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【株式会社糸編 宮浦晋哉さんインタビュー02】 日本の生地産地とデザイナーを繋ぐ架け橋。デザイナーが学ぶ場とファッションのこれからを考える。

第1話では、7年に渡り生地産地に足を運んできた宮浦さんの活動の原点と、産地とデザイナーを繋ぐ活動に至るまでを伺いました。第2話では実際の活動と、今後の日本の繊維産業の展望についてお話いただきます。

デザイナーが産地のことを学ぶ場をつくる

― 産地とデザイナーを繋ぐために、これまでどのような活動をされてきたのですか?

まずはじめたのが、年に10回ほど開催している産地をめぐるバスツアー、そして、コミュニティースペース「セコリ荘」です。

セコリ荘の役割は、産地を巡って集めてきた生地サンプルの展示場所、そして、週末の夜はおでん屋さんとして開店し、繊維業界の友人と集まり産地のことを共有する場として活用してきました。時には産地の職人さんを呼んで話を聞きながら、産地やファッションのこれからを語るコミュニティースペースになっていきました。

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2017年、繊維産業のことを体系的に学ぶ場をつくろうと「産地の学校」をはじめました。産地と直接仕事をするために必要な実践的な内容を学べる場です。

それから、若手デザイナー支援のための「新人デザイナーファッション大賞」に受賞したデザイナーさんの産地コーディネートの仕事も、3年ほど続けています。ブランドに合いそうな工場さんをご紹介したり、一緒に産地を回ったり、シーズンごとに素材開発をしていきます。常時30ブランドいるので、皆さん求める素材がさまざまで、刺激的な仕事です。

― そうやって現場を学ぶブランドであれば、そこに新たに入ってきた若手も産地に足を運ぶものづくりを習得できる、よいサイクルが生まれそうですね。

まさにその通りで、例えばイッセイミヤケは繊維産地との素材開発が有名ですが、イッセイ出身の多くのデザイナーさんは産地に足を運んで職人さんと対話しながらクリエーションしていくというスタイルの方が多いです。

一方で、専門学校を出てすぐにブランド立ち上げたというような20代前半のデザイナーさん達と話していると、「現場を知らなければ」という感覚をデフォルトで持ち合わせているな、という印象があります。

クリエイティブ勝負のデザイナーズブランドほど、生地からこだわって差別化していく必要がある。今後はさらにそういう流れが強まっていくと思います。

そして今後は、産地に足を運ぶ一歩前段階として、方向性を決めたりリサーチができる「テキスタイルライブラリー」をつくりたいと思っていて。現在、うちの事務所に全国100社以上から1000以上のサンプルがあります。これをもっと整理して見やすい場所を作りたいと思っています。

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ライブラリーができれば、産地選定の時間的なロスも解消できるし、何よりマッチングできる数が飛躍的に上がる。今はどうしても、僕らが動ける範囲で点と点の繋がりを作るのがやっとなので。

― 各地の生地を一堂に見られるラブラリー! それは産地を知りたいと思うデザイナーには今後欠かせない場所になりそうですね。場所はここセコリ荘でやるのですか?

場所はまだ決まってないですが、やはり月島がいいかなと。もっとアクセスの良い渋谷などでもいいかと思って物件を探しているのですが、アクセスを理由に月島に来ない人は自ら産地に赴くとは思えないので。フィルターの役目も果たせるのかも。でも物件探し中です。

― 確かに、情報がすぐに手に入る時代だからこそ、本気度の高い人に来てもらうことも大切ですね。産地の職人さんたちの方は、こういった活動に協力的ですか?

もしかしたら日本の繊維産業が最盛期の頃なら、僕らなんかと付き合ってくれなかったかもしれません。しかし、ありがたいことに工場に突撃訪問していた頃から今日に至るまで、皆さん優しく話を聞いてくれて、協力的な方ばかりです。

また、工場が閉じる理由は必ずしも赤字とは限りません。お話を聞いていると、売り上げは出ていてもモチベーションが下がりきっていくうちに事業を整理して、工場を畳んでしまうところも少なくないです。

ギリギリの利益でやっているところに、もしそれを理解していないコスト交渉などがあれば、モチベーションをも下げています。「自分たちが人生をかけて作る生地を正当に評価して買ってもらえない」と感じる状況が続けば、気力を失って当然です。

納品先のデザイナーが完成品を持参して報告をしにきてくれたり、定期的に工場に足を運ぶこと。そして、その職人さんの作るものがどれ程ということを、面と向かって伝えたりすることで、現場の方の気持ちは変わると思います。

― なるほど…単に仕事があって利益が出ているか、という問題だけではないのですね。

一方で、劇的に良い変化を遂げた会社もあります。数年前に出会ったある岐阜の機屋さんです。それまでは下請けとして言われたものだけを作り、モチベーションも下がって会社の未来を考えているという頃に出会いました。しかし、「自分たちは何をつくりたいか」をもう一度徹底的に考えて、「自分たちが売りたいブランドに生地を売っていきたい」と決意を固められました。

そして現在では、東京のブランドのところに定期的に足を運んで会話をして、自分たちでデザインして販売までしています。新卒採用をして、工場見学会などもしてい、てどんどんオープンな状況になってきました。この変化は、直接デザイナーと仕事をはじめたことがきっかけとなりました。

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ここまで彼らが来られたのはもちろん努力の賜物ですが、「見る景色」を少し変えるだけで、工場はこれほどまでにモチベーションを上げてがんばることができるのだな、と感じた一件です。

今の問屋ができていない役割を担う。

― それは良い事例ですね。「マッチングして、いくらの仕事になった」という以上の価値がある。今後はそういったことを広げていくイメージですか?

そうですね。僕がやっていることは産地とデザイナーを繋ぐ裏方の仕事ですが、その接点を広げていくために、先ほどお話しした「テキスタイルライブラリー」を作ることが次の目標ですね。「点」ではなく「立体物」として繋ぐことができるようになれば。

まずは、テキスタイルを探している方にリサーチしに来てもらい、僕らと対話をしながら求めている工場さんと繋がって、ビジネスに広げてもらう場です。また、工場さんと話し合って、品番によっては在庫を積めたらという展開も考えています。

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それはここ数年、海外のデザイナーさんへの生地の販売をしている中で、「これは絶対に好きだろう」という生地もバイオーダーだから納期が合わなくて逃してしまうこということが多々あって。コミュニケーションのタイミングにもよりますが。

在庫を積みにくそうな生地ほど、上手に在庫を積む必要があるというナンセンスなジレンマがあるので、その解決策を考えています。

また有名になる前の、海外の若いデザイナーさんへの早いタイミングでのアプローチも必要と考えています。今もSNSでやりとりしてる若手デザイナーさんが何人もいて、意見を聞いています。

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僕はキュレーターという裏方として、その言葉の通りちょっとしたキュレーションにより、新しい流れが生むことができたら。そして、そこからお付き合いしている産地の工場さんやデザイナーさん、そして未来の産業にとって前向きな働きがけをしていけたらと思っています。


第1話はこちらから。

記事・撮影|小泉優奈

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