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EU版ワープスピード作戦が始まる? 27億€の予算でコロナワクチンを事前購入へ: モデルナ・バイオンテック・ノババックス情報

モデルナ(MRNA),バイオンテック(BNTX),ノババックス(NVAX),ジョンソンアンドジョンソン(JNJ),エマージェントバイオソリューションズ(EBS)ほか

EU欧州委員会は17日「EU版ワープスピード作戦」とも言えるコロナワクチン支援策を打ち出しました。

ポイント
・27億ユーロのEmergency Support Instrument(緊急対策資金)を使い、ワクチン製造会社と「事前購入契約」を結んで行く。
・ワクチン使用許可までの審査期間も12〜18ヶ月まで短縮。
・アメリカが先回りしてワクチン買い占めをしている中、EUとしてもワクチン確保をする必要がある。
・同時にアメリカは「アメリカ国民のための独占的買い占め」を掲げているが、EU欧州委員会はこれを批判し「世界の人が平等にワクチンを受けられる環境を作りましょう」という、呼びかけの一環で今回の予算付けと購入計画を発表している。EU国民だけでなく世界の国が連帯してワクチンを確保する目的。よって予算は増えていく可能性あり。
・EU欧州委員会は既に「コロナウイルス・グローバル・レスポンス」と題し40か国の政府から80億ドルを調達しており、日本もそこに参加している。(アメリカは不参加)

EU版ワープスピード作戦というのは少し言い過ぎですが、ワクチンをバンバン買って行こうという流れであることは変わりありません。ちなみにアメリカのワープスピード作戦(ワープスピード計画)の予算規模は100億ドルと言われています。
またもう1つの大国、中国の大使の最新インタビューを見ましたが、他人事のようなコメントをしてましたので中国は独自路線を進むと理解して良さそうです。アメリカ・中国以外の国が対象でしょう。

さてそのような背景の中、ズバリどこのワクチンを買う予定なのか?
現状予想される候補を列記します。

アストラゼネカ&オックスフォード
グラクソスミスクライン&サノフィ
ジョンソンアンドジョンソン
モデルナ
バイオンテック&ファイザー
ノババックス
キュアバック
メルク

○現時点で報じられている有力情報
アストラゼネカ&オックスフォード
EU加盟国オランダ、ドイツ、フランス、イタリアは「ワクチン同盟」を組み、ワクチン4億回分をアストラゼネカと合意しました。欧州委員会とは別括りですが購入するワクチンの対象はEU加盟国民。アストラゼネカは既にアメリカとも3億回分、イギリスと1億回分を受注してリードしています。これは9月にもワクチンを提供できると言われている点が大きいと思います。
ジョンソンアンドジョンソン
一部の報道によると、欧州委員会は既にジョンソンアンドジョンソンと交渉を開始しているとのこと。J&Jはアメリカのワープスピード作戦にも選ばれており、米国保健福祉省と共に10億ドルをワクチン開発に投入しています。9月にはフェーズ3に進むとのことです。
グラクソスミスクライン&サノフィ
サノフィとも協議しているとの報道もあります。(非公式情報)

○対象外企業
アメリカでしか生産できない企業からは買わないとのこと。具体的社名は出ていません。

ワクチン購入先企業は最大6社程度との話です。鍵になるのはワクチン製造工場の場所とキャパシティになりますが、今までワクチンを作ってきた実績が問われるでしょう。その点大企業は有利で、まだ実用化されたことのないmRNA技術を使っている企業は今の段階では少々不利かもしれません。
なおバイオンテックは中国以外の地域のワクチン製造をファイザーと提携しています。モデルナはスイスのロンザです。生産に支障があるとは思えません。正式決定するには今進んでいる臨床試験の結果を待つ必要があるのでしょう。またノババックスはチェコの製造施設を買収し、アメリカ国防総省と契約するなど実績を積み上げていますし、ドイツ政府の後ろ盾があるキュアバックも巻き返す可能性があります。

私達はアメリカのワープスピード作戦に気を取られがちですが、新たな資金提供元としてEUが加わったと言えます。ワクチン株価の株主にとっては心強いニュースです。

疑問: 何億ドルもの開発資金やワクチン購入資金を得ることは株価上昇につながるのか?

次に私達株主が考えないといけないのは、最近「○○億ドル資金供与」などのニュースが出ても株価があまり動かないことです。
リードしているアストラゼネカ(AZN)の株価を見てみましょう。

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4月17日に50ドル到達して以来、あまり伸びているとは言えません。15兆円企業ですからワクチンが8億回分売れようと、アメリカ政府から12億ドル資金提供受けようと関係ないのでしょうか?
次にジョンソンアンドジョンソン(JNJ)

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微妙です。ベビーパウダーに発がん性物質が入っていたなど別の理由もあります。
そしてエマージェントバイオソリューションズ(EBS)。規模も小さくワクチン製造会社の本命ですが最近こちらも別の理由で株価は下がっています。

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少なくともワクチン製造会社の株価は、投資家が期待するほど反応していないように見えます。

先日記事にしましたようにコロナへの恐怖が緩んでいることもありますが、これらの大きな投資金額は何を意味し、そしてなぜ株価が動かないのか。考えたいと思います。

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