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【行政書士試験失敗記】4話 息抜きは大事と誰かが言った。私もそう思う。

 「息抜きは大事! 勉強ばかりしてたらダメだよ!」
 
 と隣の友人はまことしやかに言ってきたりする。
 
 おいおい待てと、私が息抜きしている間にお前はしっかり勉強して自分だけいい点取ろうとしてんじゃないの?
 
 このような心理戦は古今東西どこでも行われているのは間違いない。友人という生き物はそうやって自らが友と呼ぶ同種の生き物を騙していくことになんら躊躇いを持たない。
 
 曰く「ゴールまで一緒に走ろうな」
 曰く「昨日全然勉強してないわ」
 曰く「夏休みの宿題? やってないやってない」
 
 そうやって友は友を騙し、騙された友はまた別の友を騙すために動くのだ。
 
 友人の言うことを真に受けてはいけない。あなたは周りに流されず、自分の道を歩き続けるべきなのだ。
 
 しかし、その上であなたの友人では(まだ)ない私は、あえてあなたに言いたい。
 
 「息抜きは大事!」
 
 というのも人間の集中力は長時間もたない。
 一般的に30分に1回は5分程度の休憩を取った方がいいと言われている。日常生活以上に集中力が必要となる勉強には特に言えることだろう。
 
 私自身の経験上、45分以上同じことをしていると集中力が切れる。
 集中力が切れた時の症状としては急に体が痒くなってくる、スマホが気になってくる、座っていられなくなる、突然叫びたくなってくるなど様々だ。
 自習室で勉強するあなたの隣でこのような症状が出ている人がいたら安心して欲しい。ただ集中力が切れただけである。
 
 集中力が切れた時、どうするか。
 5分程度時間をおいて自分の目の前のものから意識をそらすというのがいい。25分勉強し、5分休憩。合計30分。これを1セットとして繰り返す。
 
 これはポモドーロ・テクニックと呼ばれる勉強法だ。
 私が勉強がまるでできなかった頃に初めて知った勉強のテクニックで、これに随分と助けられたものだ。
 
 人間は1つのことに集中し続けることができない。できないのであれば、集中できる時間内で最大限に集中し、一気に休憩して戻ってくる。それを繰り返すことで効率よく勉強できる。
 
 前置きが長くなった。ここで私の失敗を紹介しよう。
 
 私はこの息抜きを失敗した。
 
 皆さんは息抜きと聞いて何を思い浮かべるだろうか。
 集中しているものから目を離す際に人はまず何を見るのかを思い浮かべて欲しい。
 
 現代において、自由な時間を与えられた人間が最初にすることといえばスマホを見ることではないだろうか。
 私も5分休憩の際には必ずスマホを見ていた。これが失敗だった。
 
 読者諸賢に問いたい。果たして現代人は、スマホを見たら5分で自分の作業に戻ってこれるだろうか。私は戻ってこれない。現にこの文章を書いている間、私は何分スマホに時間を吸われているか分かったものではない。
 
 息抜きと称してスマホを見はじめ、気が付けば1時間経ってましたということはよくある話だ。30分勉強し、1時間休憩してましたでは何のために勉強しているのかわからなくなってくる。
 
 しかし、普通の人間であればそれは必然的に起こることなのだ。

 なぜならば、各企業の叡智を結集させてできたのがこのネットワーク社会、そしてその最たるものがスマホなのだ。人々がスマホに依存するにはどのようなサービスを展開すればいいか、大人がそれだけを考えて作り上げたものに簡単に抗えるものでは無い。
 
 だからこそ、たとえあなたがスマホを見てしまったとしても何も恥ずべきことではない。「企業の策略か!!!」と叫びながら机を力いっぱい叩けばいいだけである。
 
 かといってそれではいつまで経っても成果は出ないと思うので、次に考えるのはスマホを触らない。スマホを視界から消す。などと考える。

 今はタイマー式の金庫なるものがあり、勉強する前にはその金庫に入れて、その時間は勉強に集中できると主張するインフルエンサーもいる。
 
 しかし、しかしである。さすがは企業、賢い。
 そこのところも分かっている。
 
 我々は普段なにを使って勉強しているだろうか。

 紙の参考書や紙の問題集がいまだ根強い人気を誇る中、かさばらなくていい電子書籍をチョイスする方も多い。
 特に行政書士試験は参考書も問題集もとにかく大きく分厚い。法律に関係する参考書はとにかく分厚く重い。

 その点、電子書籍であればタブレットを持つだけでいいので便利だ。
 
 実を言うと数年前から既に勉強はスマホやタブレットでする時代に突入してきているのである。この事実に私は愕然とした。
 
 逃げ場が無い!!!
 
 遊びも勉強もスマホで完結する時代にどう逃げればいいというのだ!!
 
 私は叫んだ。これでは八方塞がりではないか!!
 
