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コロナワクチン株・治療薬株、これからの売買戦略について:現状認識編

新型コロナウイルスに関する捉え方は日々変化しています。ちょっと前までは世界中「ステイホーム」とコロナからの避難を宣伝されていましたが、日本でも今や「ウィズコロナ」などと、キャプテン翼のボールは友達並みのフレンドリーさでコロナウイルスは日常化されようとしています。
なおホワイトハウスはコロナ撲滅をあきらめ、"The virus is with us, but we need to live with it,"というメッセージを国民に訴えかけるそうです。

コロナ問題は政治化されており、メディアと政治家によるバイアスがかりカオスと化しています。

さてアメリカ株の話ですが前回、コロナワクチン、治療薬企業の株価はワープスピード作戦の進行で上がるのか?それとも上がらないのかという記事を書きましたが、ここでもう一度コロナ関連株に対する取り組み方を整理したいと思います。
これが整理できると、なぜあなたの興味ある会社の株価が冴えないかがきっとわかります。

問い: ワクチンや治療薬が出て、世界中の人がコロナを心配しなくて良い未来はもうすぐ来るのだろうか?

この問いは思考実験に近いです。我々の希望的観測では、
・ワクチンが完成し移動制限やソーシャルディスタンスも無くなり世の中が正常化する
・治療薬が開発され重症者や死者がほぼいなくなる
・世界中の人がそれを手に入れられるようになり恐怖から解放される
という未来があり、そのために株に投資している気持ちがあると思います。しかしどの情報ソースを見てもそのような日が近く来ることには否定的です。

まずワクチン。うまく開発できたとしても生産に時間がかかるのと、ワクチン拒否で実際は接種しない人々がたくさん出ます。また接種しても集団免疫を得られる訳ではありません。仮に来年1月から法的にワクチンを打てるようになったとしても、世界中の人に打ち終わるには時間がかかり、それまでずっと国境閉鎖できる主要国はオセアニアぐらいでしょうから、南米での感染広がりを見ても世界の正常化へのは遠いです。また下記ニュースによるとDr.Fauciは早くもウイルス変異の可能性を指摘しています。

変異したら今開発中のワクチンはどうなるのか、また既に開発をリードしている企業の優位性は保たれるのかなどは不明ですが、ワクチン開発期待で膨れ上がっている株価には「このワクチンでは解決しないのか」とマイナスに働く恐れがあります。もちろん現時点でワクチンの効果が証明された製品はまだありませんし、全ては想定の話です。
またFDA長官のハーン博士はワクチンの早期認可について、急がせる政治サイドとは一線を引き、しっかりした裏付けを求めると発言しています。

暦は7月になりましたがワクチン開発レースは最終コーナーを回ったどころか、半分も来ていないかもしれません。

次に治療薬について。現在唯一FDAの緊急使用許可を受けているレムデシビルですが、ギリアド・サイエンシズは先日単価を決めて発表しました(詳細はこちら)。
なおレムデシビルを打っても必ず完治するというわけではありません。発展途上国にはジェネリックをライセンス供与するなど普及に努めていますが、安い薬ではありませんので効き目が弱いと思われた場合、価格の正当性の議論が起きる可能性もあります。そもそも患者の数に対して薬価が高いので利用は限られるでしょう。アメリカがレムデシビルの9月までの生産量をほぼ買い占めている現状もあります。よってすぐにコロナウイルスの恐怖から世界が解放されることにはならないでしょう。
先日デキサメタゾンに関する記事を書きましたが、アビガン、イベルメクチンなども候補としてあがっていますが、世界が真に望んでいるのは安価で製造が容易、かつ確実にコロナ退治ができる薬です。WHOが現在治療薬の治験を進めており、あと2週間ほどでレムデシビルを含めた治療薬の効果について暫定的な結果を出すと言っています。その結果によってもコロナ治療薬業界は揺れ動く可能性があります。
つまりギリアド・サイエンシズのレムデシビルに対する評価は、価格が決まった今これから日々議論される机上に乗った訳で、結論を出すには早いです。
さてそのような現状から導き出される結論は、

結論: ワクチンや治療薬が完成し世界中の人々が安心するXデーは、今のところ全く見えない。

ということだと思います。
もし貴方がワクチンや治療薬の完成に懸けて投資しているのでしたら、それは近い未来ではない、長期的なものだと腹を括る必要があるでしょう。

しかしワクチンや治療薬の完成ではなく、どこかで売ってしまうことを考えている人も多いと思います。というか多くの人がそうでしょう。いつか完成するかもしれないがそんなに待っていられない。どこかで利確して他の銘柄に乗り換えたい。
その場合、今はどの地点でしょうか。山に例えれば何合目でしょうか。頂上まで行かないのであれば、どこかで降りないといけません。投資している人の多くがもしそう考えているとしたら、株価にはどんな現象が起きるでしょうか。

既存株主は「良いニュースが出て上がった瞬間売ってやろう」、これから買う投資家は「何か良いニュースが出そうだから上がる前に仕込んでおこう」となります。ですから多くのバイオ関係の株が、良いニュースが出た瞬間に大きく上がりその後ダラダラ下がって行く、という値動きになりがちです。上がってから参加する人の数より、降りる人が上回るためです。

これは「決算が良かったから株価が上がる」「新しい売上が立ったから上がる」といった一般企業のポジティブニュースとは分けて考えないと、うまく利益を出すことが出来ないことを意味していると思います。

今回はベースとなる現状認識について書きましたので、追ってもう少し具体的な売買戦略を考えてみたいと思います。


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