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最近買った本のこと

本屋さんでときどき、
目が素通りできない本がある。

気になって少し立ち読みして、
ああ、これはゆっくり読みたいなと思って衝動買いしてしまう本。

雨宮処凛さんの『「女子」という呪い』も、
そんな本だった。
(2018年に単行本になってて、最近文庫化されたみたい)

まず、タイトルが凄まじい。
でも、読んでみるとそう言わざるを得ないな……と頷かずにはいられない。
しかもこれは小説のようにフィクションではなくて、実際にこの国に蔓延している女子の「生きにくさ」なのだ。
女性が女性でいるだけで、生じる不合理のようなもの。



特に印象的だったのは、
「女の幸せ」とは言うけど、「男の幸せ」とは言わない、というくだり。
(そう言われると、確かにそう)

一時期「女性の活躍」という言葉がもてはやされたけれど、「男性の活躍」とか「男性が輝く社会」とは言われない。
「女子力」の高低は問われるのに、「男子力」という言葉はない。

このように、性別を逆にするだけで一般的には聞かない慣用句のような言葉が、本当に日本にはたくさんある。

(これと同じことを、『ミステリと言う勿れ』に出てくる整(ととのう)くんも言っていた。
「女の幸せ」という言葉はきっとおじさんが作ったもので、女のひとから生まれた言葉ではない、という話。
彼のジェンダー論は平等な視座に基づいていて、とても良いなと思ってしまう。この漫画も面白い)


確かに、育児に協力的なひとを指す「イクメン」という言葉はあっても、「イクジョ」なんて言葉はない。
それは女性がして「当然」という空気があるからだ、と雨宮さんは語る。
《日本社会には隅々まで差別と言っていい構造が浸透して、もう構造自体が差別を組み込んでいるので、どこからどうしていいかわからない》と。


そしてこの類いの「生きにくさ」は、
遡れば千年前の平安時代からあって、そこから少しも進歩していないというのも驚きだ。
(例えば紫式部は漢文の知識があるのにも関わらず、「一」という字も書けないフリをしていた。それは男性中心の社会において、無知を装わないといけなかったからだ。今も昔も変わらない構造なんだな……と思う)

もちろん男性には男性の生きにくさはあって、
《日本の企業には、体育会系の男社会を地で行く悪質なハラスメントが横行している》
というのもなんだか分かるな……と思った。


最後に興味深かったのは、
コロナ禍で日本の根強い性差別や、ジェンダーの問題が浮き彫りになりつつあるということ。

マッチョな男の政治家の声が大きい国ほど対策に失敗し、ニュージーランドや台湾みたいにトップが女性で、女性政治家も多い国は比較的抑え込みに成功したところが多い、というのだ。

たぶんそれは、トップに女性がいることで視野が広がったからなんじゃないかなぁと思う。
色んな立場のひとを想像する力、というか。


問題も、見えていなければ「問題」にすらならない。

みんなが住み良い社会を構築するのは、果てしない道のりに思えるけれど。


ひとりひとりが自分を大切にして、
嫌なことには毅然と抵抗して、
この世界にはびこる「呪い」を解いていけたらいい、と思う。






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