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コロナワクチン、治療薬企業の株価はワープスピード作戦の進行で上がるのか?それとも上がらないのか。

モデルナ・バイオンテック・ギリアドサイエンシズほか

5月以降アメリカのワープスピード作戦(ワープスピード計画)が発表され、期待で関連株を握りしめてその時を待っている人も多いでしょう。しかし1週間前の記事でも指摘しましたが、既に何億ドルという予算がついても株価が反応しないという現象も見て取れます。これはまだ詳細が決まってないからなのか、それとも市場はあまり重視してないのでしょうか。考えてみました。

まず株価が上がるだろうと期待されるタイミングについて整理します。
1. ワクチンや薬の開発が順調であると発表された時
2. 正式にFDAから承認された時
3. ワープスピード作戦などで○億ドルという予算が発表された時
逆に下がるだろうと予想されるタイミングですが
A. ワクチンや治療薬に効果が見られなかったと発表された時
B. 予算が付かなかった、あるいは想定よりとても少ない時
ということになります。ここまでは基本情報のおさらいです。

では上記出来事があると確実に株価は跳ねるのでしょうか。いろいろアメリカでの議論を見ましたが、結論から先に書きます。

結論1 :「ワープスピード作戦の詳細が決まっても、ワクチンや薬が認可されても、株価は上がらないかもしれません」

この件の見方は割れています。ある人は株価が急騰すると言いある人は上がらないと言います。ではなぜ「大きな予算が付いても、ワクチンや薬が認可されても」株価が動かない可能性があるのか。それは
1. 年初からの期待で既に株価が十分に上がってしまった。
2. ワクチンや治療薬は期待するほどは儲からないかもしれない。

可能性があるからです。私の意見ではなく懐疑派の意見です。

代表的銘柄の年初からの時価総額の増加を比べてみましょう。(当サイト作成)

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右側の「年初来増加額」とワクチンや治療薬から得られる収入が見合わないといけません。例えばご存知のようにギリアド・サイエンシズの株価は、レムデシビルの治療薬が緊急認可されても大きく上がってはいません。それはレムデシビルから得られる売上が不明である点が指摘されています。上記の表からすると既に130億ドル時価総額を押し上げており、さらに開発にかかった費用を足しても余りある売上がないと、株価は素直に上がらないという理屈になります。130億ドルとひとことで言っても1兆4000億円とかですからね。なかなかハードルは高いです。

コロナウイルスは世界的に問題となっているため、各国は利益追求よりも安価での配布をするように働きかけています。「コロナがらみということで政府が予算を出すのは良い。しかし無駄のないようしっかり監視する」という意向が付いた場合、企業としても高く売ることが困難になると予想されます。

また政府からの何億ドルという予算は紐付きの資金になるので「設備投資or購入予約」が主な使途になると思います。すると例えば1億ドルを融資されたとしても、それがワクチンや治療薬の売上の先渡しで有れば、消化するまで利益の乗った純粋な売上は立たないかもしれません。1つあたりいくらの利益が乗っているのか、失敗したらお金を返す必要があるのかなど詳細がわからないと、手放しに「何億ドルの売上が立った!」とは喜べないでしょう。先日ファイザーがアメリカ政府からの資金を受けないと記事に書きましたが、大企業で有れば変に政府の援助を受けて価格や柔軟性を縛られるより、自社で開発して自由に売りたいという気持ちもわかります。(ただしこれらは私の国際ビジネス経験から想像する仮説なので、本当はゆるゆるの資金なのかもしれませんが)

いずれにしても何億ドルの資金供与を受けたというニュースがあった時は、その予算が「何に対して、どのような条件で、どこから出されたのか」が重要であるということです。日本人の我々からは推測が難しいところです。その点ではワープスピード作戦で既に6億ドルの受注を受けた、エマージェント・バイオソリューションズの株価が上がらなかったのはネガティブな要素かもしれません。

また先日ワープスピード作戦対象のワクチンを発表した後、選ばれなかったノババックスやイノヴィオの株は暴落せず、逆に株価が上昇していることにも注目です。彼らのマーケットは世界です。ワープスピード作戦で何億ドルの予算を取るよりも、「世界で売れるワクチンをアメリカが作った」という方が投資家には夢があるのかもしれません。時価総額が小さくおもちゃにされているとも言えますが、見方を変えればコロナという災禍が小規模企業にも大きなチャンスを与えているのです。

そして個人的にはもう1つ懸念があります。最近トランプ大統領はコロナウイルスの危険性を過小評価することに熱心で、アメリカでコロナのテスト施設を廃止したり、マスクをあえて外したり、コロナウイルス研究の予算を打ち切ったりしています。コロナ対策責任者であるファウチ博士との溝ができているのではないかという不安です。これもあまり関係なく杞憂であれば良いのですが。

これらの理由から、ワープスピード作戦が進んだとしても、あるいはワクチンや治療薬が完成したとしても、それがイコール爆発的な利益を生むとはまだ確信を持てずにいます。
ただし現在アメリカ国内ではコロナ患者が再び急増しており事態は時々刻々と変わっています。全ての仮説は状況の後追いに過ぎず未来はわかりません。現段階の個人的な感想です。

では最後に、ワクチンや治療薬の成功を信じている人が、投資をして確実に利益を得るにはどうしたら良いのでしょう?。それは5月18日にモデルナがワクチンの順調な経過を報告した時を思い出してください。航空会社や遊園地など施設、クルーズ船、店舗などコロナのせいでメタメタにやられているセクターが急騰しましたよね。それと同じことが起きます。

結論2 : コロナワクチンと治療薬の成功を信じるのであれば、今コロナのせいで底を這っている株に投資すれば間違い無い

ちなみに私はバイオンテック株を主力の1つにしています。それはコロナ以外の癌ワクチンなども期待しているからです。リスクリターンをわかった上で投資するのが良いと思います。

以上、ご参考になれば幸いです。
黙々と書いているとモチベーションが上がらないので、何かリアクションあると嬉しいです。

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