 叫んだところでどうしようもない。結局、勉強する端末に集中を乱す要因がある事実は曲がらないのだ。
 
 まぁ、どんな事態でもやりようはある。
 私がどう対応したのかというのをここで示すのはこの失敗記のあり方を否定することになるのでそこは各々で取り組んでいって欲しい。必要があれば別の機会に示すことにする。
 
 スマホやタブレット、特にタブレットについては今後も紹介できればいいが、使い方を誤らなければ勉強の際の強い味方になってくれる。
 要はメリットのためにデメリットについて目をつむれるかという話だ。
 私にとってはメリットの方が大きかったため、タブレットを手に取った。今も勉強する際にはスマホやタブレットは欠かせない。
 
 話を戻そう。息抜きについて。
 
 息抜きは大事だ。一つのことに集中し続けると視野が狭くなる。
 狭くなった視野では物事を多角的に見ることは難しい。
 特に行政書士試験においては、1つの視点に固執すると思わぬ角度で殴られることが多い。
 
 こんな経験はないだろうか。
 問題文を読んで自信をもって答えたとしても不正解。
 解説文を読んで「なぜこんな問題がわからなかったのか!?」と自分を責める。
 そんな時は大体視野が狭くなっており、重要な部分を見落としている。

 正解できたはずの問題を間違えてしまう。これほどもったいないことはない。特にあと4点足りずに不合格だった経験のある私にとっては悪夢そのものである。

 悪夢は一番大事な時にこそ忍び寄る。そう試験本番だ。

 特に本番では緊張もあって、視野が狭くなりやすい。見えるはずの言葉が見えなくなる。それは魔法のように消えてしまう。
 それを防ぐためにもたとえ本番であっても、一度目を離して一息つくくらいの余裕を持たないといけない。
 
 心理的な異常は気が付きにくい。気が付いた時にはすべてが終わっていることもある。定期的に深呼吸をするなどして自分の精神を一度フラットに持っていくことが大事なのだと私は思う。
 
 息抜きは大事だ。しかし、それが本当の息抜きになっているかはその過ごし方にかかっている。
 
 突然だが、今私の目の前には私が書いた日記がある。
 
 行政書士になるために仕事を辞め、さぁ資格試験に集中するぞ! と不退転の決意で臨んだ試験勉強とその当時の心境について書かれている。
 これは私の当時の血と涙と努力の塊であると言っても過言ではない……はずなのだが、
 
 仕事を辞めてしばらくした後の日記を改めて読んでみると「スプラトゥーン2面白れぇぇ!!!」「やめられねぇぇぇぇ!!」といった狂気の言葉が綴られている。それも10日間ほど。
 
 スプラトゥーン2とは言うまでもないが、任天堂が誇る名作テレビゲームだ。
 イカを主役としたシューティングゲームで、主に対人戦をメインとするコンテンツなのだが、実はストーリーも独自世界観でよく練られており、とても面白い。
 老若男女誰もが楽しめるような設計をされているこのゲームシリーズはさすが世界に誇る任天堂の産物である。

 いやいや、受験生がなにをやっているのだ。
 
 結局私はスプラトゥーン2の隠しボスである「心の中の3号」を倒すまでひたすらに没頭していた(この大変さが一部のゲーマーの方に理解していただけたら嬉しい)。
 もう少し私のプレイングが下手であれば、ゲームの全てを堪能するのにもっと時間を要し、その結果、今頃私はこの文章を書けてなかったのかと思うとゾッとする。
 
 息抜きは大事である。息抜きをしなければ自滅していく。しかし、やはり抜きすぎると全てを失うこともまた事実なのである。
 私は危うく息を抜きすぎて、自分の将来を棒に振るところだったのである。

 これを読んでいる皆々様におかれましてもどうか気を付けていただきたい。まぁ、ここまでの愚か者は私以外流石に存在しないとは思うが……
 
 
 
 さて、この失敗、実は私の中で現在も進行中だったりする。
 なにを隠そう私は幼少の頃からテレビゲームが好きだ。
 
 私の事務所のデスクにはPS5とニンテンドーSwitchの両雄が並び立ち、手元にはスマホとタブレットが親子のように居座っている。目の前にはゲーミングPCのモニターが私を睨みつけているという現状は、子供の頃なら誰もが夢見た空間であることは間違いない。
 
 彼らの誘惑に耐えながら私はこの記事を作り、ポッドキャストの台本を書いている。誘惑と日々戦い、打ち勝った成果物を皆様に提供している。
 
 ちなみに2023年に入り、開業した6月を経て現在に至るまで、これらの誘惑と戦いながら私は
 
 「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」「ゼルダの伝説 ティアーズオブキングダム」「FF16」「ディアブロ4」「サイバーパンク2077」
 
 などをプレイしている。どれも名作であった。
 最近のゲーム業界はどれも素晴らしい作品を世に生み出している。クリエイターの方々には頭が下がる思いだ。
 
 さらに最近の私はというとソーシャルゲームである「ブルーアーカイブ」にハマってしまっている。魅力的なキャラクターが織りなすストーリーを読む手が止まらない。派手な演出の戦闘は心が躍る。
 
 できることなら一日中、これらを触って遊んでいたい。しかし、それでは手に入れたいものを手に入れることはできない。
くじけそうになった時、失敗の経験が私の背中を支えてくれる。
 
 重要なことは失敗を繰り返さないことである。私は断固としてこの失敗を活かし、この困難な世の中を泳ぎ切る所存であり、胸を張れる行政書士になるべく日々邁進していくのだ。その覚悟が私にはある。この事実は揺るがない。
 
 目の前の誘惑に負け、己が人生の転機を逃すようなことは決してあってはならない。繰り返すが決してあってはならないのだ。
 
 しかして、人には息抜きが必要であることは間違いない。
 
 
決してこれは私の敗北宣言ではない。

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