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発展途上地域のスタートアップ事情~東南アジア・ラテンアメリカ・アフリカの比較を通して~


はじめに

「スタートアップ」という言葉を聞いたとき、皆さんは世界のどこを思い浮かべるでしょうか。シリコンバレーやロンドンなど、世界的にも技術が進んでいる都市が真っ先に出てきて、ラテンアメリカや東南アジアの都市を答える方は少ないのではないでしょうか。
事実、一般的にスタートアップが盛んとされるのはアメリカ合衆国やヨーロッパといった先進諸国地域です。アメリカの調査会社Startup Genomeが発表した2023年の「グローバルスタートアップ・エコシステムランキング」によると、トップ30入りを果たした多くの都市が北アメリカやヨーロッパ、東アジアに集中していることが分かります。残念ながら、ラテンアメリカからのランクインはブラジルのサンパウロ(26位)にとどまりました。


Startup Genome

しかし、現在発展中の地域だからこそ、政府の行き届かない課題が山積しており、スタートアップのビジネステーマが豊富に存在しているという意見も。今回の記事では、まだまだ注目されていない発展途上国のスタートアップに焦点を当ててみようと思います。

発展途上地域のスタートアップ事情

まずは、発展途上地域のスタートアップに関する、基本的なデータに焦点を当ててみましょう。

VC投資額

以下の図は、東南アジア、ラテンアメリカ、アフリカのVC投資額の推移を表しています。グラフからも読み取れるように、近年急激な成長が見られており、2014年~2020年の間に東南アジアで約7倍、ラテンアメリカで約8.2倍、アフリカで約2.7倍となっています。

アジア:Golden Gate Ventures' 2021 Report - Southeast Asia Startup Ecosystem 2.0 - Access ASEAN (access-asean.com)
アフリカ:AVCA | 2022 Venture Capital in Africa Report
ラテンアメリカ:100621_Ecosistema mexicano_JPN.pdf

平均成長率も非常に高く、東南アジアが48%、ラテンアメリカが約55%、アフリカが約37%と、ヨーロッパの25%、北アメリカの20%と比較しても発展途上地域のスタートアップ産業の成長が目覚ましいことが分かります。
一方、欧米諸国に比べて成長率の乱高下が激しく、まだ不安定さが残る市場であるようです。

東南アジア・ラテンアメリカ・アフリカの出典は同上
ヨーロッパ・北アメリカ:Startup Genome(「THE GLOBAL STARTUP ECOSYSTEM REPORT 2023(Startup Genome)」)

ユニコーン企業

続いては、ユニコーン企業の数を可視化してみました。

東南アジア:東南アジアのユニコーン急増、2021年中に20社(ASEAN、インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ (jetro.go.jp)
ラテンアメリカ:La Lista Completa De Unicornios Latinoamericanos [2022] (contxto.com)
アフリカ:Africa: unicorn startups by country 2021 | Statista

アメリカは687社、中国は258社など、名だたる国々と比べると少なく感じるかもしれませんが、日本の13社、スイスやオランダの9社と比較してみてもかなり健闘しているのが分かります(「The Crunchbase Unicorn Board in 2024(Crunchbase)」)。シンガポールとインドネシアの二強が目立つ東南アジアに比べ、ラテンアメリカでは様々な都市でバランスよくユニコーン企業が見られているのは面白いポイントかもしれません。

社会的インパクトへの投資

先にも述べた通り、多くの発展途上地域では公的サービスが追い付かなかった結果、多くの社会課題が山積しています。そのため、スタートアップが着手できるビジネスシーズが豊富にあるという意見もありましたが、実際はどうなのでしょうか。

LAVCA-Inaugural-Startup-Survey-FINAL3-04.30.19.pdf
AVCA | 2022 Venture Capital in Africa Report

上記表は、ラテンアメリカとアフリカにおいて社会的インパクトを意識しているスタートアップやVC投資件数の割合を表しています。欧米やアジア地域の統計を入手することができなかったため比較することは叶いませんでしたが、ファイナンシャルインクルージョンや教育、健康など基本的なインフラを補完するようなビジネステーマを掲げているスタートアップが一定以上の割合で活躍していることを確認できます。

終わりに

今回は東南アジア・ラテンアメリカ・アフリカを中心に、普段はスポットライトが当たりにくい地域のスタートアップに関して基本的な情報をご紹介してみましたが、いかがだったでしょうか。今後もメキシコ、ラテンアメリカを中心に世界のスタートアップに関して調査・データの整理を行う予定なので、特に関心があるデータ等がございましたらコメント欄などにて教えていただけると幸いです!

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