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憧れの日々

ときどき、
「こういう日々を送りたいな」と思ってしまう本がある。
登場人物の日常に憧れを抱いてしまう本。

20代のときは、
江國香織さんの本がその筆頭だった。
『薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木』に出てくる陶子さんとか、『ホリー・ガーデン』に出てくる果歩さんとか。

みんなそれぞれに、過去の恋愛や忘れられない記憶があって、哀しみが漂っていても素敵に描かれている日常。
そのときは学生だったから、こんな大人になれたらいいな、なんて思ったりした。

その類いでいくと、
川上弘美さんの小説に出てくる女のひとも好きだ。
『センセイの鞄』に出てくるツキコさんとか。
(この小説も、とても好き)
映画も観たけれど、やっぱり原作で描かれる柔らかな文章が良いなと思う。


最近読んでとても良いなと思ったのは、
住野よるさんの『麦本三歩の好きなもの』

司書の女の子の日常というだけで惹かれて、
やっと読むことができた。
三歩の「考え方」が好きだ。
見た目は可愛らしくて、
(ハードカバーに載ってるモデルの女の子の可愛さといったらない……
チーズ蒸しパンを食べながら読書をする三歩)
マスコット的で天然と思われがちなキャラクターなのに、彼女なりに「楽しみ」を見つけて日々を過ごしていく。


図書館には「優しい先輩」や「怖い先輩」や「おかしな先輩」いて、
プライベートでは「大好きな友達」がいる。

すごいな、と思うのは、
三歩に関わる他者の誰の名前も出てこないところだ。だから、自分の見ている風景のように見えるという錯覚。
三歩の心象風景がダイレクトに伝わってきて、
それは読者しか見ることのできないものだ。

三歩は仕事中、(ほぼ毎日)怒られているけれど、
でも「怒られる」のも周囲の愛だな、と思う。
何度ミスしても指摘してもらえる関係性、というか……

三歩の、
「図書館の匂いが好き」というのに共感した。
勤務先にも閉架書庫があって、
貴重な本がたくさん詰まっている。
そして、古い本しか醸しだせない独特の匂いがするのだ。

深呼吸したくなるような。
「良い匂いするよね」って、三歩に共感を示したい。

次は第二集。
彼女の日常をまたゆっくり覗いてみるのが楽しみだ。

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