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「デジタル化」の落とし穴。UX観点から「電子書籍」を考察してみる。

ふつーーーの話かもですが、たまに人に話すので備忘メモ程度に。

デジタルサービスを考えるときに、「リアルの世界をデジタル化する」って枠組みを考える人が結構いるけど(動画とか、ライザップ系サービスのデジタル化とか)結構ドツボにハマることが多いのでは、というnote。

よくある"紙の書籍 vs 電子書籍"論争のいびつさ

電子書籍は概ね「紙を前提として最適化された書籍をデジタル化したもの」でしかないので、ほぼデグレードでしかないと思っています。

それでも「俺、紙派なんだよね」「俺は電子書籍のほうが」という論争が起きているのは、重視している観点が別だからですよね。
※ 当然の話っちゃ当然の話なのですが、次につなげるために少しくどく書かせてください。

■ 紙派 : "読む"体験重視
1. 「ビジネス書」など多少パラパラめくる/繰り返し参照することの多い本
2. 「小説」のように世界観にどっぷりハマりたい人

■ 電子書籍派 : 保存・持ち運びなど"機能性(携帯性)"重視
1. 「保存・持ち運び」など物理的な制約を気にする人(特に"マンガ"など時間あたりの読む量がかさむものを好む人のイメージ)

このように、「重視する体験」ベースで結構好む対象が変わるはず。そう見ると、本来的に「紙」vs「電子」って「"読む"体験」vs「機能性(携帯性)」という全く違う論点での争いだと思っています。

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つまり(機能性を考えず)単純に「読む」という体験のみに着目すると、圧倒的に「紙」が優れているんじゃないかというのが私の考えです。

参考までに、紙と比較し『iPad』での読書速度は6.2%遅く、『Kindle 2』は10.7%遅かったそうです。
参考: https://www.lifehacker.jp/2010/07/100707ipad_paper.html

「"読む"体験」まで良質にする「デジタル書籍」を考えるとどうなるか

電子書籍が「書籍のデジタル化*」だとすると、「デジタル書籍*」はどのようになるでしょう?
書籍のデジタル化: リアル書籍をデジタルで再現(≒概ねデグレード)
デジタル書籍: デジタルを前提とした新たな書籍

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超例えばですが、小説などのデジタル書籍の読書体験として下記のようなものは1案になるかもしれません。
目線を動す必要なくその場で単語が切り替わると、通常よりやや早く文章が読めるそうです。

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上記を参考に考えると、例えばこんな案とか出てきます。

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更に言うと、背景とか音楽とか切り替わっても面白いですね。

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(雑談)
なお単語がフラッシュで出てくる、というのは 2014年頃すでにあったアイデアで、あまり跳ねていないところを見ると難しいのかもしれません^^; 
参考: 
https://gigazine.net/news/20140228-spritz/
https://www.spritz.com/

デジタルならではの可読速度向上を狙う、「雰囲気」に没頭させるなど、従来リアルではできなかったこともできるようになります。これは「小説」等で"できるだけ世界観に没頭する"ことを重視したUXですがビジネス書やマンガだけ見るとまた変わってくるかもしれません。

ラインマンガとかにある「縦スクロール」などもデバイス特性を活かした面白いUXだよなーって思っています。
また、レシピ本でも動画とか入ってCookpadみたくなっても面白いですよね。

ちょっと雑なアイデアなのでイメージ付きづらいかもですが、もーちょいこんな感じで突き詰めると、単なる「書籍のデジタル化」とは異なる、デジタルを全体とした体験の提供が可能になりそうだなと思っています。

これらを突き詰めると、特定のシーンにおいては「読書体験」としても"電子派"が出てくる気もしています

「リアル世界のデジタル化」の落とし穴

だいぶ色々書きましたが言いたいことは、「リアル世界のデジタル化」は安直にやるとコケますぜ、という話

例えば「動画」の世界。映画館やテレビで見れたものをスマホで見られることは確かに嬉しそうだけど、それはあくまでリアル目線。

今はデジタルに広がる無数のコンテンツを競合と捉え、それらよりも優れた体験を提供することを考えないと。「動画」というものを捉えても、単にリアル世界のデジタル化だけではなく、「スマホならでは」を最大限活かした体験の設計が行えなければ、競合である他アプリに太刀打ちできません。(もちろんコンテンツの力が強ければ行けるとは思うのですが)

TikTokなどはうまくスマホを前提とした体験作っていますよね。縦向きの動画というだけでもわかりやすいですし、選択の手間もなく無思考で見られることもスマホと非常にフィットしています。

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こういった現状の環境・技術を最大限に活かした体験提供は、今後も重要なテーマであり続けますよね。

子供をゲーム屋さんに連れて行ったらテレビをタッチしだした、子供が「テレビは途中からしかやってないから見ない」と言ったなどのよくあるエピソードも、基準とする体験の水準や期待するインタラクションの前提が変化していることを表していると思います。バイアスの怖さを常に感じています。

(雑談)
そういったことを踏まえると、やっぱり若ければ若いほど"今"を捉えられますよね。おっさんとしては"経験"を売りにしながら、変な上下関係なく、お互いリスペクトしながら良質なサービス作っていけると良いなって思います。

雑談: "企画と実行"のギャップも、"リアルの世界"を扱う難しさ

先ほどの「デジタル書籍企画」を思いつくのはとても簡単なこと。

リアルが絡むと大変なのは実行ですよね。例えば今回の例でいうと「本」や「動画」を作っている人の業務変更なども考慮しなくては行けないですからね...(誰が作るの?という話。)

全然領域は違うけども、fabric tokyoさんのスライドの下記とかは、そういった大変さのリアルなところを捉えていて好きです。

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参考: http://yuichiro-mori.com/2018/10/points_of_d2c/

「サービスデザイン」というのは単にUI/UXの話だけではなく、CXを考慮したり、もう少し進むとOrganizationやOperationをデザインする必要があるんですよね。大変だ。


....UXって割には提供者目線問題のnoteで恐縮ですが許してください笑

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