松の木の精(文学フリマあかさたな雑記『ま』)
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『ほんとにあった怖い話』というコミック雑誌をご存知だろうか。読んで字のごとく、"本当にあった怖い話"を集めたコミック雑誌なのだが、中学生のころから私はこの雑誌が好きだった。(今は「HONKOWA」って名前で公式twitterがあるんですね)
その雑誌で不定期連載の「氷室奈美のオーロラドローイング」という漫画があった。氷室奈美先生というイラストレーターの先生が、依頼者の前世とか守護霊とかから伝えられたことや見えたものを一枚絵に落としてアドバイスをくれるという、占い鑑定の実録漫画だ。私はこれが大好きだった。
で、大人になってこの鑑定を受ける機会を得られた。ありがとうインターネット。ありがとうサラリー。
当日は、先生がA4サイズの一枚紙の上に次々と私のオーラや前世を描きながら興味深く楽しいお話を披露してくれて、ひたすら聞き入り感じ入った。そして終盤に差し掛かったところで、先生がほぼ埋まっていた用紙の端っこに新たな顔をスッスッと描き始めた。今度はなんだろう、とその様子を眺めている私に先生が言った。
「なんか、人じゃなくて……木の精霊が来てますね」
……なるほど……?
「松の木だと言っています。おじいちゃんみたいな見た目」
「?!松?松の木?!」
驚いた声をあげた私に先生が「なにか思い当たることがありますか?」と聞いた。
それが、あった。ちょうど松のことであれこれ頭を悩ませていた時期だった。人生が長いとそんな時期もあるのだこれが。
鑑定を受けたのは父親が亡くなり、実家を売りに出した頃だった。実家には父親の手によって植えられたまぁまぁ立派な松の木があって、生前の父親は自分で剪定するなどして、それをかなり大事にしていた。
そのまま売りに出した古い家は買い手がなかなか見つからなかった。家を解体して何もない状態にしないと売れないかもしれない。だとすると、あの松も処分するしかなくなるが、あれだけ大事にされていたそれなりに立派な松を切るのはちょっと嫌だな……。そんな風に思い悩んで、植木屋さんに電話で松の木の引き取りを相談したりもした。植木屋さんからは一度根が張ったところから植え替えても枯れてしまうことのほうが多いからと断られて、八方ふさがりの状況だった。そんな私の前に松の木の精とは。
先生に事情を打ち明けると、あぁそうなの、と、驚き感動する私とはだいぶ落差のある落ち着いたテンションで「『違うところでまた芽吹くから気にしなくていい』って言ってるよ。植物って、そんなに弱くないよ」と教えてくれた。だいぶ気持ちが軽くなった。これだけでも来てよかった。
いよいよ残り時間が少なくなったところで先生が他に聞き逃したことはないですか?と確認してくれた。転職について方向性など、たくさんのアドバイスをもらったうえさらに実家売却に関する懸念事項まで解消してもらえた私はだいぶ満足していたが、いやいやせっかくのこの機を最大限に活かさなくてはと思い、えーとうーんと、と一瞬の間にフルで脳みそを回転させ、そうだ大事なことを聞かなくちゃと思い出した。
「犬を飼いたいんですよね。飼っても大丈夫ですかね?」
「今!? ……って、松の木が言ってるよ」
今じゃないかー。
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