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デキサメタゾン登場とドイツ・キュアバックのナスダック上場が与えるインパクト: バイオンテック・モデルナ情報

バイオンテック(BNTX)・モデルナ(MRNA)

昨日7月16日、コロナ医療業界にとってなかなかインパクトのあるニュースが飛び込んできました。

ステロイド系抗炎症薬「デキサメタゾン」が新型コロナ患者に有効との報道(イギリス)

ドイツのキュアバックCureVac 社が7月にナスダックにIPO。その前にドイツ政府が3億ユーロを出資、23%の株主となる。


まず事実のみをおさらいしますと、デキサメタゾンは1960年代から使われている安価なステロイドですが、人工呼吸器をつけた重症患者に有効であることがわかったとのことです。認可されればレムデシビルに次ぐということになりますが、安価のため世界中の人が気軽に使えるという点で注目されています。ただし軽症者には基本効きません。

キュアバックについて。バイオンテックと200kmほどしか離れていない場所に位置するこのバイオ医薬品企業は、mRNAの世界ではモデルナ、バイオンテックと並ぶリーディングカンパニーと評価されています(中国除く)。世界のトップ3のもう1つがナスダックに来る訳です。ドイツ政府がその前に「待った!」ということで23%株式を取得しました。キュアバックについては3月にアメリカによる買収騒動があり、ドイツ政府は「ドイツの宝を他国に渡すわけにはいかない」といった趣旨の話をしています。

ワクチン開発中のドイツの製薬会社、トランプ政権からの"資金提供の見返りにアメリカに独占権"の提案を拒否か

※ここからは余談と偏見込みの個人的見解です。
コロナの治療薬とワクチンは別物です。それは間違いありません。しかし現時点で「コロナはもしかかっても9割以上軽症、死亡率は0.1%以下」と報道されています。ソース:新型コロナの死亡率
そこに加えてこの死者数を劇的に減らすことができるとなったら...
「別にワクチンなんて受けなくてもいいのでは?」
となりますよね。

レムデシビルが治療薬として認定されてもなかなかギリアド・サイエンシズ(GILD)の株価が上がらない理由の1つに、初めの150万回無料の後の薬価が決まらないということがあります。あまり高すぎると保険が無かったり貧しい人は受けられないので、人類のためにどう設定するかで各国が駆け引きをしているわけです。そんな中、今ある薬で安価に治せるかも?というニュースであるために、今回のデキサメタゾンの件はインパクトがある訳です。(機関投資家の中にはコロナ関連株を高すぎるとして売りで持っているところもあるようです)。

他にも大手のイーライリリー(LLY)はモノクローナル抗体を使った治療薬を開発しており、それはワクチンの代替になるとも言っています。抗体を使った治療薬なので体に優しく、劇的な治療というより高齢者など弱者にも投与することができます。ただし大量生産はできません。うまくいけば9月には認可が得られるとのことです。ワクチンより早いのが重要です。リジェネロン(REGN)などもこの路線です。

ワクチンについてはファウチ博士が「一回打てば良い物ではなくてインフルエンザのように定期的に打つ必要がある可能性」に言及しています。今、インフルエンザのワクチンを毎年接種している人が何人いるでしょうか。ワクチンの登場は各国の経済再開の切り札であると同時に、新型コロナはとても怖い病気であることが前提です。従い、新型コロナが恐るるに足らずということになるとワクチン市場も縮小する可能性があります。

今、アメリカで暴動が起きたり日本でも外出をバンバンしている人が増えてますが、これは各国政府にとって「STAY HOME。コロナは怖いよ」というキャンペーンが国民のコントロールに有用だと思われていましたが、「コロナって実は怖くないのでは?」という認識が広まり、経済を犠牲にしてまでやる物ではないと判断されたからでしょう。家に閉じ込めた後、いきなり手のひらを返して「Withコロナ」路線に切り替え消費を煽ったりすれば、皆混乱しますので1つの国にいくつもの価値観が乱立しカオスになります。アメリカやヨーロッパのような国ではそれは顕著でしょう。

この状況でワクチンを救世主として登場させるには、もう1回「新型コロナは怖い!」キャンペーンが張られないといけません。これは陰謀論でも何でもなく自然な流れとして求められることです。治療薬やポジティブなニュースが報じられる度に、世論はコロナの恐怖から弛緩します。良いニュースが出る度に第二波の到来に近づくとも言えますが、世の中の動向がどちらに向くかをウォッチする必要があります。

キュアバックについては押しも押されもせぬ一流の企業です。上場と同時に注目されるかについては私はわかりません。しかしながらここ1-2週間の動きを見ていると、コロナワクチン=モデルナのイメージだったものが、アストラゼネカはアメリカのみならずヨーロッパ連合からも資本提供を受け、ジョンソンアンドジョンソンは臨床試験を7月に前倒し、中国のシノバックはフェーズ2までの試験結果を近々専門誌に発表すると言っています。つまり状況が刻々と変化しています。

キュアバックは少し遅れて、今月から人へのワクチン投与を開始するそうです。しかし開発の速さだけでなく製造計画が鍵を握りますので、ドイツ政府の後ろ盾を得たキュアバックが攻勢をかけてくる可能性は高いです。
株主はこれから一層、アンテナを研ぎ澄ます必要があるでしょう。




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