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『タクティクスオウガ リボーン』開発秘話。伝説的タイトルの制作に臨んだ深沢のあくなき向上心と新しいチャレンジとは

こんにちは!STANDの採用広報のいわきです。
昨年11月にリリースされた『タクティクスオウガ リボーン』に弊社の2Dデザイナーの深沢が携わっており、リリースを記念して、代表の宮田、現在進行形でゲームを攻略中の辻と共にインタビューを行ってまいりました。

ー『タクティクスオウガ』とは
1995年10月6日に株式会社クエストから発売されたスーパーファミコン用タクティカルRPG。完成度の高さにその後のタクティカルRPGに多大な影響を残し、その後2010年に再構築された『タクティクスオウガ 運命の輪』がリリースされる。
『タクティクスオウガ リボーン』とは、これらをベースに、グラフィック、サウンドのパワーアップのみならず、ゲームデザインにより踏み込んだ新たな『タクティクスオウガ』として2022年11月に発売された新作ソフトであり、「タクティカルRPG」の金字塔として現在でも存在感を放っている。

ーこれまでの深沢さんのキャリアを簡単に教えてください。

深沢:25才の時にDTPデザインからゲーム業界に転職して以来27年、主にゲームの背景やコンセプトアートを描き続けてきました。
最初に参加したチームではUIとか背景とか区別無く「出来る人がやる」感じで、一定のクオリティーを示せればタイトルロゴからUIデザイン、キャラやイベント演出まで、背景に限らず何でも描かせてもらえました。
この時の「自分の感性を垣根無く提案していく」姿勢がその後のキャリアに大きく影響したと思います。
主な参加作品は『マリオ&ルイージRPGシリーズ』『ラングリッサーシリーズ』等です。

ー『タクティクスオウガ リボーン』開発に携わるまでの経緯を教えて下さい

深沢:19年間『マリオ&ルイージRPGシリーズ』を作ってきた会社が解散したのをきっかけに転職したのがSTANDでした。
2Dデザインであれば大体何でも出来て対応力が高い事を売り込ませて頂いたのですが、
丁度『タクティクスオウガ リボーン』のデザインセクションを担当するCGStyleさんが「ドット絵も描ける背景デザイナー」を探されていて、STAND社に相談があったのがきっかけですね。

辻:『タクティクスオウガ』といえば自分は中学生時代にどハマりした、超絶名作タイトルですよね!時間が沼のように消えていく...笑 ストーリーも何パターンもあって、バトルも難易度高くて、超やりがいがあるタイトルでした!!

深沢:はい。。。だからこそ、初めにタイトルを聞いた時は軽く立ちくらみがしたのを覚えています。ヘビー過ぎると。
ファミコンから遊んできたゲーマーなら引くレベルの伝説的タイトルですし、あんなに完成されて世界的にファンも多いデザインワークに今更何を付け足すと言うのか、そもそも自分のスキルで満足な成果が出せるだろうかと不安感でオーバーキル状態でした。

辻:確かに。やりがいある反面、プレッシャーがすごいですね。

深沢:ですが、自分自身『伝説のオウガバトル』の頃からかなり影響を受けたタイトルでしたし、こんな機会は二度と無いなと思い、腹を括りました。笑
ですが、カチコチに緊張しつつのオンサイト開始だったと思います。

ー作品内ではどんな部分を担当されたのでしょうか?

深沢:背景全般ですね。
背景表現のゴールイメージ検討、テクスチャデータの高解像度化フロー構築と、量産の為の外注進行管理などを担当致しました。
あと、開発後期にUIデータのパーツ調整やオーサリングなども一部担当しています。

ー担当された箇所で深沢さん的に挑戦だったところはどんなところだったのでしょうか

深沢:一番はファンの方達の思い出を裏切らない、新しいユーザーにも訴求する高解像度化です。
着手当初、スーパーファミコン当時の背景画像の1ドットを4倍密の4×4ドットへと、解像度を上げてキレイに見せる事を目標としてリファインイメージの作成に挑戦しました。
描くには描いたのですが、やってみるとちょっと作業量的に無理っぽい、考える事が多過ぎる事が判りました。
4倍密にするって凄い変化で、1個1色だったドットを4×4の16ドットフルカラーにするワケです。
例えば原作のドット絵では何となく「植物」として描かれていたミドリのかたまりが、4倍密だと「ケヤキ」なのか「イチョウ」なのか描き分ける事が出来てしまいます。

辻:なるほど...!4倍密...恐ろしいですね。。。

解像度が変わるだけで表現方法が大きく異なる

深沢:そうなんですよ。当時のデザイナーが何を描こうとしていたかを想像しながら、見えない部分を描き起こすのを300マップ以上行う事になります。

ゲーム中で見えているそのままの背景を1マップずつ描けるのではなく、データ自体が物凄く複雑なパズル状になっているんですね。
(※昔のゲームはデータ量の制限が厳しく、小さな地面やカベのパーツをタイル状に並べて容量を節約しながら背景を構成している上、PSP版の移植の際にその仕組みを保ちながら3Dデータ化しているので、複雑さが凄い事になっていて、ある程度理解出来たのは開発中期頃でした)

