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【行政書士試験失敗記】8話 エナジードリンクを飲めば、私も大人になれると思っていた(偏見)

 エナジードリンクがあるからこそ、勉強ができる。

 

 この世にはエナジードリンクなるものがある。

 なんというか頑張っている人の象徴、という感じがするのは私だけだろうか。

 こと資格勉強においてエナジードリンクは頻繁に登場する。
 豊富なカフェインを摂取することで眠気を覚ましたり、集中力が上がったりするような気がするため、愛飲している受験生も多いだろう。

 カフェインという点で言えば、私もブラックコーヒーを愛飲している。
 砂糖が入っているものはどうも作業中に飲んだりすると集中できない気がするので避け続けた結果、私は水かコーヒーを飲みながら作業することが多くなった。
 
 実を言うと、同じ量を飲むというのであれば一般的なエナジードリンクよりもブラックコーヒーの方がカフェインの含有量が多かったりする。じゃあなんで私たちはありがたがってエナジードリンクを飲んだりしているんだろうか。
 
 そんなことはどうでもいい。今回は私のエナジードリンクに関する失敗とそれによるやる気の増減について話そうと思う。
 
 
 私は模試を受ける際は必ず会場に赴いて受験するようにしていた。
 それには理由があるのだが、今回伝えたい本題からずれるので割愛する。
 
 会場は予備校の一室で行われ、当然他の受験生も複数人いる。彼らは試験開始までの間、自習したりして思い思いの時間を過ごす。数えきれない数の模試を受けてきたのでその光景は最早、日常になってしまっていたのだが、未だに忘れられない人物がいたのを覚えている。
 
 彼の机の上にはブラックコーヒーのペットボトル一本とエナジードリンク一本が置いてあったのだ。
 彼は席に着くなり、ブラックコーヒーを飲み干し、エナジードリンクを飲みながら参考書を眺め始めた。
 
 エナジードリンクとブラックコーヒー。どちらもカフェインの塊。私があれだけの量を摂取したら、手が震え、心拍数が上がるに違いない。
 
 いや、それ致死量超えないか? と心の中で突っ込んだのは言うまでもない。

 模試どころの騒ぎではないのではないか? と気になりはしたがどうすることもできない。
 
 それが彼にとってのスタイルなのだ。口出しするようなことではない。
 
 おそらく、彼は「やるぞ!」となった時にカフェイン等のアイテムでやる気にブーストをかけるタイプなのだろう。だとしても彼はやりすぎな気がしたが。
 
 私も勉強し始めた頃は自分のやる気を出すためにエナジードリンクに頼ったりもした。眠気覚ましが必要だと感じて飲んだものである。
 
 しかし、それは私にとっては失敗だった。
 
 まず、カフェインに求める効果、いわば覚醒効果なのだがその時点で私には合わなかった。

 そもそも眠気を覚ます目的なら少しでも寝るべきだし、日中眠くなるような生活習慣を続けるメリットは無く、どこかしらで生活が破綻している。取り入れるべきものはエナジードリンクによる一時の覚醒効果ではなく、生活習慣の見直しというごくシンプルな対処法だったのだ。


 やる気を上げようにも、カフェインを過剰に摂取するとめまいを起こすなど体調不良を引き起こし、それどころではない。
 
 どうやら私にはアイテムによるやる気のブーストは向いていないことが分かった。
 
 そして私は、エナジードリンクからやる気を出すことができず、今回の受験も失敗に終わったのであった。
 
 
 しかし、ちょっと待って欲しい。今までは私の失敗記で終わっていたが、今回はちょっと私にも言いたいことがある。
 
 果たしてエナジードリンクを飲むこととやる気を出すことについて因果関係というのはあるのだろうか?

 本当にやる気を出すにはエナジードリンクやブラックコーヒーは必要なんだろうか?
 
 私の勝手な印象として、ひと昔の忙しい大学生やビジネスパーソンはエナジードリンクを片手に日常を戦い抜いていた印象がある。彼らの血と骨はエナジードリンクで出来ていた。
 
 それはなぜ? 眠気防止や元気の前借りなんて言われている。短期決戦で終えられるタスクであればそれで問題ない。彼らは今の仕事を終わらせるために前借りした元気で戦っていたわけだ。戦いが終わればその後に借りてきた元気をゆっくり返済していけばいい。
 
