見出し画像

【行政書士試験失敗記】1話 失敗を語る前に

 本題に入る前に、まず、私が行ってきた勉強を数字的根拠に基づいて語らせてほしい。ちゃんとこれだけやってましたよという話をさせて欲しいのだ。

 ここでペラペラと自分の失敗話を雄弁に語ったところで、
 
 失敗記などと物珍しいことを言うが、単に貴様の努力不足だっただけだろう。貴様には自らの大願をなし得るために死にもの狂いになる覚悟が無かっただけなのだこの大バカ者。
 
 と読者諸賢に言われてしまったらぐうの音も出ない。
 
 なのでまずは受験に対する心構えやら、メンタルの話ではなく、数字というデータに基づいた私の受験生時代の結果について発表すると共にそれらについての私見を述べておきたいのだ。
 
 まずは具体的な勉強時間について。幸いなことに2回目の受験時から3回目の受験日当日までの勉強記録が残っていた。

 加えると悪いことに1回目の勉強時間は把握できていない。これは後に語るが、私にとって大きな失敗の1つだった。
 
 記録によると2年間で2,250時間勉強しているとある。1年目の記録は残っていなかったので推測になるが、最低でも600時間以上は勉強していると思う。
 2年目以降は毎年約1,000時間以上勉強しているし、2年目に限って言えば、1,200時間は勉強している。
 
 行政書士試験の一般的な勉強時間は、法律知識が無い人で800~1,000時間と言われている。なので2年目はそれを超える勢いで勉強した。我ながらよく勉強したものである。
 
 数字的根拠に基づいて語るが、私はよく勉強していた方だとは思う。

 勉強した方ではあるが、これでも結果は不合格であった。残念ながら。
 
 よく、人は「これだけやってダメだったのだからもう悔いはない」と言う。その通りだとあの頃の自分は思ったことだろう。その証拠に、試験日前日の日記を見返しても、当時の私はドヤ顔で同じ文章を書いていた。
 
 これだけやった、自分が落ちるわけがない。そして、これだけやったのだから落ちたとしても悔いは残らないだろう。そう本気で信じていた。
 
 試験が終わってふたを開けてみれば、合格点に4点足らなかった。
 
 4点と言えば、問題1問分だ。問題1問正解できなかったせいで、もう一度あの勉強を繰り返す羽目になった。とんだ罰ゲームである。当時の試験官がいたらこう言いたい。「一問くらいいいじゃねーか」と。
 
 もちろんそれでいいとはならない。現実は非情である。
 
 結果、私に残ったものといえば、自分の現状を何一つ変えられなかった事実となぜあと一問を正解できなかったのかという悔いのみだった。
 
 そこからどう立ち上がったのかについては、後に記すとするが、結論から言うと、やはりどれだけ努力しても悔いは残るものだ。
 私個人に限ってだが、清々しい気分など微塵もなく、鉛のような思い感情がずっと残り続けた。それは試験に合格するまで続いた。
 
 話を戻す。次に私の3年間の試験結果についても開示しておこうと思う。
 1年目170点、2年目176点、3年目202点。
 
 行政書士試験は300点中、6割の180点以上点数が取れていればいい。そこに一般知識が56点配分されており、一般知識は24点以下の場合だと足切りされてしまう。
 他でどんなにいい点数を取っても不合格となってしまうのだ。幸いなことに私は3回とも足切りになったことはなかった。
 
 さらに、行政書士試験においては記述問題というものがあり、3問で60点配点されている。全体の20%を占めている重要なものだ。私はというと、1年目10点、2年目10点、3年目40点。という結果だった。
 
 ここで3年間の獲得点数についてまとめると、総得点数で言えば3年目が一番高いのは記載の通りだが、実をいうと記述を除く点数では3年目が一番取れていないのである。
 
 もう一度言う。私はよく勉強した方だった。
 
 しかし、現実は記述問題で泣かされて同じ試験を3回受ける羽目になり、記述問題に助けられて今、行政書士として開業できている。
 
 なんともちぐはぐだ。本来であれば、普段の勉強と試験対策の積み重ねで全ての点数が上がっていなければいけないはずである。なのに、記述問題を除くと3年目が一番点数を取れなかった。故に私は、なんとなく自分の点数を誇れずに今日まで来ている。
 
 今でも私はこのいまいち誇れない合格点を見てやっぱりこう思うのである。
 
 

どうしてこうなった?


 
 勉強時間は確保した。
 行政書士試験対策の王道と呼ばれる肢別過去問集も合計で20周以上しているし、ポケット条文は常に持ち運びし続けボロボロだし、ラインを引きすぎて何が大切なのか、そうでないのかわからないくらいになっている(これも失敗の1つ)。重要判例についても事細かに勉強してき。模擬試験に至っては受けてきた回数は3年間で30回以上は受けているのではないだろうか。それなのにこの結果である。
 
 これらのことからはっきりしておきたいことが一つ。
 行政書士試験において、勉強時間は絶対的な指標にならない。いくら勉強時間が確保できても落ちる人は落ちる。
 これだけやったのだから認めて欲しい、なんて甘い言い訳は通用しない。少なくとも私の場合は通用しなかった。
 
 改めて自分に問いたい。
 

 どうしてこうなった?


 
 前にも書いたように、その疑問について、私は明確な回答が用意できていない。それゆえに私に「どうやったら合格できますか?」と聞かれてもわからないと答えるしかない。
 行政書士試験の攻略法は? と聞かれても同様だ。
 
 初めて受験する頃はさっさと合格して「行政書士試験対策系YouTubeチャンネル」でも作っちゃおうかー、なんて恐れ多いことを考えていたが、今となってはそれすらもしたくない。なぜなら、自分の合格体験に絶対的な攻略法を他者に提示できないからである。

 合格の方程式すら確立できていない私が、合格について語れることなどない。あるとしたら、自分がどのように失敗してきたかくらいなものだ。
 
 以上が数字で見た場合の私の受験期間の結果だ。本当にやっとこさ行政書士になれたのだなと実感する。世の中には一発で行政書士の資格を取る人もいる反面、こうまでしてやっと行政書士の資格を取る人間もいるということをわかっていただけたろうか。
 
 それなりに勉強時間を確保できた男という前提ができたところで、次は私がどのように失敗してきたかを紹介していこうと思う。

 できるだけ悲壮感を漂わせず、ポップに、お手軽に読める娯楽文章をイメージして書くつもりだ。メンタルに悪いものを書いても仕方がない。
 
 重ねて言うが、私は自分の選択を後悔していない。様々な巡り合わせがあって、今ここでこうしていられることについて感謝している。これは事実だ。
 
しかし、本音を言わせていただけるのであれば、やはり一発で合格してその経験を書いて出版できるような人がうらやましいとは思う。いや、本当にうらやましい。私もそうなりたかった。なろうとしてなれなかったという事実を目の当たりにすると、それなりに傷つくものだなぁと思う。
 
傷ついたところでもうどうにもならないが。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?