そんな状況の中で4倍密の背景イメージを描いてはみたものの、情報量が上がり過ぎて原作とは違う別ゲームの背景の様になってしまいました。
原作のドット絵はオーラを放っていたのに、よく見る感じの心に残らない絵になってしまったんです。

辻:なるほど。キレイなら良いってもんじゃないんですね。

深沢:そこで方向性が再検討、再確認されて、「2倍の解像度アップ(内部的には4倍)で印象は変えずに、原作ファンの思い出補正を壊さない」が明示化されました。
これなら上がった情報量はドットを滑らかに見せる事に注力できて、作業量もちょっと現実的になる。
当初、本作のビジュアル周りを担当したCGStyleさんのアートディレクターの方が思い描くビジョンでは「折角作り直すのだから」と空気感を増したライト演出や陰影表現なども検討していたようですが、原作のドット絵と高解像度化した背景を重ねてパカパカ切り替えた時にも違和感のない、色も原作で使っている範囲内でドットを補完する描き方に落ち着きました。
とは言えそれだけではなく、2022年に発売する作品として水面や壁などの素材感向上や奥の景色新設など、解像度なりの情報量にまとめています。

方向性が決まっても作業フローの資料化や300マップ以上の量産、外注進行管理など課題は山積みでしたが、『マリオ&ルイージRPGシリーズ』で任天堂様の要求クオリティーに応えてきた経験のお陰で何とか想定レベルの成果で着地させられたと思います。

また、CGStyleさんとスクウェア・エニックスさんのスタッフはスキルレベルがとても高く、考え方や視点の解像度には学ぶ点が多くありました。
信じられないスピードでグラフィック用の内製ツールを作ってくれるプログラマーの方とか(しかもデザイナーが欲しいと思う機能を解っている)、世の中には凄い人がいるし、そういう人達と一緒に仕事していると自然と考え方や姿勢が引き上げられるので、成長のチャンスと思って取り組んでいました。

辻:おお、STANDクリエイターとして素晴らしい姿勢ですね...!

ーデザイナーとして着目してもらいたいポイントってどんなところでしょうか

深沢:いっぱいあります!アルモリカ城(ゲーム序盤で攻略する城)にデカいキズを付けたのは自分です!SNSでもとんと話題になりませんが!

辻:...ほんとだ!気付かなかった…!なんか悔しい。笑

深沢:以前に激しい戦いがあったことを表現するために追加したものなんですが、伝説的タイトルの背景に新たにディテールを加えられ、正にキズを残せた着目ポイントです。
あとは、原作ドットがあまり破綻無く2倍密に出来ている事も推したいです!原作のままだと絵的に繋がっていないパーツが山ほどあって、ドット絵の解像度が低く、解像度が低いことを活かして表現としてあえて残した不整合を一つ一つめちゃくちゃ丁寧に繋げています。

『タクティクスオウガ  リボーン』公式サイトより
https://www.jp.square-enix.com/tor/

辻:ほんとに!当時のユーザーとしてはとても自然にキレイになっていて、全く違和感ないです!

深沢:ただ発表当初はもの凄い不安で、原作を知る人には変化が無いと言われるだろうかとか、新たなユーザーには興味を持って貰えるんだろうかとか、ドキドキしながら薄眼でSNSを覗いたりしてました。
でもおおよそ好意的に受け入れられたのが嬉しかったです。
特に感想が出て来ない、ネガティブな意見が出てこない事って、バックグラウンドとして作品全体の印象を支えている2D背景デザイナーにとっては喜ばしい事なんですよね。
まあキレイと言って頂けるのもモチロン嬉しいですが。

ーエンドロールにも会社名が入り、社内では大いに盛り上がったのですが、深沢さんとしては実際どんな気持ちになりましたか?

深沢:自分が所属するSTANDクリエイターの初担当タイトルだったので、社名がクレジットされたのは嬉しかったですね!
皆の成果ですと伝えたくて発売直ぐにスクショを撮って会社に送ったりしました。
プレッシャーと作業量に心折れずにやってこれたのはスタクリスタッフの細やかなサポートの支えがあってですし、不安無く仕事に注力出来た事を感謝しています。

辻:社内でそのスクショがチャットで飛んできたときは、本当にビックリしました!
いわき:よかったですよね!こういうことがあると、スタクリのキャリアカウンセラー達も報われますね。

ークリエイターとして今後チャレンジしてみたいことを教えてください。

深沢:自分の絵のみで自主制作のゲームを作ろうと思っています。
今は時代的にやろうと思えば気軽に作り始められる環境がありますし、とても恵まれてると思うんです。
ゲームクリエイター甲子園の作品とか見てると刺激的で凄い楽しそうなんですよね。
そういう所からパワーを貰いつつ、自分も何かしら足跡を残したいというのが今の目標です。

プレッシャーの中でこだわりぬかれた本作を是非皆さんもプレイしてみてくださいね。
STANDでは、ゲーム現場で活躍していきたいクリエイターを積極的に募集しています。
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