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読み終わった本のこと

家族と過ごすお休みの日、
こたつに足をつっこんで、机の上に本を積んで、
一冊ずつ読書するのが定番の至福になりつつある。

昨日は柚木麻子さんの『BUTTER』をずっと読んでいた。
ミステリみたいな感じかなと思いつつ
読み始めたのだけど、予想以上に食欲をかきたてられる小説だった。
タイトルにもある通り、いたるところにバターが出てくる。


高級エシレバターを使ったバター醤油ご飯とか!
どんな味かすごく気になる。
なんというか、主人公が舌先で味わった愉悦をひとつずつ試してみたくなるのだ。


丸の内にあるエシレバターのお店は、東京に行ったとき一度だけ通りかかったことがある。
益田ミリさんのエッセイでも紹介されていたお店。ここがそうなのか、と思った。
(まるで雑貨屋さんみたいな可愛らしいお店だと思った)


食欲に限らず『BUTTER』には、
色んな欲望が描かれている。
性欲、自己顕示欲、承認欲求エトセトラ……

「他者をおとしめたい」ゆがんだ優越感も、
物語を背景に透けて見えるようだった。
根強くある女性蔑視も。


主人公の女の人も被告人と関わるうちにどんどん影響されて、(記者という職業上)世間に痛めつけられるけど、
どれだけ打ちのめされても終盤には快復する。
取材のなかで身につけた料理が、彼女の血肉になっていく。


バターは血だ、という描写が印象的だった。
モチーフとしての『ちびくろ・さんぼ』も。
「この世界は生きるに、いや、貪欲に味わうのに値する」という言葉も。



これだけ色濃い食の描写がある小説って、なかなかない。
食べることは生きることで、
どれだけでも自分で変えていけるものなのだ。

そのはるかな豊かさを見せつけられた気がしている。










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