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東京ドームシティのカンパリソーダ

武田です。今、深夜2時半です。仕事で書かなければならない原稿があって深夜作業をしているのに、なぜか書いている本のことばかり考えてしまっています。こういうのってよくありますよね。今それじゃないことがはかどってしまう事故。

自分のこれまでのあれこれを私小説仕立てにまとめる本を書いています。ずいぶんと時間がかかってしまって焦ってますが、これでもけっこう慎重派なところもあるので、誕生から現在までの年表なんかつくっちゃたりして(さらにはそこにその時どき影響を受けた本や映画のことをまとめる列もつくったりして)、やっています。

ぼくの人生の物語はちょっと色々大変なため「これは絶対に書いておかなきゃな」というものは思い出す必要もないくらい記憶の浅瀬にいまもありますし、年表を書いたことで「あ、これも前後のつなぎにいるわ」とか「ならあいつも登場させないとだ」みたいなことがどんどん浮かんで、プロットもまとまってきました。

今は第一章を書き終えたところなのですが、記憶ってどうしても数珠つなぎになっているので書くほどではないけど、なんだ急に思い出してしまったなあ、ってエピソードがぽろぽろと垢のように落ちてくる。

で、この間、ドラゴンズ対ジャンアンツ戦の中継を見ていたら、それまでにも何度も東京ドームの映像は見てきているはずなのに、唐突に2005年の東京ドームでの出来事を思い出したのでした。

2005年はぼくが大学進学で上京した年で、その春に中学・高校で同じ野球部に所属していたFくんと東京ドームで同じドラゴンズ対ジャンアンツ戦を見に行ったのでした。

Fくんというのは小柄だけど左利きだからという理由でファーストを守っていて、当時みんなでこぞって出かけていた豚骨ラーメンのお店で替え玉を7回やってのけて、そのまま苦しみのあまりカウンターから後ろに転げていったという英雄でした。

奇妙なことが2つある。というのも、そんなFくんとぼくは個人的にそこまで親しかったわけでもなかったこと、そしてFくんは名古屋市出身の人間にも関わらず、なぜかかなりの巨人ファンだったことです。そんなかれとなぜ野球をふたりで待ち合わせて見に行ったのか、見に行ったところでいったいどっちのスタンドの席に座ったのかがまったくわかりません。

それでもぼくらはその春のナイトゲームで待ち合わせをしました。水道橋駅で待ち合わせ、あの試合前の人混みなんて知らないですから、目をひん剥きながらお互いを探し、やっと落ち合えたらなんだか恥ずかしい気持ちがしました。坊主頭から伸びたぼくたちの髪型は、お互いにとって馴染みのないものでした。

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