc. CEO 塚田 英次郎さんをゲストにお招きしました。
World Matchaは、美味しい抹茶を誰でも簡単に飲める、画期的な抹茶を飲む仕組み「Cuzen Matcha(空禅抹茶・くうぜんまっちゃ)」を提供するスタートアップです。
CEOの塚田さんに、World Matcha創業の経緯や事業の展望についてアレコレ伺いました。


World Matcha立上げまでのキャリア

塚田さんはサントリーでキャリアをスタート、以来21年間勤めあげた後に、43歳で起業しました。サントリー時代は新商品開発や社内ベンチャーでの抹茶事業立ち上げなどを経験、アメリカでも抹茶事業の立ち上げを推進してきました。しかし、大企業の中では思うようにスピード感を持って事業を進められない歯がゆさも同時に感じ、独立を決意。現在は日米両国に拠点を置き、抹茶マシーンとリーフの販売を手掛けるWorld Matchaを運営しています。

抹茶ビジネスに着目した理由

塚田さんが抹茶ビジネスに着目した理由の一つは、効果と栄養価の高さです。歴史を振り返ってみると、昔は、武士が主君やお世話になった人と、抹茶で一服してから戦いに赴いていたと言われています。抹茶にはカフェインの働きに加え、テアニンによるリラックス効果もあり、武士にとってのエナジードリンク的な位置づけだったのでしょう。
そして、抹茶は茶葉を丸ごと飲むため、通常の緑茶よりも栄養価が高いです。緑茶の場合、水に溶けない栄養素が茶殻として捨てられてしまいますが、抹茶ならそれらの栄養もしっかりと摂取することが可能です。
そんな中、約10年前からニューヨークを中心に若者の間で抹茶ブームが沸き起こり、コーヒーの代替として楽しまれるようになってきました。カフェインの刺激が強すぎるコーヒーに代わり、より穏やかな覚醒効果を求めて抹茶に注目が集まり始めていました。しかし、当時の抹茶ブームは、必ずしも日本発信のものではなく、中国など他のアジア圏に抹茶のデファクトスタンダードが奪われてしまうのではないかという危機感も感じました。日本人としてこの動きを見ている中で、日本発の抹茶を世界に広めたいという思いが強くなりました。
サントリー時代から日米を行き来する中で、いずれは世界で勝負したいと考えていた塚田さんは、抹茶ビジネスに挑戦することを決意します。

抹茶マシーン「Cuzen Matcha」とは

従来の抹茶は粉末状のため、酸化しやすく風味が落ちやすいという課題がありました。また、点てる際にシャカシャカと混ぜる必要があり、手間もかかります。
World Matchaが開発した抹茶マシン「Cuzen Matcha」は、茶葉の状態から抹茶を引いて点てるため、鮮度が高く風味豊かな抹茶を簡単に楽しむことができます。
茶葉の状態であれば酸化しにくく、長期保存が可能です。必要な分だけ粉にしてその場で点てられるので、常に最高の状態の抹茶が味わえる仕組みです。
マシンのデザインには「一期一会」の精神を表現しています。抹茶点前で使う茶筅(ちゃせん)をモチーフにしたマシンの中央部は、茶室の丸窓のような佇まいをイメージしており、この空間に佇むだけで、日常の中に非日常を感じられるようなデザインを目指しました。
点てられた抹茶の楽しみ方は多岐にわたります。そのまま飲むのはもちろん、ミルクと合わせてラテにしたり、炭酸と割ってスパークリング抹茶にしたりと、様々なアレンジが可能です。塚田さん自身は、毎朝スパークリング抹茶を飲んでリフレッシュするのが日課となっています。
Cuzen Matchaでは、伝統的な抹茶の魅力を残しつつも、現代のライフスタイルに合った新しい抹茶の楽しみ方を提案していることが特徴です。

当初のGo To Market戦略からピボットに至るまで

当初は、米国にてToB向けの展開を主軸に準備をしていました。そして2020年1月にはCESでイノベーションアワードを受賞、各界から高い注目を集めることができました。大手テック企業からの引き合いもあり、法人向けを中心に事業を展開する計画でした。
しかし、コロナ禍の影響でオフィス需要がゼロになったことで方針転換を迫られます。一方で、在宅ワークの広がりにより、家庭用市場には活路がありそうだったため、まずはクラウドファンディングサイト「Kickstarter」でのプロモーションを実施。300〜400台の売上を記録し、初期の顧客獲得に成功します。
このKickstarterでの販売を通じて得た顧客からのフィードバックは、その後の製品改善にも役立てることができました。使い方のわかりやすさや、付属品の充実など、ユーザー目線での課題に対しひとつひとつ改良を重ねた結果、徐々に売上を伸ばすことができました。
現在は家庭用マシーンの販売が主軸ですが、将来的にはカフェやレストラン向けの業務用マシーンの開発も計画しています。家庭用の知見を活かしつつ、スピードやマルチオーダーへの対応など、業務用としてのニーズを満たす製品づくりを進めていく考えです。

これまでの資金調達の背景

シード期に続き、2024年1月にシリーズAで約7億円の資金調達を実施しました。シリーズAラウンドでのリード投資家はデジタルガレージ社で、今回調達した資金は業務用マシーンの開発や、営業・オペレーション体制の強化に充てる予定です。
今回、米国ではなく日本で調達を行ったのは、事業の将来性を理解してくれる投資家に出会えたことが大きかったと塚田さんは振り返ります。
また今後は、エクイティのみならずデットでの資金調達も視野に入れています。在庫の拡大には運転資金が必要不可欠であり、日米それぞれで最適な調達方法を模索していく考えです。

今後の展開と採用

今後は日米両国でBtoB事業を強化、カフェやレストランでの抹茶提供を増やすことで、消費者の認知や体験機会を増やしていく方針です。家庭用マシンで培った技術や知見を活かしつつも、価格体系やサービス内容など、業務用のニーズに合わせたビジネスモデルの構築も重要なポイントになります。
消費者接点の強化という意味では、訪日外国人向けの施策も積極的に展開します。日本での抹茶体験を通じて、本国に戻った際に自宅で抹茶を楽しんでもらえるような流れをつくっていきたいと考えています。将来的には、日本とアメリカだけでなく、イギリスなど他の国々にも展開していくことを視野に入れています。
また、今後の事業拡大に伴い、経理や営業、オペレーションなど様々な職種で採用を強化していきます。ハードウェアとソフトウェアの両方を扱い、日米両国で事業を展開するユニークな環境は、他社では得がたい貴重な経験になるはずです。
特に現在力を入れているのが、経理周りの人材採用です。まずは日米の法人を連結した数字の把握や予実管理の徹底を、将来的には資金調達の実務なども担ってもらえるような仲間を探しています。
また、営業面では、家庭用、業務用それぞれの営業戦略を練り上げ、PDCAを回していくことが必要であり、今後のグローバル展開に向けて、各国での現地パートナーとのアライアンスも重要になってきます。提携先の開拓や、その後のマネジメントなど、やるべきことは山積みです。これらの課題にもしっかりと向き合える仲間と出会えるといいなと思っています。

日本の伝統的な抹茶を革新的な形で世界に広めていくCuzen Matchaに、今後もますます注目が集まりそうです。


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