クリニック開業時の内装工事業者について~1:設計の効率面とコンプライアンス~

医師がクリニック開業するときに、一番コストがかかるのが内装工事費です。
一般的に6000~8000万円程度の事業予算を組み、そのうち1500~2500万円くらいが内装工事に該当します。
多少地方で戸建てのクリニックを作る場合にはまた違ってきますが、多くのテナント開業の場合はこのような予算感になります。
いろいろとWebで書き込みを見ると、坪40万だとか坪60万だとかを高い安いというコメントを見かけますが私からすると、その感覚を他人に意見するのは誤解を生み、だれも得をしないと思っています。
それはなぜかという私見をご紹介します。

1:設計の効率面とコンプライアンス
クリニック開業の場合、科目によって、診療圏(立地)によって、コンセプトによって設計は変わります。
イメージしやすい例として、戸建て住宅の完全注文住宅と、セミオーダー式の注文住宅、建売住宅を考えてみましょう。
基本的には完全注文住宅>>>セミオーダー式注文住宅>建売住宅と価格帯に違いがあります。
一つは設計士の工数です。
オリジナルで設計士の力量が問われるものであればあるほど設計料に跳ね返ってきます。
逆に建売住宅では、同じような設計を使いまわしますので、設計部分のコストが低くなります。
セミオーダー式の注文住宅とは、ある程度の仕様の中から好きなものを選んでいくという形なので比較的安価に設計が可能です。

というように、1から作るという面でクリニックは完全注文住宅を作るイメージになるということです。
だから普通のマンションや建売住宅などの費用感と一緒にしてはならず、完全注文住宅を建てるイメージを持たないとなりません。

また、コンプライアンスの面も侮れません。
注文住宅を作るハウスメーカーでは、コンプライアンスがかなり重視されます。
訴訟リスクが大きく、会社自体が大規模なために悪い評価、悪い口コミなども会社全体に影響します。
そのため、通常よりも検査項目が多く、下請けの工事業者からしてもかなり綿密な工事指示に従わなければなりません。
「普通そこまで必要?」という項目すらあるほどです。
なので、大手の注文住宅会社のように、クリニックの内装工事業者でも、経験豊かで会社規模もありたくさんのクリニック内装工事をやっているところほど信頼度の反面、高くなる傾向があります。

要するには、しっかりとコンプライアンスを順守した信頼できる業者で、かつ注文住宅のように希望をふんだんに盛り込んだクリニックを作ろうとすると金額が高くなるということです。

もちろん、例外的な場合も十分ありますが、大局観をとらえるには、こう理解してよいでしょう。

すでに開業のビジョン、開業後のイメージがしっかりできていて、こういう医療を提供したい!という思いがあるのでしたら、しっかりと信頼できる業者に少々高いお金を支払って思い描くクリニック内装をつくるという判断はよいと思います。
結局は、お金を払う開業医が納得さえすれば、問題ありません。

では、逆にそうではない場合はどうでしょうか?
というお話を次回させていただきます。



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