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メメント・モリの物語

10代のときに読んだ本って、
なんだかいつまでも特別な気がする。


もちろん、20代で好きになった小説も
今新しく読む本もそれぞれ素敵なのだけど、
10代のときに好きだった物語(及び作者)は、
やっぱりいつまでも特別なのだ。


書いてる物語が一区切りついたので、
(数日おいてから推敲する)
久しぶりに週末の読書。


乙一さんの『一ノ瀬ユウナが浮いている』


書店で見かけて気になっていて、
やっと読むことができた。
乙一さんといえば、
10代のとき本当に好きな作家さんだった。
(ほとんど全部読んだと思う。
いちばん好きな作品は『失はれる物語』)



だから、
久しぶりに新刊を読めるのはとても嬉しい。

映画『サマーゴースト』の姉妹作で、
(こちらは観てないけれど)
「幽霊と花火」をモチーフに書かれたオリジナル作品らしい。

幼馴染みの淡い初恋。
一緒に東京の大学へ行こうと約束していたのに、
一ノ瀬ユウナは死んでしまう……



青春小説は、
10代や20代ではあんまり読まなかったのに、
最近になって読むようになった。
(そして自分も、青春ジャンルの物語を書いたりしているから不思議だ)


なんとなくタイトルからストーリーは予測できて終盤の想像もついたのに、
最後までとても素敵な物語として読むことができた。
作中、幽霊の彼女と東京でデートする場面があって、こういう設定で読ませるのは乙一さんだなぁ、と思う。
乙一さんの小説を読むと、学生の頃を思いだす。
10代のときに読んでいたら、もっと違っていたかもしれない。


メメント・モリ(死を想う)の物語は
世の中にたくさんあるけれど、それでも生まれ続けるのは、それだけ生きる大切さを感じていたいからかもしれない。


作中は震災後から今の現代へと進んでいて、
主人公と同じ時代にいる感覚になれるのも面白かった。
いつかじゃなくて、今生きてる人々の物語。


良いものを読むと、やっぱり書きたくなってしまう。

どれだけ世の中が変わっても、
物語は生まれ続ける。
たくさんの人の手によって。
それって、なんだかとても素敵だ。
色んな言葉に共振しながら、世界は繋がりあっている。



ここ数年で世界は分断されてしまったけど、
言葉を介した繋がりが消えてしまうことはない。

何気ない一言が誰かを救うことだってあるのだ。
そうだとしたら、
少しでも優しい物語が書けたらいい。
悲しみがたとえ消えなくても、また歩きだせるように。



素敵な物語を読んで、
そんなふうに思う休日。



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