2021 / 1 / 29 の星の声
散開煌響詞集
天人の舞
ふるさとは 夢うつつのあはひ
見境つかぬなら 舞いたまへ
天人いざなふ世は めぐりのなかにあり
たましひ ほころびいづるころ 桃源あらはるべし
到来
私という空虚な無限に
押し寄せる波が愛ならば
すんなり馴染んで血肉と化すだろう
油をはじく水のごとく
命を削り抗う波であろうと
それもまた愛の賜物に相違ない
誰かと思えば
見渡すかぎり青の中
見覚えのある黒い影
誰かと思えば、君か
いや、間違いなく私だ
恋に落ちた龍
人間を信じている
根拠のない謂れに傷つこうと
複雑怪奇な結界に縛られようと
人間を信じている
剥がされた鱗が千金に変わり
私利私欲に弄ばれようと
恋に落ちた龍
一途につらぬく心のうちに
邪な影が浮かぼうと
穢れのない愛のもと
いつまでも 人間を信じている
ダイオウイカの記憶
一万年生きた亀が息を引き取った。
首を引っ込めて、のばした四つ足で海底をつかんだままだ。
きらめく海面の模様をした実に美しい甲羅だった。
まさかそこから、あんなものが出てくるだなんて。
近くにいたクジラも驚いていた。
あれから海流がずいぶん変わったような気がする。
そのせいか、気がつけば、ずいぶん浅瀬に来てしまった。
ああ、あんたらが人間か。初めて見た。
そうだ、あんたらに伝えたいことがある。
亀の甲羅から出てきたものの話だ。
龍の子だよ。間違いない。
これから、あんたらの世界に行くよ。
今クジラから、人間の言葉を教わってる。
時間の問題だよ。
一流の犬
人間の声を聴いてれば、世界で何が起きているかくらいわかるんだ。
当てずっぽうにもほどがあるから、気にもならないけどね。
犬としてこの世界に生まれてからはまだ日が浅いけれど、そんじょそこらの人間よりはこの星のことを知ってるよ。だから、今ここにいるのさ。
当てずっぽうのことなんて、早く忘れたほうが身のためだよ。この世界はとても短い間に信じられないくらいのスピードで表裏を行き交って、今があるんだ。正直、ボクからしてみたら表であれ裏であれ、結局同じことにしか思えないね。
ぼくは全世界に生きる犬たちとつながっているから、インターネットや光なんかよりよっぽど早く感覚を共有できるんだ。いざとなれば、全世界中の犬たちと、素早く行動を起こすことだってできる。でも、その可能性は限りなく少ないよ。ご主人は今、この世界の事実を知ったのだからね。
大いなる転換点を過ごす地球人のみなさん、いつまでもとらわれていないように。ここ数年正しいと言われてきたことでさえ、簡単にひっくり返るような現在なんだよ。
生き方は、みなさんそれぞれで決めるんだ。もう誰かにしたがって生きる世界ではないからね。どういう形になるかわからないけれど、また何かあったら、すぐに伝えるからね。
それじゃ、元気で。
今週は、そんなキンボです。
こじょうゆうや
あたたかいサポートのおかげで、のびのびと執筆できております。 よりよい作品を通して、御礼をさせていただきますね。 心からの感謝と愛をぎゅうぎゅう詰めにこめて。