 行政書士試験においてはどうだろうか? やる気をエナジードリンク類のようなアイテムに頼っていくのはいいものだろうか。
 
 行政書士試験は長期戦だ。法律未学者なら少なくとも800時間は勉強を強いられるであろうこの試験において、元気を前借りしていけば、元気の負債が超過していくのは目に見えている。

 そもそも主戦場になるであろう午後1時からの3時間は原則飲食禁止だ。本番で眠くなっても誰も助けてはくれない。
 状況によっては事前許可を取ることも可能な資格試験もあったりするが、エナジードリンクを試験中に飲んでいいという試験は無いだろう。
 
 元気の前借りは資格試験においてはあまり効果が無いようにも見える。
 
 しかし、冒頭の彼ではないにせよ、試験を受ける人の中には少なくともブラックコーヒーやエナジードリンクを愛飲している方はよく見かける。それには理由があるはずだ。
 
 と考えて思いついたことがある。意外に簡単なことだ。
 
 要はこれは自分が勉強を始めるための儀式ではないだろうか。
 
 戦いに赴くための儀式として飲む。そしてそこで精神を整え、試験に向かっていく。
 
 私の持論に「やる気というものは出すものではない」というものがある。
 やる気というものは出すものでは無く、作業が終わって振り返った後に「やる気出てたなー」と後で気が付く、やる気とはそんなものだと思っている。
 
 なので私は自分のやる気というものに期待はしていない。できなければそれは生活の中で何かが破綻しているということなので、まずはそこを見直すところから始める。
 
 やる気が出ないという症状は誰にでもある。体調が悪かったり、気になるあの子からLINEの返事が無かったり。
 
 そんな時、人はやらなければならないことから目を背ける。そして背けた後に、自分自身で「なぜやらなかった?」と自問自答するときに使う言い訳がやる気が出なかったというものだ。
 
 

やる気云々いう前にまずやる。これは世のビジネス本に死ぬほど書いてある言葉だ。


 しかし、そうは行ってもそんな簡単にはいかない。やりたくないことをやるというのにはそれなりにエネルギーがいる。

 そんな時に役立つのがルーティーンだ。つまり、エナジードリンクを飲むという儀式だ。
 
 エナジードリンクを飲む→机に向かう→勉強をする
 
 どうだろうか、ここに何一つ「やる気」などという曖昧なエネルギーは存在しない。
 
 重要なのはルーティーンを確立することなのだ。
 これをやったら次はこれを行う。それを日ごろから決めていれば歯を磨くように集中できるようになる。
 
 エナジードリンクを飲んだら机に向かう。それによって○○時までは勉強する。
 
 そのように体に教え込ませることで人は基本的に嫌な勉強という行為に立ち向かえるようになるのだ。

 確立されたルーティーンは自分がやりたくないというものでも自動的に体を動かしてくれる。

 エナジードリンクを飲むという行為は次の行為のための布石だったわけである。
 ということは人によってはエナジードリンクやブラックコーヒーは必要なものだと言わなければならない。
 
 
 しかし、私としてはこの方法はお勧めしない。代替案が思いついているならすぐにでもそちらに変えるべきだと思う。
 
 そもそも外部のアイテムを使うことによって、ルーティーンを組むよりも、時間や動作によってルーティーン化することの方が費用もかからないし、場所も選ばない。
 
 エナジードリンクが飲めないから机に向かわないし、勉強もしない。
 
 なんてことになったら目も当てられないからである。

 ルーティーンを組むのであれば、お金がかからず、場所も選ばないものがいいだろう。
 例えば「朝起きたら」「顔を洗ったら」「朝食を食べたら」「○○時になったら」
 
 そういった意味では私は毎朝7時までには朝食をとり、8時になったら強制的に筋トレを始める。筋トレが終わったら有酸素運動を行い、シャワーを浴びて作業に入る。

 というルーティーンを日々繰り返している。

 しかしこのルーティーンも不完全だ。曖昧な部分が多いせいでいまだにサボったりすることもある。改良が必要だ。

 やる気があるから動けるのではないのだ。ルーティーンがあるからこそ、人は動ける。

 だからこそ冒頭に戻るのだ。 

 エナジードリンクを飲むからこそ、人は勉強ができる。


 ある人にとっては。そういったものなのだろう。
 
 ちなみに一時期、エナジードリンクを愛飲していた私は手の震えが出たり、めまいを起こしたりして飲むのをやめたのだが、久々に飲もうと思って手に取ってみた……が、すぐに棚に戻した。
 
 エナジードリンク1本分のカロリー……とんでもないものである。
 ダイエット中の私が飲めるのはいつになることやら。

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