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【リーンスタートアップ#1】マインドセットを変える:ビルドファーストが起こす罪

このマガジンでは、世界中で実践されているイノベーションフレームワーク「RUNNING LEAN」を私自身の実践経験を踏まえて、わかりやすく、即実践していけるようお伝えしていきます。
私はスタートアップCOOとして事業立ち上げやプロダクト開発を行った後に事業開発の支援を行う会社を立ち上げました。実践トレーニングを受け、LEANSTACKCoach認定を持ちライセンスの許諾を得ています。 

【このような方におすすめ】
・起業家、起業準備中の方
・スタートアップを支援する立場の方(VC、アクセラメンターなど)
・企業で新規事業に関わっている方
・プロダクトマネジャー、プロダクト開発に関わっている方
・リーンスタートアップの概念は知っているが腹落ちできていない方、実践したい方

ビジネスを思いついたらMVPを構築することからスタートしていませんか?

過去の私も含め、多くの起業家は、すぐに「MVP(Minimum Viable Product)」の話をします。MVPをどうやって作ればいいか、どこまで作ればいいか、作る人をどう手配すればいいのか、費用はどのくらいかかるのか、、
「何を構築すべきか」「どうやって構築するか」で頭がいっぱいになっています。

とりあえずリリースしないとわからない、早く顧客を獲得したい、最低限でも形となるようなモノやサービスを提供しないとニーズが検証できない、投資家やアクセラのメンターに認めてもらうために早く目に見える結果を得たい、このような気持ちで急かされながらMVPを構築しようとします。

そうすると1年後、どうなっていく可能性があるのでしょうか?

ラリーは順調に成長しているが、スティーブは未だ収益化できる見通しがついていない
引用:LEANSTACK

左側のスティーブは、アイデアを思い付いたら即座にMVPを作りはじめて顧客への検証を行いました。顧客からフィードバックを受けてMVPを改善して顧客への検証を行い、さらに改善…を繰り返していますが、未だに収益が見込めるプロダクトが見えていません。あっという間に1年が経過しました。

一見すると、スティーブはリーンスタートアップの原則と言われる"小さく作って検証して、改善に向けて回していく"を忠実に行ってます。でも未だに成果にはつながっていません。

なぜでしょうか?
MVPを爆速で構築しはじめる前に、立ち止まってまず問うべきことがあります。

そもそもMVPを構築すべきアイデアでしょうか?

具体的な問いとしては次の2つです。
「あなたのそのアイデアは本当に顧客が欲しがっていますか?」
「あなたのそのアイデアは事業として成立しますか?」
この問いかけをしたときに多くの起業家が感じるであろう反論(過去の私が言いそうなこと)とそこに対する示唆を書いていきます。

1.あなたのそのアイデアは本当に顧客が欲しがっていますか?

①私自身が課題を感じていて欲しがっている当事者であり、必要なはずだ

あなたがそうであったとしても周りの人は本当にそうでしょうか?多くの起業家が「市場に対する錯覚」に引っ掛かります。
"ハンマーを作ると決めたら、すべてが釘のように見える"という言葉があります。無意識のうちに「私を筆頭としてこれだけ多くの人が課題を感じているはずだ(だから私のソリューションは自分をはじめとした多くの人に役立つはずだ)」と自分のソリューションの需要を信じようとします。

イノベーターが持つバイアスに無意識に誰しも陥る
引用:LEANSTACK


②だからMVPを作って検証しようとしているんだ

それはMVPを構築しない限り本当に検証できないのでしょうか。
もっと素早く顧客が欲しがるかどうかを検証できる方法があるか考えてみましたか?特に、今MVP構築に数か月の時間をかけることを考えている場合は注意が必要です。

③一定規模のアンケートを取っており、すでに多くの人に課題がありそうなことはわかっている

アンケートを取ることは本当に適した手段でしょうか。
「この選択肢の中から特に課題と感じていることを選んでください」と聞いたりしていませんか?
人の習性として、課題を感じているか?と聞かれるとそこに意識が向いて何かしらの課題を探しにいきます。知りたいのはお金を払ってでも解決したいレベルかどうかの深さです。

2.あなたのそのアイデアは事業として成立しますか?

①実際に価値を提供してみて聞いてみないことには価格が決められない

本当にそうでしょうか。
私たちはよく〇〇はコスパが良さそう、悪そう、これにはこのぐらい払ってもいいかもと話すと思います。それはどのように判断していますか?
顧客は価格を想像するときに、無意識的に何かと比較したり基準になるものを思い浮かべて導き出しています。つまり、必ずしも価値を提供しなければ価格が決められないということはなく推測が可能ともいえます。

②最初から事業のスケールを考えて行動するのはスタートアップにおける典型的な失敗では

スケールを考えて行動してくださいと言っているのではなく、自分が望む姿やイメージしている目標に対して、今考えているビジネスモデルで成長するためには、現実的に何がどの程度まで必要なのかシミュレーションをしたかどうかということを聞いています。
事業ピボットを考える起業家がよく陥ることとして「実際投入してみたら全然利益が確保できない」「そもそも、このビジネスモデルだと途方もない人数の集客が必要だった」ということに途中で気づきます。
概算でも計算してれば予めわかっていたことも多くあるはずです。

③最初は低価格帯の顧客へのアプローチから入っていくが、将来的には高単価になる顧客に広げていく予定だ

戦略の否定はしていません。一方で、何年間でその段階的なアプローチを実現していくつもりなのか、最初のアプローチではどこまで目指すのか、次のステップではいつどこまで目指すのか、そのシミュレーションをしているのかということを聞いています。


「ビルドファースト」のマインドセットを変える必要がある

私も過去、冒頭のスティーブと同様に何年もかけて何度もMVPを作り続けてきました。その方法が正しいと信じ込んで取り組んでいましたが、途中でこれ以上どう進めたらよいかわからない壁にぶつかりました。

今振り返ると偶然ではあるのですが、この「ビルドファースト」の考え方を変えるきっかけを通じてブレイクスルーポイントを見つけることができ、収益を生めるプロダクトを世の中に出すことができました。

次の記事ではこちらも起業家が本当によく陥りやすい「投資家ファーストが起こす罪」に関してお伝えしていきます。

最後までお読みいただきありがとうございました!ここまで読み進められて心当たりがある、胸に突き刺さる言葉があったという方は、ぜひいいね!やフォローをいただけると励みになります。

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