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嘘三十選

木星と土星のあいだには太陽系でゆいいつ三重の輪をもつ小惑星が発見されており、「三重苦の少女」ヘレン・ケラーにちなんで「ケラー」と名づけられている。 十九世紀ドイツのエアフルト動物園のある象はゲーテの詩の一節を理解した。 ノルデンウサギは生後約一週間の雌親の愛情のかけ具合によって性別が決まる。 南米のある民族の言語体系において、「嘘」と「通り雨」は同じ一つの単語で表される。 明治二十九年の坪内逍遥の戯曲「牧の方」は、どのように解析しても当時存在しないはずのボールペンで書

    • 20240805

       フワという者が炎上している。俺はこいつをよく知らないが、フワは隠すべき悪口のツイートを公開アカウントでしてしまい、それが非難を浴びているらしい。インターネットの茶飯事である。百姓たちの祝宴である。「クソだ」「胸糞」「性格悪すぎ」などとフワを揶揄するツイートが大きく伸びており、自身の道徳的正当性を知らしめることができてインターネット百姓たちは満足気である。中でも気にかかったのは、フワの態度がまるで「いじめっ子」だとして非難する者である。いじめとは何であろう。赤坂憲雄という天才

      • 20240801

           眠っているとき俺は唯物論者である。眠りから覚め、意識と肉体が一致していく過程において、唯心論者に転向する。俺の肥大する心はまずスマートフォンを捉える。インターネットで『地面師たち』というネトフリのドラマが話題になっている。民法の試験勉強のおかげでその言葉を知っている。見始める。面白すぎる。面白すぎると俺は走り出したくなる。裸足のまま熱されたコンクリートに踏み込む。家の前に仕掛けた毒餌の近くで巨きなゴキブリが死んでいる。レイコさん、あなたが殺すと口にするたび、その想像力の

        • メモ(2024.2-3)

          2月から3月の上旬にかけてiPhoneで書いたメモ書きをまとめました。 思考を止めるのだ。流れに逆らってはいけない。数多の声がなす清流に身を委ねるのだ。ただ流される。ひたすら流される。流れるままに流される。逆行は疲労を生む。力を抜くのだ。川に浮かぶように思考する。己を解体していく。川の水。大量の水に己を溶かす。痕跡は消える。水になるのだ。 詩を感じたい時、おれは深呼吸をする。魂のリズムを変更するような感覚だ。小刻みなリズム、時計が針を刻むような日常のリズムを壊したい。それ