クリニック開業時の内装工事業者について~2:早期に初期投資を回収するモデル~

前回は、少々お金をかけてでも、開業のビジョンを実現するためであり、納得できるのであれば大手の経験豊かな業者を選ぶ道もよい選択だというお話をしました。

今回は、そうではない、特にもっとビジネス視点で利益重視の開業目指す場合についてお話します。

2:早期に初期投資を回収するモデル
かなりざっくりとしますが、平均的な内科のクリニックであれば1か月の売上金額は500~600万円くらいになります。
計算としては、診療報酬単価5,500円×40名×25日=5,500,000円という目安です。
1日40名というのが、全体の平均患者数で、診療報酬単価も目安として置いています。
通常、銀行の借り入れ資金は10年~15年で返済する想定で事業計画を組み、医療機器など購入したものは7年程度で減価償却していきます。

10~15年間順調に患者数を伸ばし、経営ができれば特段問題はありませんが、近隣によいクリニックができた、スタッフの人間関係がうまくいかず、口コミによる患者数減が起こった、医師である自分に健康上の理由で働けなくなったなど例を挙げればきりがありませんが経営がうまくいかなくなる要因などは様々考えられます。

実際に、私が知っている中でもそんな理由で閉院を余儀なくされたケースが少なくありません。

こういったリスクをどう考えていくのが良いでしょうか。
一つは、限りなく初期投資(イニシャルコスト)を減らし、ランニングコストにすることです。
ランニングコストも少ないに越したことはありませんが、クリニックにおける大きなランニングコストは人件費です。
人件費を削減することは、日常頑張って働いてくれるスタッフさんのモチベーションを下げ、優秀なスタッフを雇い入れることが難しくなります。
また、抜本的な施策を打つ場合を除き、患者さんの待ち時間にも悪影響を及ぼし、口コミの悪化による新患流入の減、再来院率の低下と負のスパイラルに入り、経営に悪影響です。

私は、経営に直結するコストの中で、「人を安く使う」という考え方には反対ですので、それ以外の部分を考えたいのです。

イニシャルコストを限りなく抑える
イニシャルコストの中、最初の事業予算の中でも内装費は非常に大きいです。
目安として8000万円の事業予算であれば、2000万円くらいが建物の内装をととのえるための予算となります。
テナント開業ですと、保証金、前家賃、敷金なども大きいのですが、10か月分くらいが多いでしょう。
すると、1坪1万円だったとして内科の目安30~40坪で×10か月で300~400万円。このうち保証金、敷金部分は戻ってきます。
あと、だいたい5500万円くらいのうち、医療機器、家具備品で1000万円くらいは必要になると思いますが、これらば最悪リースも可能ですし、状態が良ければ売却することも可能です。
さらに、運転資金数か月分を見込むのですが、1000~2000万円くらいは手を付けずにとっておきます。
さらにホームページ作成、内覧会費用、パンフレット、チラシ、医薬品、消耗品など額の小さいものを買っていくと、そんなに余裕はなくなってきます。

何が言いたいかというと、小さい金額のものをケチケチしても全体に対するインパクトは少なく、数百万円単位で削減できるポイントを考えましょうということです。

大幅なコスト削減で考えること

テナントを狭くすると、その分単純に内装工事費が安くなります。
40坪を20坪にしたとき半額になるかというとそうではありません、扉の数、空調設備の数、トイレや流しの数など金額の比重が高いものの必要数はそんなに変えられないためです。
ですが、例えばレントゲン装置を入れるには、鉛を使った防護部屋に約300万、一般撮影装置とCRで500万くらいが必要ですが、1日あたりどのくらい撮影をするのでしょう。
普通の内科クリニックですと1日1~2枚あるかないかというのが多い印象です。1枚当たり1000円にもならないのに、医師がシャッターボタンを押さなければならず、撮影時の体勢の指示など手間がかかります。
医療の提供体制という観点から考えると、必要なことは言うまでもありませんが、経営の側面から考えると費用対効果があまりにも悪すぎます。
もし、レントゲン装置を入れないという判断をしたときには下記のものがなくなります。
【イニシャル】
X線防護室:約300万円
一般撮影装置+CR:500万円
【ランニング】
一般撮影装置+CRの保守、メンテナンス費用
【スペース】
一般的なサイズ3m×4m=4坪弱。
→取得費=4坪×1万×10か月=40万円と、年間48万×10年??(※営業する限り)
→約500万円
X線装置を入れないという設定になると、イニシャルで840万。
ランニングでは10年で480万+保守、メンテナンス費用が不要になります。
これだけでもかなり大きなインパクトになります。

普通はこう…という前例に頼った開業計画ではなく、こういう考え方に気づくかどうかでも、事業計画は大きく変わってくることでしょう。
10年のランニング500万円くらいと考えると、1か月分の売上ともニアリーな数字になってくるのが分かります。


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